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いざ、ダンジョン

 俺とエルゥ、シトラは最近街の外れに出来たダンジョンにやってきた。

 ダンジョンとは突如空間の捻れによって出来る迷宮のことで、中は草原だったり洞窟だったりと形は様々だ。


 入り口は渦であったり扉であったりと様々だが、入ると見知らぬ空間に繋がっている。

 どんな成り行きがあって出来るのかはしらないが、ダンジョンは完全に未知の異空間といっても過言ではない。


 それはそうとしてここのダンジョンは洞窟タイプではあるが、下層へ潜るほど冷気が増し、極寒の地になるという。

 地形に難のあるダンジョンは単に強かったり厄介な能力を持つ魔物が居る場所とは違って対策が必須となる。

 氷竜の素材は凍傷に対しては滅法強いし、鎧や盾に組み込むには優秀なものだ。

 だから今高騰しているワケで……ま、それを知っていて売った面もある。


 だが今回は下層まで潜る予定はなく、個人の動きや連携や確かめるための探索だ。

 なので特別対策を講じる必要はない。


「入る前にギフトを確認しておこうか」


 仲間の使えるギフトを把握していくのは冒険者として最低限の心得だ。

 俺は初めにシトラに視線を向けると、彼女は了承したように首を縦に振る。


「まず、私は〈気配探知〉や〈魔力感知〉を持っていますので先頭はお任せください」


 お任せあれとばかりに胸に手を当て、シトラは言う。

 ギフトというのは基本的に似たような傾向のものを授かるケースが多い。

 例えば〈剛力〉を持つ者の他のギフトは前線で戦うに特化したものを授かっているといった形だ。


 おそらくだが、弓を武器にするシトラは遠距離で戦うに特化したギフトを持っているのだろう。

 気配を探知するギフトはその典型で、他には手先の精密さが上昇する〈緻密〉や、近距離戦にも役立つが身体能力や動体視力の上がる〈俊敏〉であったり。

 どんなギフトを授かるのかは遺伝子であったり性格がどうたらと議論されているが、明確な立証はされていない。


「後は〈俊敏〉であったり〈気配遮断〉、〈弓適性〉と基本のものをいくつか持っています。

〈氷魔法〉と〈光魔法〉の適性も持っていて、〈治癒魔法〉もレベルは低いですが中級程度の魔法までなら何とか……攻撃魔法は上級まで使えます」


「ほう」


 シトラの発言に思わず唸る。

 魔法というのは体内にある魔力というエナジーを行使して放つ超技術だが、適性が無ければ使用は困難。


 とはいえ、プロセスが決まっているので、魔力さえ持ち合わせていればギフトを授かっていなくても使うことは可能である。

 ただ詠唱といった言霊を利用して作る〈詠唱魔法〉にしても、魔力の操作と想像(イメージ)のみで魔法を構築する〈無詠唱〉にしても、適性持ちに比べると威力は落ちるし、魔力の消費も嵩む。


 なので魔法の適性を持っている者はそれだけで優秀と言えるのだが、シトラは氷と光に加えて治癒魔法の適性まで持っているらしい。

 魔法の階級は初級、中級、上級、最上級、伝説級と分けられる。


 初めは最上級までだったらしいが、冒険者のランクと同じように飛び抜けた才能の異端児が国を滅ぼす程の魔法を作ったせいでイレギュラーとして伝説級が作られたのだ。


 なんにせよ、攻撃系の魔法は上級まで使えると威力も出せるし治癒魔法は初級でもあれば十分なほど。

 弓使いとしての適性だけでなく魔法を高水準で使えるシトラは、スペックだけで見れば優秀な冒険者の域に踏み込んでいると言えよう。


「エルゥは?」


 自分をスーパールーキーだと豪語するちみっ子に視線をやると、聞いて驚けと言わんばかりのしたり顔で話を始めた。


「私は火と風の魔法が中級程度までなら使える。

 あと、さっき言った二つに……〈挑発〉と〈気配遮断〉のスキルもある」


 大口を叩くだけのことはある、と俺は感心する。

 戦士系のギフトを持つ者が魔法の適性を持つのは非常に珍しい。

 それに加えて〈挑発〉と〈気配遮断〉という対極にある二つを併せ持つとは。まったく持って驚かされる。


 〈挑発〉は使用することで自分にヘイトを向けさせることのできるスキルだ。

 原理は自身の魔力であったり“気”と呼ばれる特殊な体内エネルギーを増大させて視線を集めるなどと諸説ある。

 〈気配遮断〉は文字通りである。あって損はない、万能なものだ。


「後は基礎能力を上げるギフトが幾つか。

 攻撃系のスキルも三つある」


 指を三本立てる。


「一点集中の〈パワーストライク〉。これは溜めを必要とする。

 武器を振って衝撃波を飛ばす〈クラッシュウェーブ〉。威力は使ったことがないから分からない。

 魔力を消費して一撃の速度と破壊力を高める〈マジックエンハンス〉」


 薬指、中指、人差し指と立てていた指を折り曲げて解説したエルゥは、どや顔で締める。

 なるほど、単純な戦士というよりは魔法戦士と呼ばれる分類に当たるのだろう。

 二つの戦い方を持つことのできる者は非常に希少で、どのパーティーからも引っ張りになる。

 自分で逸材と口にするのも頷けるギフトだ。


「ラースのギフトは?」


 エルゥの問い。シトラが目を輝かせて期待の視線を送ってくるが、生憎大層なものは持ち合わせていない。

 二人とは違い、俺はどちらかといえば凡人だ。魔法を使うことも出来なければ、特別変わったギフトを持っているわけでもない。

 ……まぁ、俺がパーティーを追放される原因になった〈バーサーク〉という忌むべきスキルは希少だが、暴走してしまうので使わないに越したことはない。


「俺のギフトで特筆するようなものは〈挑発〉と〈気配探知〉ぐらいのもんだよ。

 スキルは〈パワーストライク〉しか持ってないし」


「へっ? 〈気配探知〉を持ってらっしゃるんですか? それじゃ私が先頭を歩く必要はありませんね……」


 シトラは間抜けな声を上げた後、トーンを落としてしまう。


「そうだけど、今回はシトラに先頭を歩いてもらうよ。夜までには帰ってくるつもりだし、行っても二階までだから」


 そう言うとシトラの表情は一転して、ぱあっと明るくなる。

 腕をぶんぶんと振り、お任せください! と元気一杯に答えた。


「……何にやけてるの?」


 俺の表情を見たエルゥが気持ち悪いものを見るかの如く軽蔑の視線を向けてくる。


「反応があまりにも可愛かったから、つい」


「きもい」


 やはり気持ち悪いと思っていたようで、一蹴される。

 そんなこと言われたって、前のパーティーではしばらく明るい雰囲気に包まれることがなかったのだから、仕方ないだろう。

 そうも言えずに、俺は苦笑する。


 ──キモい、か。


 早速ダンジョンに、とダンジョンを指差すシトラを先頭に、俺達は歩み出す。

 最後尾では、肩を落として着いていく俺。

 “キモい”という言葉は案外心を抉り、傷を残していった。

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