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第16話:癒しと抗いの狭間で──王都に示す医学の力

ご閲覧ありがとうございます。

今回の話では、リクトたちが王都において初めて本格的な医療活動を展開します。


偏見、誤解、制度の壁──

それらに対して、剣を抜くのではなく、命を救うという一点で向き合う姿が描かれます。


「守る」とは何か。

「抗う」とはどうあるべきか。

医療の手が示すひとつの答えを、ぜひ見届けてください。

 その日の夜、診療所の灯は、いつもより遅くまで消えなかった。

 俺は書きかけの報告書を前にしながら、思考の深淵に沈んでいた。

 “力ある技術は、いずれ力ある者に奪われる”──

 ルドヴィクの言葉が、脳裏に焼きついて離れない。

 

 「先生……今日は、何もしないんですか?」

 背後から、セリアの声が静かに響く。

 

 「してるさ。……今は、“何を守るべきか”を考えてる」

 俺はそう返しながら、机の上に置いた一冊のノートを指差した。

 

 > 診療所開設以降の全患者記録

 > 医療処置の成功例・失敗例

 > 弟子たちの観察メモ

 > 村に伝えた衛生指導項目

 

 「これがすべて、俺の“実績”だ。王都の権威でも、魔力でもない。

  この村の命と向き合ってきた証拠だ。……だから俺は、これを奪わせない」

 

 セリアは小さく、強くうなずいた。

 

 「……じゃあ、あたしも先生と一緒に守ります。

  この場所も、フィネちゃんも、メイナもカイも──全部、あたしの居場所だから」

 

 ──次の日の朝。

 

 診療所の門の前に、村人たちが集まっていた。

 農夫、木工師、薬草採集者、商人、老人、子どもたちまで。

 顔ぶれはバラバラだが、皆が同じ“決意”を胸に秘めていた。

 

 先頭に立ったのは、村の実質的なまとめ役でもあるゴルドだった。

 

 「リクト先生。あんたがこの村を救ってくれたのは、一度や二度じゃない。

  病からも、怪我からも、不安からも。

  だから、今度は“わしら”が“先生の医療”を守る番だ」

 

 俺は言葉を失いながら、彼らを見渡した。

 誰も、笑っていなかった。

 その表情は、決意に満ちた“村の顔”だった。

 

 「この村は、診療所と共に生きている。あんたの治療があるから、子が育ち、年寄りが畑に立てる。

  だから……どんな貴族が何を言おうと、“この村の医療は渡さん”」

 

 「俺は、戦士じゃないぞ。敵を退ける力も、城壁もない」

 

 「必要なのは、剣じゃねぇ。

  “守りたい”って気持ちがあるなら、それを支える手はいくらでもある」

 

 気づけば、フィネが人混みの隙間から姿を現していた。

 

 「わたし、火を吸う体だけど……この村では、ちゃんと息ができた。

  ……だから、わたしも守りたい。リクト先生の、優しい火を」

 

 その言葉に、セリア、カイ、メイナも静かに並ぶ。

 「俺たちも、“医者になる途中の身”だけど──戦います。

  “誰かを助ける医療”を、奪わせないために」

 

 その姿に、俺は何かが喉の奥で詰まり、息を整えるのに時間がかかった。

 思えば──俺はずっと、“ひとりで守る”ことしか知らなかったのかもしれない。

 

 でも今、俺のそばには“共に立とうとする人間”がいる。

 

 > 医療は、一人の医者が築くものじゃない。

 > 支えられ、支える中で広がっていく力だ。

 > “戦わず守る”方法は、ここにある。

 

 「ありがとう……みんな。じゃあ、次の診療、いつも通り始めよう。

  患者が来る限り、俺は医者であり続ける。貴族でも、魔法でも、俺の仕事は変わらない」

 

 その言葉に、村人たちが頷いた。

 

 ──そしてその夜、俺は“診療所守護宣言書”を正式に記した。

 > この診療所は、王都の命令によらず、

 > 村の自由意志により維持され、

 > 科学と癒術の融合医療を共有の資産とする。

 

