第13話 オーダー「回復ポーション」
ゴブリン討伐の話を村長さんにしたら、すごい喜びようだった。
村でバックアップできることは、なんでもするからゴブリンをなんとかしてほしいと正式依頼をもらった。
「あそこがゴブリンの巣ですか?」
「ああ。想定では100匹程度いるな」
今回の討伐では、美人のルナさんを隊長に12人の隊員で13名が参加する。
村人の中で弓が得意な10人も、サポート役として参加することになった。
ゴブリンの巣を叩きにいくと、どうしても完全に討伐しきれないで逃げる奴がでてくる。
数匹でも逃がすと、また別のところに巣を作ってしまうから、逃げてくるゴブリンを弓でやっつけるサポート役が必要となる。
その部分は村人が担当することになったのだ。
リオンもサポート役のひとりとして参加することになったので、僕も手伝いとして同行することになった。
「どうやって、ゴブリンをひっぱりだすんです?」
「ちゃんと用意してきたぞ。これだ」
ん? なんだろう、これ。
直径20センチくらいの玉だ。材質は枯草を固めた物?
「これは煙玉だ。普通は逃げるときに追手に投げて追撃を回避したりするんだが、これをゴブリンの巣穴に投げ込むんだ」
「あー、それは名案ですね」
「ゴブリンの巣穴は小さいから屈まないと入れないからな」
魔物討伐の経験が多い遊牧民の戦士なだけあるね。
あっ、そうだ。
「煙玉は、それ一つだけです?」
「いや、全部で3つ用意してあるぞ」
「ちょっと3つとも貸してください」
「いいが。ちょっと待ってくれ。おーい」
隊員に言って煙玉をあと2つ、持ってきてもらった。
どうせ、これを使うなら成功確率をあげておかないと。
「これを解析して…うん、分かりました。強化できます」
「えっ、こんな物も強化できるのか?」
「煙の強さが2割増しになるはずです」
「おー、そんなことが。ちょっと待ってくれ」
「なんでしょう」
「もしかして、これも強化できるのか?」
「ポーションですね。回復ポーション?」
「そうだ。今回は3本だけ用意してある。高いからなポーションは」
「いいですよ。やってみます」
回復ポーションを3本、煙玉を3個。
このような消耗品は強化が簡単だ。
「できました」
「ずいぶんと早いな。まだ10分だろう」
「そのくらいで十分ですよ」
さて、準備もできてし、いよいよ本番ですね。
☆ ☆ ☆
僕ら村人は、すこし離れたところに2人づつで見守っている。
狼獣人は、連携プレーがとにかく得意だと言われている。
それを現実に見ると、敵にはしたくないな、と改めて思う。
ゴブリンの巣には入り口が2つある。
合図とともに、同時に入口にいる見張りゴブリンにふたりが馬に乗って近づき、短弓を放つ。
見事、見張りの心臓に矢が突き刺さる。ただ、その前に紐を引いて警報が発せられたようだ。
「いいぞ。次は煙玉!」
これも馬に乗った狼獣人が煙玉を巣の入り口になげこむ。
なにやら大きな音がして、入り口は煙がもうもうと上がる。
「燻し出し作戦、成功ですね」
「ああ。さて、私も戦いに参加してくるな」
「がんばってくださいね」
「ああ。もちろんだ」
もう、何十匹のゴブリンが巣穴から出てきている。
ルナは、一匹のゴブリンに短弓を向けると矢を放つ。
何が起きたのか理解できていないゴブリンだから、動きが読みやすいのか。
ゴブリンの首筋に矢が刺さった。
「1匹目!」
馬に乗ったルナに気づいた3匹はルナ掛け寄ってくる。
順番に1匹づつ狙いを定めて矢を放っていく。
2匹倒したところでゴブリンが至距離に入る。
「これでもくらえ」
ルナは槍を出して、ぐるんと一周、巡らせる。
すると、接近するゴブリンを一刀で切り伏せた。
☆ ☆ ☆
「これでゴブリン全部討伐を終えたはずだ」
「一瞬でしたね」
「10分は掛かっているが、まぁ。一瞬だな」
村人では到底できないゴブリンの巣討伐。
それがたった13人の狼獣人によって全滅させることに成功した。
「これで、南エリアにいてもゴブリンを恐れなくてすみそうです」
「これくらいは我々の手にかかれば簡単なことだ」
「また、魔物に村が襲われることがなくなりそうです。ありがとうございます」
「短弓だけでなく回復ポーションまで強化してもらったからな。こちらこそお礼を言わなければな」
僕が短弓を強化して、ルナの狼獣人隊がそれを使ってゴブリンの巣討伐をする。
討伐が成功すると、農民達が畑を増やす。
どんどんと効果が上がるな、これは。
「これからも、魔物で困ったら連絡をくれ」
「はい。そう言ってもらえると恩返しとして必要なら色々な物の強化をするよ」
「おー、本当か。必要になったら頼みに来るぞ」
遊牧民の約束は、実際に実行されるだろう。
お互い必要とすることを相手のために行う。
ルナ達と、とてもいい関係が作れた気がするぞ。
なんでも強化中です。
で。理由はともあれ。
☆評価してね。