第18話 ストーリー「2人の覚悟」
さっきから同じことを考えている。
いつもの離れでソフィちゃんと一緒のベッドで。
村長さんの家からソフィちゃんと一緒に帰ると僕は彼女を抱いた。
そうしないと、収まらない何かがあった。
いつもより乱暴になってしまった。
いつもより、お互い乱れていた。
心も身体も。
終わった後、ソフィちゃんは眠りについた。
僕はというと、眠れやしなかった。
「こちらを立てると、あちらが立たずってことか」
村のことを考えれば3日だけ我慢すればいい。
なんなら、村の外に行くこともできる。
ただの役割だと割り切って、その3日はなかったことと僕が振る舞えば、ソフィちゃんも合わせてくれるだろう。
だが、それでいいのか?
村のためとはいえ、恋人を差し出すなんて。
男がすることか、それは。
ここはソフィちゃんを連れて逃げ出すなんてのはどうだろう。
うーん、逃げればいいというのは違う気がする。
要は仕事を取るか、プライベートを取るか、か。
今回の件は僕の仕事ではなく、ソフィちゃんの仕事だけどな。
成人してから街で過ごした15年間。
僕はいつも、仕事を優先してきた。
その結果、プライベートがほとんどない仕事漬けの人生になってしまった。
スローライフを送ると決めて、この村に来た。
そして、村人たちのために僕ができることをしてきた。
だが、あくまでもプライベートを犠牲にすることはなかった。
ソフィちゃんと過ごす時間がとても大切な時間だったからだ。
それが明日、プライベートじゃなくて仕事を取ってしまったら、何かが崩れてしまう。
そんな気がする。
だけど、村のためにならないことはしたくない。
あー、まただ。堂々巡りじゃないか。
いくら考えても答えがでない。
こんな頭で考えていいアイデアなんて生まれてこない。
「よし、寝るぞ!」
どうしたら寝られるか、分からないから、横で裸で寝ているソフィちゃんにくっついてみた。
ゆっくりとした呼吸……それに合わせて息を吸って吐く。
なんどかそれを繰り返していたら眠くなってきた。
全ては明日だ。今日はとにかく寝るとしよう。
☆ ☆ ☆
昨日と同じ部屋、同じメンバー。
僕とソフィちゃん、そして村長さん。
今日はソフィちゃんは僕の隣に座った。
昨日は村長さんの横だったからな。
「さて。いきなりだが。昨日の答えを教えてくれないか?」
「もちろんです。その前にいくつか確認させてください」
ここで僕は一旦、言葉を切った。すこし間をもたせるために。
心の準備がいるからな。
「まず一つ目の確認です。ソフィちゃんは、村に来た賓客の身の回りの世話をするという役割なんですね」
「そうだ。15歳で成人してからずっとそうだ」
「そして、誰を対象にするという選択は村長さんが決めることになっているんですね」
「そうだ。私は村の代表だからな。村のために、対象を決める権利と義務がある」
「分かりました」
「おお、分かってくれたのか!」
ここでまた間を持たせた。
ソフィちゃんを見る。
ぐっと堪える顔をしているな。
「もうひとつ確認します。僕は村で生活していますが、村の住民ではないですね」
「あー、そうだ。賓客として村の人達には接するように言ってある」
「では、私は村長さんの部下ではなく、独立した存在ですね」
「そうなるな」
ここまでの認識は僕と村長さんはズレていない。
だから、こそ、言わなければいけないことがある。
「僕は決めました。もし、明日から3日間。ソフィちゃんを別の男の元にいけと村長さんが命令するなら、僕はこの村を出ます」
「なっ、何を言っているんだ!」
「ソフィちゃんを誰の元に送るかは、確かに村長さんが決めることです」
「あ、ああ」
「僕はその選択で、僕のこれからを決める権利と義務があります」
「だ、だから、村のために」
「僕はここの村人ではないから、村の為に犠牲になる気はありません」
「そ、そんなことを言ったって……」
「僕は村長さんに選択肢を2つ渡します。僕を選ぶのか、明日来るデブ役人を選ぶのか。両方は選べません」
「そんなこと。そんなこと。村のために…」
「村長さんが村のためにがんばっているのは分かります。でも、それは僕には関係ないことです」
僕は冷静に言葉を紡いだ。
僕を選ぶように強制するつもりはない。
村長さんがどっちを選んでも、その決定に基づいた行動をするだけだ。
「今、決めてください。一晩考えるというのは無しです」
さすがに、明日来るというのに準備がいるだろうからな。
これは僕の都合ではなく、村の都合だ。
「あせらなくてもいいです。時間はあります」
僕はソフィちゃんを見て、にっこりと笑う。
ソフィちゃんは、あたふたしている。
村長さんがデブを選んだら、僕との別れにつながるからかな。
少しは寂しく感じてもらっているのかな。
「ふう。もう、あなたは覚悟を決めたということだな」
「ええ。朝、起きたとき、決めました。3日だけソフィちゃんを貸すという選択は無しだと」
あれ、村長さん。顔が変わったぞ。
なんだろう、急に落ち着いてきた感じだ。
「それでは私も覚悟を決めました」
「はい。では、答えを聞きましょう」
「この村はあなたを失うことはできない。デブが怒ろうと騒ごうとしっかりとやるべきことをするだけだ」
「おー。村を代表して、覚悟を持って選択したと考えていいんですね」
「もちろんです」
「ありがとうございます」
僕は深々と頭を下げた。
横をみると、ソフィちゃんが嬉しそうにしているから一緒に頭をさげさせた。
僕らふたりのために、村長さんは茨の道を歩くと覚悟したのだ。
そのくらいは礼儀だよね。
「ただし、あなたにも手伝ってもらいますよ。デブを騙す手伝いを」
いつの間にか、村長さんもデブ呼ばわりになっていて笑った。
まぁ、どうせ、上の目が届かないところにいる役人なんて、ろくなことをしていないのだろう。
デブ呼ばわれくらいがちょうどいい。
「やりますよ。僕にできることなら。強化が必要な物があったら、やりまくります」
「それもいいな。だけど、まずは」
村長さんと僕、そして、他の村人を呼んでデブ役人を騙す計画を組み立てて行った。
周りに流されて生きてきた主人公が、覚悟を決めたみたい。
なにか、変わるかな。
覚悟を決めるって大切なことなんだよね。
だから、覚悟をきめて欲しいな。
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