 それは小さな反旗だった。

 だが、それは確かに“選ばれた命のあり方”を守ろうとする人間たちの意志だった。



 診療所の朝は、いつもと変わらないようでいて、どこか張り詰めていた。

 昨日、“診療所守護宣言”を村の議定として発表したことで、空気が引き締まったのだ。

 人々は口には出さずとも、確かに“何かが動く”気配を感じ取っていた。

 

 その空気を割るように、一羽の鷹が空を滑空し、診療所の屋根に舞い降りた。

 その足には、王都の公印がついた封筒がくくりつけられていた。

 

 「……早かったな。もう“反応”が来たか」

 

 俺は手紙を受け取り、ゆっくりと封を切る。

 セリア、カイ、メイナ、そしてフィネが周囲で固唾を呑んで見守る。

 

 ──その文面は、あまりにも端的で、そして冷たかった。

 

 > 王都医療局癒術院 第三監査課より通達

 > 記録改竄疑義および診療所独自運営体制に関する

 > 実地視察および指導査察を実施する。

 > 視察日は十日後、使節三名、癒術官一名、随行兵三名を派遣予定。

 

 「……来るか。視察という名の“査定”が」

 俺は文書をテーブルに置き、深く息を吐いた。

 

 「随行兵、って……」

 セリアが顔を曇らせた。

 「“視察”なのに兵士を連れてくる時点で、それが“恫喝”に近いものだと分かる。

  こっちの診療所が“黙って従う”とは思ってない証拠だ」

 

 「どうするんですか、先生……? 王都の人たちと、本当に争うんですか……?」

 メイナの声には、不安と葛藤がにじんでいた。

 

 「争う気はない。だが、“屈する気”もない。

  俺たちは、ここで命を救っている。その事実を、ねじ曲げさせはしない」

 

 その時、フィネが口を開いた。

 「王都の癒術師……きっと、わたしのことも調べに来ます。

  “魔力の通じない体質”を、また“異物”として扱うかもしれない」

 

 彼女の瞳は静かだった。

 でも、その奥には“もう逃げたくない”という意志が宿っていた。

 

 「なら、俺たちの医療が“魔力に頼らない価値”を持ってるって、見せつけてやろう。

  こっちは、理論も記録も、結果もある。……何より、“命の証人”がいる」

 

 俺は立ち上がり、皆を見渡す。

 

 「セリア、診療記録の再整理を頼む。

  カイとメイナは、実地処置の経過と患者の反応を“日誌”にまとめてくれ」

 

 「はいっ!」

 「了解」

 

 「フィネ、お前には“体の反応”を毎日記録してもらう。“治療効果が見える”ようにするために」

 「うん、やってみる」

 

 診療所が、一つのチームとして動き始めた。

 

 十日という猶予は、短いようでいて、戦う準備をするには十分だ。

 

 > 医療は、“実績”で語る。

 > 言葉じゃない。数字でもない。

 > 治った命が、何よりの反証だ。

 

 俺は筆を取り、王都への返答文を書き始める。

 

 > 貴殿らの視察を受け入れる。

 > だが本診療所は、政治の道具ではない。

 > 科学と癒術の共存を目的とし、独立の意志を貫く。

 > 記録・患者・弟子──すべてが、我々の“医療”を証明する。

 

 この村を、誰にも“支配の材料”にさせない。

 俺たちがやっているのは、“治すこと”だけだ。

 ただそれだけの誇りを、誰にも汚させるつもりはない。



 王都からの“査察使節団”の到着まで、残り一日。

 診療所の中は、いつもよりも静かだった。

 

 セリアは処置室で、帳簿の最終チェックを続けている。

 カイは裏庭で木の枝を削りながら黙りこみ、メイナはカルテ整理の手を止めて空を見ていた。

 そしてフィネは、部屋の隅でひとり、ノートに“自分の体調”を記していた。

 

 だが、皆の胸中にあるものは──同じだった。

 

