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第9話 ミッション「収穫量をアップしろ」

「本当に収穫量を増やせるのか?」

「まだわかりません。しかし、試してみる価値はあると思います」


収穫量を増やすことを考えていると、この開拓村の問題が見えてきた。

新しいことをするための人員がいないことだ。


村長にしても年貢が増えたことでおろおろとするだけだ。

他の村人はただ村長の決定を待つだけ。


問題が起きたら、どう対応するのか。僕は街でそれをやらされてきた。


問題の分析と対処法の起案。そして実行のための計画づくり。

武器強化はそんなことをしなくても対応できたが、それ以外にもいろいろとやらされてきた。


今、考えると侯爵様に雇われるということはそれができるのが最低条件なのだろう。

だから、15歳の成人になるまで手伝いという名の教育を受けてきたのだ。


村長も含めてこの開拓村の村人たちはそんな教育は受けていない。

起きたことに対応するしかないのだ。


それならば、僕が先頭に立って収獲を増やすミッションを行うしかないだろう。


「小麦の種まきには、まだ時間がありますよね」

「ああ。あと半月くらい先だ」

「それなら実験したいことがあります」


僕の強化スキルは小麦にも効果あるのか?


これが計画起案のベースになっている疑問だ。


元々、強化スキルは武器にしか使えないと思っていた。

剣をはじめ、槍とかの強化ばかりしてきたから、それ以外に使えるとは思っていなかった。


しかし考えてみれば、戦斧が強化できて斧が強化できないというのは不自然だ。

農具だって強化できるだろう。


しかし、強化できるのは金属品のだけという考え方もある。

それは弓を強化するとき、木の部分も強化したから、金属縛りがある訳ではないことは分かった。


それでも小麦はどうなのか?

小麦は植物だから、強化はできないのか?


もし、小麦を強化できたら収獲増もできる可能性が高い。


「普通は直接畑に種を撒くけど、苗床を使う村もあると聞いている」

「それがいいですね。結果が分かりやすいですし」


小麦の何を強化するか。そこが問題だ。


収穫量の2割アップができれば簡単に増産できる。


しかし、その場合。成功するかどうかが分かるのが、収獲時の初夏になる。

それでは遅すぎる。うまくいかなかったときの対応が遅れる。


「まずは発芽率を強化しましよう」

「普通に苗床に撒くと発芽するのが半分だよ。強化した小麦が半分以上なら強化が成功したということか?」

「その通りです」


早速、実験が始まった。


「おっちゃん、うまくいくといいね」

「ええ。せっかくリオンも手伝ってくれたんだから、成功した欲しいですね」

「村の将来がかかっているんだ。成功してくれよ」


村長とリオンと僕で、いつもより半月早く苗床を作る。

このあたりだと小麦は、3日もあれば芽が出る。


まずは、普通に撒いた小麦の苗床。ぜんぶで100苗ぶん。


次が強化した小麦の種を撒いた苗床。こっちも100苗ぶん。

3粒づつ、ひとつの苗床に植える。


発芽率が半分ほどなので、3粒撒けばどれか一つは発芽する。

全部発芽しない苗床は100苗のうち12苗ほどらしい。


だから、発芽強化した小麦も3粒まいたが、追加で100苗は2粒だけ撒いたものを用意した。


どのくらい発芽するのか?

結果がでるのは、3日後だ。


☆  ☆  ☆


「さて、3日経ったぞ。どのくらい発芽しているのか見るのが楽しみだ」


村長とリオンと待ち合わせをして実験畑に行く。


「どうかなー、強化苗、発芽しているかな」

「きっとしているはず。私は信じているぞ」

「そうだといいんですが。僕も楽しみにしています」


さぁ。いよいよ、結果発表だ。


「こっちはまだ芽がでていないのが15苗あるよ」


リオンのところは、強化していない苗だ。

そんなものだろう。


問題は次の苗だ。


「おー、こっちは芽が出ていないのは、7苗だぞ! やっぱり、少ないな」


村長のところは、強化した種を3粒撒いたところだ。

芽が出ていないのが半分くらいか。強化の効果はあったぞ。


そして、僕のところはどうだろう。


「おおー、こっちは19苗です。2粒だけにしてはそれほど多くないですね」


実験は成功だ。

小麦の種の強化はできるらしい。


と、なると、問題は強化ポイントをどこにするのか。


ひとつは発芽力でいいだろう。

他にも強化ポイントがあるのではないか。


「なんとか、年貢アップの対処ができそうだ。客人よ、感謝するぞ」

「まだまだ、です。もっと強化する方法を考えます」

「客人はこの村にいてくれないと困る存在になったな」


しみじみと村長が言うのを聞いて、僕のスローライフは成功しているな、と思えてきた。

やっぱり、村人達と一緒に自然の中で生活する、それこそがスローライフだからな。


「そうだ。客人よ、何か我々にできることはないか?」

「えっ、そうですね。身の回りのことをしてくれる女性がいたらありがたいですが」


街では宿舎があって、掃除とかをしてくれる、おばさんがいた。

今はいないから、ちょっと不便かな、と思っていた。


「おー、気が付かないですまんかった。すぐに用意しよう。今日の夜に向かわせよう」

「ありがとうございます」


小麦の強化に成功して、増産の可能性が一気にアップしたからほっとしていた。

その上、多少の無理なら言える環境にも満足していた。


なによりも、必要とされる人になったのがうれしかった。


しかし、この時は街の習慣と村の習慣の違いを知らずにいた。


いよいよ、2割おっさんが新しいジャンルへ挑戦が始まった。

武器・道具から、直接農業へ。


無限の可能性を秘めた2割おっさんはどこへ行くのか?


☆評価で、2割おっさんを応援してね。↓でぽちっと。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 『身の回りのことをしてくれる女性』 ごくりっ! 夜のおともですな!
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