小坂
ゆっきーが暴行したことにより被害者が刑事告訴してきた。ゆっきーは精神錯乱状態であったと弁護士が精神鑑定のそれを申し出た。
(裁判にまでなるなんて)
ゆっきーは死にたくなった。
一月もしないで退院。裁判も無罪となり、元に戻れる!
「そうだ! 小坂さんにお礼しなきゃ」
女心はわからないので、ちょっと高い食器を買った。
ピンポーン。隣の小坂へお礼にスタンバっているゆっきー。ガチャ。戸が開く。
「ナニカヨウデスカ?」え?
「あ、あの、ここ小坂さんですよね?」
「ダレノコトデスカ?」
あ! 隣って右側か! と、凡ミスしたゆっきー。
「すみません。間違いました」
ネグリジェ姿の東南アジア風のオバサンに詫び、いざ、小坂のもとへ。
ピンポーン。ガチャ。ドキドキするゆっきー。
「どちらさまで?」
「えっ! あの、小坂さんに用がありまして……」
黒服の男が怪訝な顔をしている。彼氏か、旦那さんか親なのか? また混乱してきたゆっきー。
「……うちは、【黒田】だが?」
「え? あれ? すみません。間違えました。」
怪訝そうに黒田はドアを閉める。
管理会社に問い合わせをしてみた。
「小坂さんですか? ご存知の通りここの物件は新築アパートで全員フルネームわかりますが、小坂という人は存じ上げません」
どういう事だ!
とりあえず自室へ戻る。
(あの人は、小坂とは?)
気になったゆっきーは思い出す。救急車を呼んだのは間違いなくいて、小坂(仮)の可能性が高い。しかし、事件性もないのに救急車を呼んだ人など探せるはずもなく、また考え直し。
(そうだ! 警察に助けてもらったお礼がしたいからって事でどうだろうか?)
夜も更けてきて、今日はもう寝ることにした。
夜中。ぐぅー。そういえば夕飯を食べてない。何か食べにいこうとするゆっきー。営業してるのは牛丼チェーン店くらいだ。
(牛丼でいいか)
店へ入り、食券を買って待つ。座ってる席は道路側でたまに通る人がこちらを見ているようだった。
(動物園の動物だな)
すると、一人の女性が止まった。ゆっきーを見ている。ゆっきーも見返す。
「小坂さん!」




