杉原綾奈〜邂逅〜
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第一話 ふたりのストーカー
あたしは、この世界が大嫌い。
いつもTVやネットで流れてくる情報は暗いニュースばかりで、政治の話とかも嘘っぱち並べている大人ばっかり。
友達とふざけ合ったり、おしゃべりするのは楽しいけれど、家に帰れば、血のつながってない弟が居る程度。
最近ちょっと刺激とお金を求めて始めたバイトでは、変な客に目を付けられるしで、嫌になっちゃうわ。
何が統率者よ。
金髪で美人だったけど怪しいひとだったなぁ。
何だかあの人、自分の事を人じゃなくて魔族だとかって云ってて、アイタタだったんだけど、
痛いストーカーってケーサツは相手にしてくれるのかしら?
アイツをケーサツに突き出すチャンス!
と思って派出所行ったら、アイツ、サツと仲良くおしゃべりしてて、さすがに近づけなかったわ。
何なの?サツと仲の良い痛ストーカーって、やっかいにも程があるわ?!
痛ストーカーに引き続き、道すがら、声をかけて来た長身のスーツ男…
今度は自分の事、神族だって云って来たわ。
何なの?そーゆーの流行なの?
最新の流行を求める女子高生より、最先端を行くなんて…!
ありえない。
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第二話 神痛いストーカー
マジであり得ない事になったわ。
痛ストーカーに引き続き、神族ストーカーのが危ない人だったわ。
何が妹をおとしめた悪魔ですって?
あんたの妹なんて知らないわよ。
人違いじゃないの?
あたし電車通学なんだけど、ホームであの神ストーカーを見かけた時は流石に逃げたわ。
アイツに突き落とされたらたまったもんじゃないわ。
たまたま近くの交番に入って、サツに云おうとしたら、あの痛ストーカーと仲良くしゃべってた奴が出て来たわ。
頼りになるのかなー?コイツ。
神ストーカーはサツなんて関係なしに刃物向けてくるし、流石に生きた心地しなかったわ。
サツに云われるまま、逃げて来たけど、大丈夫だったよね?
何処をどう走ったのか、ある路地に入ったら、ばったり痛ストーカーに会ったわ。
最初、向こうは気づいて無かったみたいで、
月光浴してたみたいだけど、夜道にキラキラしたあの髪、綺麗だったわ。
ふと、見てると向こうも気づいたみたいで、こっちに寄って来たわ。
「なにしてんの?こんなところで。」
正直、ちょっとドキッとしたのを悟られたくなくて、強気に出たけど、
「奇遇だな、外の空気を吸いたくて、散歩していただけだが?」
「あっそ。」
「伏せろ」
「え?」
痛ストーカーがふと叫んで、手を前に出したと思ったら、一瞬でまぶしくなったわ。
「うわっ、まぶし?!」
後ろの方で神ストーカーの「ぐぅっ?!」
って悲鳴が聞こえると、突然誰かに腕を引っ張られたわ。
「こっちだ!」
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第三話 ビル戦
痛ストーカーに引っ張られるまま、ついてったけど、まさか、ビルの高い所にまで来るはめになるとは思わなかったわ。
追われてる間に、ビルに追い込まれた?
彼がふと漏らした、
「あの神族、しつこいな。」
って言葉は、あんたにも言ってやりたいわ。
それはそうと、
「ねぇ、ビルになんて登ったりしたら、逃げ道無くなっちゃうんじゃない?」
「それは大丈夫だ。」
とか言うと、足早にかつ堂々とエスカレーターに乗って先に行っちゃうんですけど…。
ちょっと、あたしを置いていくんじゃないわよ!
ちらっと振り向いたら、入り口から神ストーカー追って来てるし!
