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第2話 ロスト「第9階位のスカーフ」

「おい。2割おっさん! お前も逃げるんだよ!!」


全部の剣を強化し終わった徹夜明けの朝。

次の依頼が来るまで仮眠でもしようかと思っていると、衛兵が駆け込んできた。


「えっ? 何か起きたんです?」

「侯爵様が亡くなったんだよ。その上、子爵様も捕まって」

「誰に? なんで侯爵様が?」


とりあえず、身の回りの物をナップサックに詰めて物資調達処を出た。

子爵様の家臣たちが同じように逃げる準備をしている。


衛兵によると侯爵様は隣国に強硬偵察をしている最中に流れ矢にあたり亡くなったという。

いつでも最前線に立つ侯爵様だから、そんなこともあるだろう。


しかし、問題はその後だ。侯爵様がなくなったのなら長男のエドモンド子爵様が次期侯爵様になるはずだ。


ところが侯爵様次男のアンジェロ男爵が新たな侯爵候補として立ったのだ。

エドモンド子爵が直轄している各処に制圧するための兵が送られたのだ。


ずっと物資調達処で働いてきた僕にとって、侯爵様の跡目争いはあまり関係ないと思う。

しかし、他のエドモンド子爵様の家臣にとっては完全に立場がなくなるということだ。


「おい、お前。そのスカーフは捨てろ」

「ええーー」


今、僕が首に巻いているグリーンのスカーフは第9階位を示す物だ。12階位から始まって15年かけて第9階位まであがった。

その大切なスカーフを捨てるなんて。


「そのスカーフを持っているとエドモンド子爵の家臣だとバレるぞ」


そうか。

僕みたいな職人からすると、単に上司がエドモンド子爵からアンジェロ男爵に変わるだけの気がしていた。

しかし、ほとんどの家臣にとって、エドモンド子爵の失脚は自らの立場を失うことにつながる。

その上、生きているだけで反抗してくる可能性が高い家臣たちは全員殺される可能性が高い。


「あの~。武器強化職人は貴重ですから、助けてもらえるんじゃないですか?」

「今はそんなことを言っている暇はない。アンジェロ男爵の兵が来たら皆殺しだぞ」

「ええーー」


僕は思いっきり逃げることにした。


とにかく、アンジェロ男爵の手が伸びないところ。

街ではなく、もっと役人が来ないようなところ。


街道をとにかく西に向かう。

東に行けば侯爵様の居城がある海に近い街に着く。そっちじゃない。もっと辺鄙なところがいい。


馬もなく、馬車も使えないとなると歩くしかない。

徹夜続きでもうろうとした頭で考えた結果、とにかく西に行く。

街道は途中の街で終わるだろう。もっと大陸の中央に向かう。


そう侯爵領の辺境と呼ばれるところだ。政変が終わって組織が安定したら戻ればいい。

きっと武器強化職人は新しい体制でも必要となるはずだ。

また、階位は最低の12位に落ちてしまうかもしれないが、殺されるよりマシだ。


とにかく西へ、西へ。街や町をさけて野営をした。7日間、歩き続けてやっと街道の最西端に来た。

ここから先は町はない。辺境と呼ばれるところだ。


「あれ、待てよ。もしかしたら、これはチャンスかも知れない」


必死で西へと逃げていた時は逃げることに必死で気づかなかったけど。僕は今、辺境の入り口にいる。

そう、あこがれのスローライフの地にいるのだ。


街での生活を捨てて辺境の地でスローライフ。まだ、30歳と引退の歳には20年もあるけど。

自分の手で、自分が食べる物を手に入れる。


そんなスローライフがここより先の辺境には広がっている。

侯爵様も子爵様も関係ない。自分の力で辺境を開拓して、生きていく。

階位のスカーフも捨ててしまったし。


僕は僕の力だけを頼りに辺境の開拓地で新しい人生を歩む決心をした。

それがどんなに甘い決心だと知らずに。



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