 “王都の目に、自分たちの医療はどう映るのか”

 

 夕方。

 俺は診療所の囲炉裏を整え、簡素な食事を囲むよう弟子たちを呼んだ。

 「明日、何があっても“いつも通り”を貫く。

  変に取り繕うな。誤魔化すな。……ただ、俺たちがやってきた“医療”を見せろ」

 

 そう言った俺の言葉に、しばし沈黙が落ちた。

 

 最初に口を開いたのは、カイだった。

 

 「なあ、先生。

  もし明日、“ここでやってることは非公式で無効だ”とか、“お前たちは資格がない”とか言われたら……どうする?」

 

 「笑ってこう言ってやる。“だったら患者は、資格を信じて治ったのか?”ってな」

 

 「……ふふっ、なるほど。いいな、それ」

 彼は鼻で笑ったあと、少しだけ真顔になった。

 

 「俺……誰かを助けたいって思ったの、たぶん初めてだ。

  でも、まだ自信なんかねぇ。手は震えるし、言葉もうまく出てこねぇ。

  それでも、“ここにいていい”って思わせてくれたのは──先生と、この診療所だった」

 

 次に、メイナが口を開いた。

 

 「……もし、わたしたちの記録を“価値がない”って言われたら……どうしようって、少し怖いです」

 「“記録は誰のために書いたのか”を思い出せ。王都のためじゃない。……患者のためだ。

  “誰かを救いたい”って思って手を動かしたのなら、それはもう“本物”だよ、メイナ」

 

 メイナは、そっと涙を拭きながら、うなずいた。

 

 最後に、フィネが口を開いた。

 

 「わたし……“魔族だから”って、何度も拒まれてきた。

  でも、ここでは初めて、“体を理解しようとしてくれる人”に会えた。

  だから、明日、わたしの存在を“例外”とか“異常”とか言われても……

  “違う”って、自分で言いたい。そう思います」

 

 セリアは何も言わなかった。

 ただ、静かに頷き、皆の背中に手を添えた。

 その目には、しっかりと火が宿っていた。

 

 「……わたしは、先生に救われた。

  だから、先生の医療が“守るに値するもの”だって、信じてます。

  明日は、“誇り”をもって、診療所に立ちます」

 

 囲炉裏の火が、静かに燃えていた。

 その赤い光の中、俺は弟子たちの姿を胸に焼きつけた。

 

 > 明日、王都の者たちが何を言おうと。

 > 俺たちは、命と向き合ってきた。

 > それだけは、誰にも否定できない。

 

 夜、俺は日誌に静かに書き記した。

 

 > 弟子たちは、まだ未熟だ。

 > だが、“命と向き合う目”を持っている。

 > 医者に必要なのは、それだけでいい。

 

 そして、ペンを置いたその瞬間──

 診療所の扉の外から、馬車の車輪音が聞こえてきた。

 予定より早く、“王都の使者”が村に入ったのだ。

 

 戦いの幕は、音もなく──しかし確実に、上がろうとしていた。



 朝日が昇るより前に、村の空気は緊張に染まっていた。

 王都からの視察団は、予定を一日前倒しして診療所に姿を現した。

 癒術官と記録官、兵士たちの装備は、どれも“視察”には過剰なものだった。

 

 「リクト=クレメンシア先生──あなたの診療所に対し、王都医療局より正式な監査を行います」

 癒術官の一人、デラントは無表情でそう告げた。

 

 俺は、静かに頷いた。

 「どうぞ。患者も記録も、設備もすべて隠しはしない。……ただし、“ここで何が救われたか”は、数字では測れない」

 

 「言葉は結構。事実のみで判断します」

 

 視察は、容赦なく始まった。

 

 器具の配置、薬草の在庫、処置記録の正確性──

 癒術官たちはすべてを“魔力基準”で評価しようとした。

 「これは……癒術書に基づかない処置方法ですね?」

 「そうだ。だが結果は出ている。“癒術で治らなかった者”が回復してる」

 「“実証可能な理論”としては、いまだ未認可の技術と見なされます」

 