「逃がさんぞ!小娘!!」
ひえぇ…
慌てて前を行く彼の後を追いかけて、上階に行って、とりあえず逃げてるけど、
「アンタはヤツに反撃とかしないの?逃げてるだけな訳?」
「反撃してもいいんだが、人が多くては、やりにくくてな。あまり表沙汰になっても困る所だし。」
金髪ロングにバンダナだなんてだけで、十分街中じゃ目立ってるってば。
ここ日本なんだし。
「外人か?!」ってツッコミ入れたいけど、自称魔族って言ってる時点で、「人外か?!」ってツッコミの方が合ってるのかしら。
そうこう考えてると、彼はどっかの扉を開けた。
途端、風が強く吹いてきた。
彼が開けたのは、外階段に出る扉だった。
「ちょっ!?」
「こっちだ!」
彼に言われるまま、外に出ると、後ろから神ストーカーが、あたしが立っていた所に何かをしかけて来た。
「何?」
「チッ!避けたか。運だけは良いヤツだな。」
彼はあたしの手を掴むと、あろうことか
「飛ぶぞ!」って行って来た。
あたしが、異論を唱える暇もなく、彼とあたしは夜の空を落ちる羽目になった。
「きゃああああ!!?」
思わず目をつぶっちゃったけど、
「大丈夫だ。もう撒いたよ。」
耳元の声で目を開けると、知らない建物が目の前に立っていた。
ここ何処?さっきまでこんなビル、近くにあったかしら?ってくらい、ガラス張りの円柱だった。
周りを見ても、さっきまで居たようなビルがなくなってるし…。
ヤツを撒くことは出来たみたいだけど。
彼は目の前にある建造群を指差して、
「オレたちはいつもここにいる。何かあったらここに来ると良い。」
「さんざんな目に会ったけど、また狙われたら、逃げ込ませて貰うわ。」
「家まで送るよ。」
そうね。ここ何処だかよくわかんないし。
まさか、彼の運転する車に乗ることになるとは、予想しなかったけど。
あたしより若いんじゃないの?
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第四話 契約
痛ストーカー、エリー(仮)って云うらしい。
「あんた、アイツと知り合いなの?」
「対面するのは初めてだが、オレの…オレたちの組織と対立している奴ら、と言えば分かりやすいと思うが。前に奴の妹を排除した事があったんだが、大方、オレと一緒に居たアンタを狙ってたんだろう。」
ちょ!?
それってあたし全然カンケーないじゃん!
「巻き込んでしまって申し訳ない。本当は別の案件で、アンタの手を借りたかったが、迷惑だってんなら、ここいらで手を引くよ。」
流石に申し訳なさそうに、眉を下げると彼は素直に謝ってきた。
でも、そういう事じゃなくない?
「ちょっと待ってよ!さんざん巻き込んでおきながら、そのいい草は気に食わないわね。それでアイツがあたしを狙わなくなるなんで保証があるわけでもないんでしょ?」
「まぁ、そうだな。今まで通りヤツに狙われる事もあるだろうな。」
「それじゃ何の解決にもなってないじゃない!ちゃんと解決してあたしの安全を確保してよね!!」
「すまん」
「あたしの身の安全が保証されるまで、守ってくれるってんなら、警察には言わないであげるけど?アンタ達の事、警察にバレちゃまずいんじゃないの?」
「よくわかったな。まったくもってその通りだ。身動きが取れなくなると困る。こちらの落ち度だ。しばらくの間、ボディーカードさせてもらうよ。」
(むしろ、この娘を囮にして、神族をおびき出せるな。)
「それじゃ、お手並み拝見させてもらいましょーか。」
「よろしく」
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第五話 変装
綾奈と一緒に行動する事になったエリー(仮)
彼を見て、綾奈はふと思う。
「ねぇ、あんたの金髪に黒バンダナって、すごい目立つんだけど…。」
「はぐれた時に便利だろ?」
「そうだけど、ってそうじゃなくて、一緒にいるあたしが変な目で見られるのは嫌だなーって思って。」
「そうか、少し待っててくれ。」
って言って、どっか行って、戻って来るまで待ってると、赤毛の冴えない男子高校生が声をかけて来た。
「待たせたな。コレなら、街を歩いてても、同世代の学生っぽく見えないか?」
「ひょっとして、エリー(仮)ちゃん?」
これには流石に戸惑っちゃったわよ。
童顔で年齢不詳のエリー(仮)よりちょっと地味っぽいし、顔も全然違うんだもん。
「この姿の時は貴幸と呼ばせてるんだ。オレの元々の身体の持ち主さ。何か変な所はあるか?」
うーん、なんてゆーか…
「幸薄そうなオタクに見えるのはあたしだけかしら?…まぁいいわ、そーゆー事ならよろしくね貴幸君。」
次の日、授業が終わって帰宅しようとしたら、門前にまで、迎えに来てくれたエリー(仮)こと貴幸君。
ウチの学校の制服じゃなくて、なんかどっかで見た事ある制服だったような…。
本人いわく、同じ学校だと、周りに疑われるだろうとのことだけど、学校内で狙われる事ってないわよね?
