第16話 オーダー「砥石」
村長に強化した丸薬をあげた後。
僕はもっと村人の役に立つことはできないか、村の中を歩いていた。
もっと生活に密着した強化スキルの使い方がある。
そんなことを感じながらね。
「ん? それは包丁を砥いでいるんですね」
10歳くらいの女の子が座って作業をしている。
「うん。お母さんが村の食堂で働いているの。お手伝いしているの」
「その1本だけ砥ぐんですか?」
「違うよ。今日は全部で8本砥ぐんだ」
小さいのに村の人はみんな働き者だ。
街だとまだ学校で勉強している歳だ。
「偉いな。あっ、そうだ。もっと包丁研ぎうまくなりたくないですか?」
「えっ、おじちゃん。包丁研ぎの達人なの?」
「いや。包丁研ぐのはやったことがないですが」
代わりに砥石を手に取った。
砥石の解析をして、強化してみた。
どの機能を強化するという特化した強化ではなく、単に全体的な強化にした。
最近は、解析結果によって強化できるポイントが分かる。
砥石はそこまでこだわって強化することもないかなと一番簡単な全体強化だ。
「ほら、できましたよ。使ってみてください」
「本当? なんかぴかって光ったみたい」
「そうです。砥石を強化してみました」
まるで分っていないという顔の少女。
どんな効果があるか、興味あるな。
「わー、すごく使いやすい。しゅっ、と、いい感じで砥げるぅ」
「それはよかった」
1本の包丁が研ぎあがるまで横で見ていた。
砥石を強化したことで研ぎやすくなって、楽しそうに研いでいる。
「できたぁー」
「砥ぎあがりですね。ちょっと見せてもらっていいですか」
「はいっ」
「そっちのもいいです?」
強化した砥石で砥いだ包丁と強化する前の砥石で砥いだ包丁。
両方を解析してみる。
「おおー、こっちの方がよく砥げていますね」
「うん。やっぱり?」
少女もそう感じていたみたいだ。
包丁砥ぎの達人になったようなものかな。
「じゃ、僕は行くね」
「おじちゃん、ありがとう」
うん。
包丁を強化するより、砥石を強化した方が効率が良さそうだ。
僕がすべてやってしまうより、他の人の手伝いをする方が村人も喜んでくれるに違いない。
こうして村の中を歩いていると、いろんな人がいろんなことをしている。
近くの川で魚を獲る罠を作っている若者。
竹を細く裂いて、長細い筒を作っている。
一度、筒の中に魚が入ると、逃げられないようになっているらしい。
井戸から水汲みをしている少年もいるな。
まだ朝御飯前なんだろう。
朝飯前にやっておくことがそれぞれあるようだ。
僕はあちこち見て回って、強化したら効果がありそうな物を探して強化してみた。
みんな喜んでくれて、感謝の言葉をくれる。
まぁ、村の中ではお金はもらっていないけど、生活に必要な物はなんでも村長さんが用意してくれる。
だから、僕は村の人達に感謝の気持ちで強化している。
もちつもたれつ、って奴だね。
日用品の強化は簡単でパワーも使わないから気楽にできるのもいい。
うん、こんな感じで村で強化して生活していくのもいいね。
これだってスローライフって言えるんじゃないかな。
そんなことを考えてぶらぶらいると、リオンがやってきた。
村長さんが呼んでいるらしい。
なんだろう? 急用かな。
気楽にオーダーに応じるのは楽しいんだよね。
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