第17話 分岐「義理と人情」
リオンに言われて、村長さんの家に行く。
村長さんの家ではメイドさんが待っていて、応接間で村長さんがいるそうだ。
そなみにそのメイドさん。
長身のぼん・きゅ・ぼんのナイスバディ。
美人の推定24歳の女性だ。
彼女に身の回りの世話をしてもらっているのか?
村長さん、うらやましいな。
そんなことを考えていると、応接間に着いた。
メイドさんがノックすると中から「入ってくれ」と村長さんの声がする。
メイドさんがドアを開けて一緒に中に入る。
すると、村長さんだけじゃなかった。
村長さんの横の椅子にはソフィちゃんも座っている。
「あれ? お呼びだったのは僕だけじゃなかったんですね」
「まぁ。ソフィにも関係ある話だから、一緒に聞いてもらおうと思ってな」
ん? どうしたのかな。ソフィちゃんが元気ない。
いつも、僕と一緒のときは元気いっぱいなのにな。
村長さんがいるから、感じが違うのかな。
それだけとは思えない。僕の顔も見ないで下を見ている。
なんかあったのだろうか?
「それで、何の話です?」
「実は、今、滞在している部屋のことだが」
「はい」
「明後日から3日間、空けて欲しいのだが。もちろん、別の部屋は用意されてもらう」
あの部屋は離れだから、ソフィちゃんとあんなことやこんなこと、をするのにちょうどいいんだけど。
まぁ、それは仕方ないな。借りているだけで、家賃を払っていないんだから。
「いいですよ。明後日の朝、でいいですか?」
「あー、そうだな。明日の夜からがいいんだが」
「分かりました。荷物はおいておいて、いいんです?」
「荷物も持って、この家の客間に移ってほしいのだが」
「いいですよ」
うーん、村長さんの家の客間となるとあんまり音を立てないようにしないとな。
ちゃんとソフィちゃんと話し合わないと。
「それと、その間ソフィもお休みをもらいたい」
「えっ? 身の回りの世話のことですよね」
「ああ。もちろん、代わりの者は用意させてもらうが」
なんか変だ。
ソフィちゃんは手をぎゅっーと握って何かをこらえている感じがする。
僕が来る前に村長さんから何か言われたように思う。
「休みはいいんですが。休みの間、ソフィちゃん、何かするんですか?」
「あー、それはだな。ソフィの役目があってだな」
ん? なんとなくわかってきたぞ。
村長さんの奥歯に物が挟まったような口ぶり。
ソフィちゃんのこらえている表情。
「ずばり聞きますよ。ソフィちゃんは別の誰かの身の回りの世話をするんじゃないですか?」
「まぁ、そういうことだ」
ちょ、ちょっと待ってよ。
それって、3日間だけ、別の男の身の周りの世話をするってことか。
そして、ただの身の回りの世話じゅなくて、夜伽も入っているってことか!
「冗談じゃない!」
「怒るのはもっともだ。しかし、これはどうしようもないことなんだ」
「で、誰なんですか? まさか村長さんの息子じゃないですよね」
「ばっ、ばかな。あいつなら、いっぱつひっぱたいて終わりだ。そんなことができない相手なのだ」
「それは誰です?」
「領主、侯爵様の代官としてやってくる年貢役人だ」
あー、そういうことか。
農村は毎年、小麦の播種の前になると年貢役人がやってくる。
小麦を作る耕作地の広さを調べるために。
この年貢役人になると、すごくおいしいって噂は街で良く聞いていた。
村に行くと、畑調査をしている間、接待されまくりらしい。
その上、賄賂や欲しい物を要求して、それこそ女も用意してもらうのが当たり前。
まぁ、本当かどうか街では判断できなかったが、ソフィの過去の話にも出てきたし。
「去年の奴と同じ男が来るのか?」
「そうらしい。調査予定を知らせる使者が『ソフィという女を』と書いた文を持ってきたのだ」
要はとてつもないデブってことか。去年と同じならば。
「村としては、役人を怒らせることはできない。来年の年貢にもかかわってくるしな」
「接待しまくるってことですね。少しでも印象をよくしてもらって、耕作地の広さを少なく報告してもらうために」
「そうだ。毎年のことだ。仕方ないことなんだ」
あー、むかつく。
なんで、そんなデブにソフィちゃんを差し出さないといけないんだ。
「それで。ソフィちゃんはどうなんです?」
「……それしかないの」
ぼそりと言う。
もうソフィちゃんの説得は終わっているということか。
そして、身の回りの世話はソフィちゃんの役目で、相手が僕からデブに変わるだけか。
あー、詰んだかもしれない。
せっかくリア充を思う存分、楽しもうと思っていたのに。
こんなデブの邪魔が入るなんて。
「一晩だけ、考えさせてください」
そう言うのが精いっぱいだった。