用事が無い時は、そのまま電車で帰るんだけど、今回は特別にエリー(仮)も居る事だし、
「ねえ、せっかくだし、買い物も付き合ってもらうわよ。」
「買い物?スーパーで食材でも?」
「ちっがーう!駅前のペインアクシーの新商品コスメ見たいのー!」
「命狙われてるってのに、肝すわってんなー、お前。」
「華の女子高生なめないでよね!」
ついでだから、荷物持ちさせてやるわ!
知らない人から見たら、彼氏彼女に見えなくもないんだろうけど、貴幸君、あいにくあたしの好みの顔じゃないのがなぁ…。
黒か茶色のウィッグでもつけて、女装させた方が面白かったかしら?
エリー(仮)ちゃんなら、名前も女の子っぽいし。
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第六話 シュシュ
とあるプチプラショップに入ってみたけど、何でコイツ、真っ先にヘアアクセの所に行くかな?
普段は背中までの金髪ロングだけど。
って、その赤いシュシュ可愛いじゃん。あたしにも見せてよ。
「あぁ、これ?同僚に見て来てくれって頼まれたんだが、高くなくて丁度いいと思ってな。」
「へぇー、彼女?」
「いや、男だ。」
「は?」
「俺よりも長い髪なんだが、時々邪魔そうにしてるから。」
「男なら切れって言えばいいじゃない。あんたより長髪って想像できないんだけど?流行なの?」
「あいにく、彼は魔術師の部類でな。髪は力にも影響するらしい。」
「まともじゃないわね、その人。」
誰かさんみたいで。
「腕っ節が強くて、脳筋みたいなヤツだから、魔法を使っている所を見た事はほとんどないんだが。」
「何ソレ。魔法カンケー無いじゃん。髪伸ばしてる意味なくない?寝ているうちに切っちゃいなよ。」
「……考えておこう。」
うわ、真面目に受け取られちゃったよ。
モヤッとしているうちにレジに持ってっちゃったわよ。
時々いるのよね、こっちは冗談のつもりで言ってるのに、馬鹿正直に返してくる温度差のあるヤツって…。
「領収書で。」
……300円の商品に、ちゃっかりしてるわ、ホント。
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第七話 カフェにて
ちょっと買い物も一息ついて。
「ノド、渇かない?あそこ入ろうよ。」
“貴幸”君だとちょっと背が高くなるのね。上目遣いに丁度いいわ。
「疲れたから、奢ってちょーだい。」
って、なんでちょっと赤くなってんのよ?
友達の受け売りで、腕に抱きついて、上目遣いしてみたんだけど…そんなにドギマギされたら、こっちまでどーしたらいいか迷っちゃうでしょ。
ちょっと貴幸君がシャイってゆーか、ピュアすぎて、こんな誰かに狙われてるような時じゃなければ、からかって楽しんだんだけどなー。
「今のあんたって、貴幸君なの?エリー(仮)ちゃんなの?違うところが多すぎて疑うレベルなんだけど。」
「この身体は貴幸と云う男の物だが、今はエリー(仮)の人格が利用しているに過ぎない。呼びにくければ貴幸でも、エリー(仮)でも構わないさ。」
「なんだか、思ったよりめんどくさそうってのは分かったわ。」
注文したキャラメルアップルティー、美味しぃ。
いつもは壁際のテーブル席なんだけど、今日は空いてなくて、窓際のカウンター席しか空いてなかったけど、これって、背中が気になって、落ち着かないのよねー。
「あんたが守ってくれるって言ってたけどさぁ、流石に学校までは入れない訳じゃん?ないとは思うけど、もし、学校の中までアイツが入って来たら、どーすんのよ?」
「一応、授業中も、学校周辺には居るんだが…流石に学校全ては不便だな。」
「デショ?」
「そう云うと思って、コレを渡しておこう。」
そう言うとさっき寄ったショップのプチ袋を出してきた。
「何?くれんの?ありがと」
中に入ってたのは、小振りのチャームのついたネックレスだった。
えー?なにー?あたしに気でもあるのー?
