第5話
夢を見た。小さな頃の夢だった。
沙希は白いワンピースを着ている。遊馬は擦り傷だらけだった。
「大丈夫よ」
沙希が遊馬の手を握った。
誰にいじめられても、私が守ってあげる。
月曜日になり、オカルト部に足を運んだ。
「うんうん、顔色もいいね。これにて一件落着というわけだね。いったい誰のおかげだったっけ」
遊馬の顔を見た途端、亘理が言った。
相変わらずの異空間。腕組みしてソファに座るのは、オカルト部の変人部長だ。何だか前よりも、踏ん反り返っているように見えるのは気のせいだろうか?
態度はともかく、感謝してもしきれないほど助けてもらったことは事実だ。遊馬は頭を下げた。
「本当にありがとうございました!」
「す、すごく綺麗な角度のお辞儀だな。ヤンキーが意外に礼儀正しいとかよくあるそういうやつかい?」
「よく分からないですけど……情けないおれに喝入れてくれて、感謝してます。おれにできることならなんでもします」
「見返りを求めてやったわけじゃないけどきみがどうしてもと言うなら考えるよ。そうだなあ……このオカルト部、実は今、部員が山岸くんとぼくしかいなくてね、絶賛部員募集中なんだよ。そこでーー」
「ダチ、あたってみます!」
遊馬は教室から飛び出した。
「ああ、遊馬くんに入ってもらおうと思ったんだけど……」
「元気になったみたいですね」
山岸がうっすらと笑う。
「まあ、何よりだよ。ぼくも幽霊を見れたし。普段から見れたらいいんだけどね」
せんべいを齧る。今回は買ったばかりのものだったから、ぱりっといい音がした。
「次の来客が楽しみだよ。どんな幽霊に会えるかな?」
「どんな怖い話が待ち受けてるんでしょう……」
山岸が身震いした。