 俺は口を噤んだまま、彼らの視線を見返す。

 

 やがて、フィネの診療記録に目を通した癒術官が、声を上げた。

 

 「この“魔族患者”──明らかに“標準的な医療体系”の対象外です。

  このような“治療不適格個体”を、診療所の正式記録に含めるのは不自然では?」

 

 その瞬間、セリアが静かに立ち上がった。

 「不自然、ですか?」

 

 癒術官が顔をしかめる。

 「そうだ。“特殊体質”への個別対応は、制度上の想定外で──」

 

 「でも、フィネちゃんはここで、ちゃんと笑ってるんです。

  “先生の医療”で、苦しくなくなったんです。それを、“制度”が認めないなら──その制度の方が、間違ってると思います」

 

 言葉に力がこもっていた。

 俺は黙ってその背中を見ていた。

 

 続いて、カイが口を開く。

 「俺だって、昔は王都の地下にいて、“誰にも見てもらえなかった傷”が腐ってた。

  でもここに来て、生き方を変えられた。あんたらの基準には、俺も“不適格”なのか?」

 

 メイナが震える声で言葉を紡いだ。

 「医療って、“誰かを救いたい”って願いから始まったんじゃないんですか……?」

 

 癒術官たちはしばらく言葉を失い、やがて口を開いた。

 「……それでも、“制度の中で許容される治療”でなければ、記録として認めるわけにはいきません」

 

 その瞬間だった。

 

 「──じゃあ、制度ごと、こっちから否定してやるよ」

 診療所の扉が開き、現れたのは──村人全員だった。

 

 先頭に立つゴルドが、視察団の前に進み出る。

 

 「この診療所は、わしらの命を守ってくれた場所だ。

  あんたらが何を“認める”とか“認めない”とか言おうと──

  “わしらは、ここを医療の場として受け入れてる”。それだけで十分じゃろうが」

 

 農夫たちが、一斉に頷く。

 「ここでしか助からなかったんだ」

 「先生の手が、うちの子の命を繋いでくれた」

 「魔法が効かなくても、救える方法があるって、あんたらは知らねぇだけだ!」

 

 視察団が言葉を失った。

 

 俺は、ゆっくりと癒術官に向き直る。

 

 「“患者の声”こそ、最も正確な治療実績だ。

  数字や印章よりも、“生きている命”が答えを持っている」

 

 ──そのとき、視察団の後ろで沈黙を守っていた若い記録官が、一歩前に出た。

 「……私も、実は……かつてこの村に住んでいました」

 

 皆が息を呑む。

 

 「幼い頃、ここで高熱を出したとき──魔力が効かなかった。でも、“この診療所”で助けられたんです。……忘れていました。

  “医療は誰のためにあるのか”を」

 

 癒術官たちが、顔を見合わせた。

 

 そして、しばらくの沈黙ののち──視察団のリーダーであるデラントが、こう言った。

 

 「──本診療所の運営体制は、明確な法令違反ではない。

  ただし、特殊体質への処置記録は“研究対象として仮受理”とする。

  それ以上の判断は、上層部に委ねる」

 

 俺は頷いた。

 勝ったわけじゃない。

 だが、“医療を誰のものとするか”を、俺たちは確かに“示した”。

 

 > 命を守る力は、制度や魔法に縛られない。

 > 信じて続ける者の手に、必ず残る。

 

 今日、村が“医療を選び取った”。

 それこそが、俺にとって──何よりの勝利だった。



 視察団が去った翌日、診療所にはまた別の訪問者が現れた。

 彼の名は──ローデリック=アスグレン。

 王都でも有力な貴族であり、軍医団の設立を推し進める急進派。

 “癒術を中心とした国家医療体制”を敷き、すべての医療を“戦略資産”として取り込もうとする勢力の筆頭だった。

 

 「やはり会ってくれるのですね、リクト先生。

  あなたの診療所の名声は、もはや辺境にとどまるものではない」

 