「さっき、シュシュを買ったついでに。」
「…女子へのプレゼントが、男への買い物のついでって、あんたねぇ…」
一瞬でも、ときめいた分、返せ。
「ただの消耗品だ。さっき手を加えて、俺の魔力を込めてある。あんたの近くにヤツが接近した際に反応する。」
「あぁ、そーゆーモンなのね。いわゆるお守り程度に持ってればいーわけね。」
「俺が万が一あんたを見失っても、見つけられるから、なるべく手放さずに居てくれれば、それでいい。」
わぁお、ストーカーに、GPS持たれた気分★
「この状況じゃなければ即ケーサツモンよね。」
「あんた、警察に頼ってないよな?」
「当たり前でしょ。自分で出来る事棚にあげて、他人に頼るのなんて、あたしの美学に反するっての!そーいや、こないだ、神ストーカーに追われた時のサツ、大丈夫だったのかしら?」
「どうかしたのか?」
「いやね、こないだアンタと会う前に、ストーカー男に追われてたから、サツに行ったんだけど、アイツ、刃物持ってたから…。」
「それって、花屋の向かいにある派出所のツンツン男か?」
云いながら、特徴的なあの髪型のシルエットをジェスチャーしてくる。
「そう!そいつよ!あたし慌てて、逃げたけど。」
「あいつなら、大丈夫だ。あいつも魔族。オレたちの仲間だ。気にしなくても、そんな簡単にやられはしないさ。」
「はぁ?魔族なのに、警察やってんの?人の平和守る悪者?それとも、隠れて悪事働く為にスパイでもしてるわけ?」
「いや、そーゆー訳じゃない。オレたちは何でも依頼ありきで、金さえあれば、依頼はこなすが、必ずしも魔族だからとか、種族にとらわれた生き方はしていない。ここの街の人は皆、似たようなもんだろ?」
そう言えば、
“私の親は天使だったが、人間との恋に堕ちて、私が産まれた。だから私は、天使とのハーフなの。”
とか吹聴していたクラスメイトがいたが、誰も気にしていなかったけど、そーゆーのと同じなんだろーか?
「そんな中で、アイツは生まれも、育ちも魔族として生きてきたが、人間が好きで、警察になったらしい。まぁ、よくいる“変わったヤツ”さ。」
「世の中、変な人、多いのね。そんなアンタも、ワケアリな集団の一人ってことでいーのかしら?」
「語弊が多いかもしれないが、大方そんな所だ。気になったのなら、いつでも歓迎するよ。」
といって、名刺を差し出してきた。
名刺でも(仮)かい。
こいつも相当ワケアリって事なのね。
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第八話 義弟
貴幸君に自宅まで送ってもらうと、あいかわらず吞気な義弟・直がリビングに居た。
学校のこととか、友達のこととか、一切聞いた事ないけど、ちゃんと学校行ってんのかしら?
コイツが落ち込んでる所、見た事ないのよね。
時々、女の子みたいな服着てる時あるのが、気になる所ではあるけど…。
そーゆー趣味の人も、いるだろーしね。
あたしが口出しする事でもないでしょ。
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第九話 作戦
数日間、貴幸君があたしをボディガードしていて、何の音沙汰もなくピリピリした日々が過ぎてて、流石のあたしでもイライラしたころ、
「もー!なんで何も起きないのよー!あたしの事狙ってたんじゃなかったのー?!」
「こうも何もアクションないと、平和だな。」
「何だか無性に腹が立ってきたわ。」
「待つのが嫌なら、こちらから仕掛けてみるか?」
「オトリしろってこと?」
「察しがよくて助かる。」
「華の女子高生の時間は有限なんだから、無駄な時間が過ぎるだけなら、その案乗ったわ!」
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第十話 紅のアイツ
エリー(仮)とあたしが、神ストーカーから逃げる最中、袋小路に追い込まれてしまう。
「とうとう追いつめたぞ、悪魔ども。」
「ちょ、ちょっと、どーすんのよ?!これじゃ逃げ道無いじゃない!」
「……ちっ…」
「あんれ~?そこにいるのって、エリー(仮)ちゃんじゃ~ん?」
神族の背後から現れたのは、軽薄そうな、赤髪のにーちゃんだった。
神ストーカーは背後を取られたのに、驚いて、後ろを振り向いた。
「ビルの暗がりに、女の子連れ込んで、逢い引きぃ~?エリー(仮)ちゃんも男のコだねぇ。ドゥエスお兄さんが、詳しくレクチャーしてあげよっか~?」
うわぁ。
「何あの変態。キモいんだけど。」
「云わないでくれ…」
そういいながら、こっちを見ようともしないエリー(仮)。
「まさか、あれもアンタのお仲間って訳じゃないわよね…あ!」
「気づいたか。」
突然現れた変態ポニテに付いている赤いシュシュに目が行って、思い出した。
あれは、先日エリー(仮)と街で買い物した時に、プチプラショップで購入したシュシュだ。
長い髪って言っていたけど、結んでも腰に来る位だったとは。
それにしても、
「なんか古くさい結び方よねー。」
「えー、マジで?今時の結び方ってどんなのあるのー?」
「えっと、下で結ぶより、アップにするとか、お団子にする方がいーんじゃない?」
髪の結び方が気になっちゃって、ひとこと呟いたつもりが、おに―さんの方にも聞こえてたみたいで、話に乗ってきた。
「お前ら!この状況を先に何とかする方が、先じゃないのか?!」
「え?」
ギンッ!
