第19話 ミッション「役人をたぶらかせ」
翌朝、デブ役人が来る日。
僕とソフィちゃんは村のハズレにある庵にいる。
元々は長老が住んでいたところだけど、亡くなったので今は空き家だ。
ちゃんと管理していたらしく、普通に生活するには何の問題もない。
僕とソフィちゃんは3日間。ここにいなければいけない。
僕はこの村に来ていないし、ソフィちゃんは街に行ったことになっている。
「今、デブが来たよ。村長さんが村長宅の応接間で話をしている」
リオンが僕らのために情報を伝えてくれる。
まぁ、緊急の強化でも必要なければ、僕らにはやることがないんだが。
☆ ☆ ☆
村長宅では、村長が年貢役人に今回の滞在の話をしている。
「どうしていだ? なぜ、ソフィちゃんが来ないのだ?」
「すいません。ソフィは今、この村にはいません」
「ここにいなくて、どこにいるのだ?」
「今年の春に、『街へ行く』と出て行ってしまいまして。その後は連絡がありません」
「なんだよ! せっかく1年ぶりにソフィちゃんに会えると思ったのに」
まぁ、いないんだから仕方ない。それで押し通す。
皆で決めた計画だ。
そして、ソフィ以上の女をつける。
それで機嫌が直るだろう。
実に単純な計画だ。ただし、その計画通りにするために、いろんなアイデアを詰め込むことにした。
もっとも、ほとんどが強化職人のアイデアだが。
なかなか、悪だくみがうまい男だ。
「お茶をお持ちしました」
「おー、待っていたぞ。ほれ、こっちに持って参れ」
身の回りの世話をする第一候補がうちのメイドをしている彼女だ。
セクシー担当なだけあって、デブの目がおっぱいを追いかけているぞ。
「なんだかいい匂いがするな」
「あら、そうですか? 街の女性みたいに香水なんてつけてませんが」
「すると、お前の匂いということか?」
「あら、エッチ。匂いだなんて」
こいつ、嘘が上手いな。
妻の秘蔵香水をガンガンに使った。
それも、対男限定でエッチな気持ちになる、効果2割強化させた強化版を。
「どれどれ、かいでやろう、くんくん」
おー、みごとに罠に嵌っているな。
しかし、彼女をソフィの代わりにすると言ったら強化職人が驚いていたな。
てっきり、私の女だと勘違いしていやがった。
彼女は旦那を亡くして困っていたから、うちで雇っただけだ。
それ以上のことは、何もない…たぶんない…まぁ、ないということにしておこう。
だから、身の回りの世話の役割を話したら、簡単にオッケーしてくれた。
もちろん、特別手当は出すことにしたけどな。
「子供を育てるのは、いろいろと物入りなのよ」
うん、彼女は男より子供だな。
子供のためには、男をたぶらかすことくらいしてくれるな。
「それでは、私はこれで」
「なんだ、帰っちゃうのか。もっといてくれよ」
「すいません。おもてなしの菓子を持ってこないと。少しだけ待っていてください」
「分かったよ。早く戻ってこいよな」
よし、喰いついた。
ここは完全にしておかないとな。
「どうです。彼女は?」
「おう、いいな。ソフィちゃんと違って華憐じゃないがな」
「その分、色気はありますから」
「あー、もし俺が望むなら、あの女を身の回りの世話役にできるのか?」
「もちろんです。ただし」
「ただし?」
「相当、エロいって噂でして」
「おー、それは楽しみだ」
「そうそう。今年は特別なのを用意しておきました」
「うん、準備がいるな。エロい女の相手をするとなるとな」
しっかりと2割強化した精力剤を渡してみる。
特別に10個入りだ。
3日じゃ使いきれないはずだ。
「これか効くんだよな。よし、今のうちに飲んでしまおう」
「それはいい考えです」
そう、それ飲んだらもう逃げられないぞ。
いけーーー。
「あのエロい女だったら、2ついるな」
「あっ」
うわっ、それってすごい効果なんだが。
私も試してみたけど、とんでもなかった。
本当に2割強化なのか?
何倍も効果が上がっている気がする。
「おー、身体がいきなり熱くなったぞ。効果てきめんだ」
よし、今だ。合図を送ってと。
「はーい。おいしいお菓子をお持ちしました」
「おー、それはすぐ食べたいぞ。こっちに持ってこい」
「そんな慌てなくてもお菓子は逃げたりしませんよ」
「お菓子はな。だけど、これは逃げたりさせないぞ」
おおー、バストをいきなりつかみおった。
こういうことになれているから迷いがないな。
「あれー、こんなところじゃダメですよ」
「いいじゃないか。いいじゃないか」
「村長さんも見てますよ」
「おい、邪魔だ」
「はい。私はこれで」
「あー、村長さん。私、どうしたらいいの?」
「お役人さまに任せておけば大丈夫だ」
「ええーー」
ちゃんと打ち合わせ済みだけど、無理やりって燃える形にもっていったな。
すごい演技力だ。
ここは彼女に任せて、さっさと退散するか。