 俺は診療室の椅子に腰を下ろしたまま、彼を見つめた。

 「……で、何を奪いに来た?」

 

 ローデリックは肩をすくめた。

 「あなたの“技術”に興味があるのは確かだ。しかし今日は“奪う”ために来たのではない。

  私自身、“治してもらいに”来たのだよ」

 

 ──意外だった。

 「……自らが患者、ということか」

 「数年前から心臓の鼓動が不規則でね。癒術では安定はするが、根本的な解決には至らない。

  だが、王都の研究機関で“あなたの診療法”を調査した者が言った。

  “非魔力療法ならば、神経系の再調律で治癒が見込める可能性がある”と」

 

 俺は立ち上がり、診察台を示す。

 「横になれ。条件は一つ。“俺のやり方”に口を挟まないこと」

 

 「……ふふ、いいだろう」

 

 診察を始めると、彼の症状は想像以上に深刻だった。

 魔力過多による神経伝達の乱れ。脳幹の律動が不安定で、心拍の制御中枢に微細な異常が起きている。

 魔法がこの“わずかな乱れ”を毎回無理やり整えてきた結果、回復のチャンスを奪っていた。

 

 俺は、細かく点滴と呼吸リズムを調整しながら、圧刺激による反射を利用して神経反応を測定していく。

 

 治療中、ローデリックが小さくつぶやいた。

 

 「……これが、“奪わない医療”か」

 

 「奪わない。命を“支配しない”。俺の医療は、あくまで“寄り添う”ためのものだ」

 

 「だが、それでは“国は守れない”と皆言う」

 

 「“人を治す”ということが、“国を動かす力になる”日が来る。

  だが、手段を誤れば──“人の命を駒にするだけ”の国になる」

 

 ローデリックの表情が変わる。

 次第に目にあった敵意がほどけ、苦笑が浮かぶ。

 

 「……私はあなたに“負けた”な、医者として」

 

 「勝ち負けじゃない。……だが、治療が終わったら、あなたは“選べる”ようになる」

 

 「選ぶ?」

 

 「あんたが今まで“自分にしかできないことだ”と思っていた力は、実は“別の形”でも果たせるってことに、体が気づき始める。

  そうしたら、“人を従わせる”か、“人に託す”か──どちらの医療を支えるか、あんた自身が選べるようになる」

 

 治療が終わる頃、ローデリックの鼓動は落ち着き、呼吸が整っていた。

 

 彼はしばし沈黙し──

 やがて、静かに立ち上がった。

 

 「……私は、すぐには変われん。

  だが、あんたのやり方が“間違ってない”と認めるくらいの誇りは残ってる。

  だから、当面、軍医団の設立は凍結しよう。医療を“兵器”にしないために」

 

 俺は何も言わなかった。

 言葉はもう、いらなかった。

 

 > 治すことで、人は変わる。

 > 命と向き合えば、敵さえ“人”に戻る。

 > 医療は、“戦わずして止める”最も強い力だ。

 

 ローデリックが去った後。

 セリアが、静かに言った。

 「先生……すごいです。“治した”だけで、あの人を止めた……」

 

 「それが俺の“戦い方”だ。

  この手で、命を殺すことなく、命を守る側を増やしていく」

 

 外では、村の子どもたちが笑いながら走っていた。

 

 俺はそれを見ながら、静かにペンを取る。

 

 > 命は、守るためにある。

 > 医療は、そのために使われるべきだ。

 > “奪う力”ではなく、“与える知恵”として、これを残していく。


最後までお読みいただきありがとうございました。


第16話では、王都という新たな舞台でリクトたちが直面する「医療と政治」「命と制度」の複雑な関係性を描いてきました。


それでも変わらず、目の前の命に真っ直ぐ向き合う彼らの姿勢は、

「治すことで勝つ」「戦わずして止める」という新たな価値観として物語に根を下ろしていきます。


リクトたちが守ろうとしているのは、ただの医学ではなく、“人を信じるという行為”なのかもしれません。


次回、第17話では、王都の中枢へとさらに近づく展開が待っています。

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