エリー(仮)の方を向くと、神ストーカーの抜いた剣を、鉄パイプで防いでた。
剣で切れない鉄パイプって凄いわね。
「え、何。珍しー。エリー(仮)ちゃん、ひょっとして押し負けてるー?助太刀必要?」
「――ってめぇ!?」
「ふんっ!所詮こんな程度だったか!魔族め!!」
「ぐっ!?」
神ストーカーの払った剣に弾き飛ばされるエリー(仮)が少し離れた所の壁に当たって止まった。
「ちょ、ちょっとぉ!」
大丈夫なのか、エリー(仮)に近づこうとしたら、神ストーカーの方から近づいてきた。
ヤバー、あたしの所じゃ、エリー(仮)より神ストの方が近いじゃない!
逃げらんない!!
男が近くに迫った時、あたしの前に赤髪の男が入ってきてー
そこからは一瞬だった。
あたしの所からは、ほとんど何したのか見えなかったんだけど、赤髪の男が、パンチしたと思ったら、神ストーカーが吹っ飛んでっただもん。
ふつー、パンチであそこまで吹っ飛ぶもん?
「そんな怖い顔して近づいたら、女の子がかわいそーじゃん。ねぇ、おにーさん?」
「チッ!貴様もそこの魔族の仲間か!邪魔するつもりなら、貴様もろとも、灰にしてくれる!」
神ストーカーが、吹っ飛んだと思ったら、すぐ起き上がって、剣を横に構えて、何やら呪文をブツブツ言いはじめた。
その呪文を聞いて、慌てて、少し離れた所にいたエリー(仮)ちゃんが、
「伏せとけ!」
って言ってきた。
何?
何が起きるのか分かんないけど、あたしがアクションしようとした所で、神族の呪文が完成したみたい。
こっちに向かって光球が飛んで来た!
あたしの前に立った赤髪が、思い切り振りかぶって、グーパンしたら、光球が一瞬で消えちゃった!
「何したの?!」
「何って、殴ったんだョ。」
「なん…だと?」
「お前、オレの事知らないのか?オレはドゥエス。紅炎のドゥエスさ。」
「…っ、その名は…!?」
「オレに並大抵の武器なんて、効 か な い ぜ。」
喋りながら、神族に近づいていって、「効かないぜ」の所で、思いっきし、ぶん殴ったもんだから、神ストーカーは一発で伸びちゃったわよ。
「なよっちぃ見た目の割には、強いのね、アナタ。」
「オレって、なよっちく見える?かっこいーおにーさん♡じゃなくて?」
「自分で言うんだ…。引くんですけど。」
「えー。」
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第十一話 これで最後じゃない
「ありがとうございます。エリー(仮)様。ドゥエス様。それに綾奈さん。お陰で、“彼”を捕まえる事が出来ました。ご協力感謝します。」
エリー(仮)とドゥエスに付いてったら、例の派出所にいたツンツン頭に、車で家まで送ってもらった。
「これでもう、あたしが危険な目に会わなくなるんでしょ?良かったわー。」
「いろいろ付き合わせて、悪かったな。」
「平和な日常が戻って来るなら、いいって事よ。」
ちょっと寂しくなるような気がすると思うと、複雑だけどね。
「じゃあ、あたしはこれで。」
そう言って、変な警察官のいる派出所から出て帰ることにした。
数メートル進んだところで、首にしていたネックレスの事を思い出して、Uターンする羽目になったわ。
まだ、派出所にいたエリー(仮)ちゃんに、
「このネックレス、返しといた方がいーかしら?」
「それは、君が持っていてくれて構わないよ。また何かあった時に、喚んでくれればいい。」
「それって、また会いたいってフラグでいーの?今度は本気にしちゃうかもよー?」
からかってみたら、彼はきょとんとして、
「どう取ってもらっても、構わないよ。」
「あっそ。じゃあコレは言葉通り、もらっとくわね。」
バイバイ。金髪の魔族ちゃん。
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