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第12話 小麦増産会議

発芽率2割アップの実験が成功して、より多くの小麦増産ができないか。

村の主だった人が集まって会議することになった。


もちろん、僕も身の回りの世話役のソフィと小間使いのリオンを連れて参加した。


「あー、彼のおかげで小麦の発芽率を上げることが可能になった。あと、一本あたりの小麦の収獲も2割アップが期待できるとのこと」

「本当ですか!」

「まだ、確実とは言えませんが。可能性としては大です」


小麦の発芽率が2割アップの強化ができたから、収獲量アップの強化もできるんじゃないかな。

ただ、結果が分かるのは来年の初夏になるけどね。


「他にも、農具を強化してもらった結果、一人あたりの耕作力が倍近くなっています。これをどう生かすか。それが今日の会議のメインテーマです」


このあたりになると、僕の出番はないな。

ただ、農業の専門家たちの意見を聞くだけだ。


「本当は南エリアを畑にできたらいいのだがな」

「村長、それはやめた方がいいですよ。ゴブリンが出ます」


ゴブリンと聞くとソフィの顔が曇る。

いくら時間がたっても、忘れられないことってあるよね。


「いくら、弓や剣を強化してもらっても、あいつらは数が多いからな」


ゴブリン1匹だけなら、武装した大人なら簡単に退治できる。

しかし、ゴブリンはずるがしこく、連携や罠を使って人間を殺す。

よっぽど準備をしていないと危険が多い。


畑作業をしているときに襲われると大抵被害者が出てしまう。

だから、ゴブリンが出現する南エリアは入ってはいけないエリアと決められている。


「やっぱり、北エリアか。粘土質の土壌で小麦には向かないところなんだよな」

「まぁ、小麦は無理でも豆ならできますって。年貢には使えませんが、我々が食べる分と周りの村に売ればお金にもなります」

「そうそう。強化した農具のおかげで、乾いた粘土質土壌のところでも、鍬が入ります。今年は北エリアで豆づくりをしましょう」


秋の作付けまで、まだ時間があるということで、準備はしつつ、どんな作物にするかは後で決定することになった。


しかし、農具の強化がそんな効果があるとは。

僕にとっては、強化スキルが村人たちの役に立つことを実感できた会議になった。


☆  ☆  ☆


「また、美人の狼獣人さんが来ているよ」

「おー。僕に会いにきたんですか?」

「そうだって。だから、呼びに来たんだ」


会議が終わって、ソフィとふたりでいちゃいちゃしていると、リオンがそう告げた。


あ、いちゃいちゃばかりしている訳じゃないよ。

他にも……あれ? 思いつかない。

いちゃいちゃばかりしているらしい。


「しかしなんだろう。強化した短弓に問題がでたんでしょうか?」

「ううん。お願いがあるって言ってた」

「それなら安心ですね。ソフィちょっと待っててね」

「うん」


なんだか、新婚さんみたい。

気持ちいいね。


「よし、リオン行きますよ」

「うん」


村の入り口でまた馬に乗った美人の狼獣人さんがいる。

たしか、名前がルナさんって言ってたな。

今日も強そうなお供の男、ふたりを引き連れている。


「お待たせしました」

「おー、呼び出してすまなかった」

「いえいえ、大丈夫ですよ」


ただ、いちゃいちゃしていただけだったからね。


「何かお願いがあると聞いたんですが」

「そうなんだが。実は氏族に帰って強化してもらった短弓をみせたら私の部下たちも強化してほしいと言ってな」

「いいですよ。それが、そうですか?」


馬に短弓が10本くらい、取り付けてある。


「ああ。そうだ。これを強化してほしいのだが」

「はい」

「ただ、問題があったな。羊を連れてくることができなくてな」

「えっ、どういうことでしょう」

「羊は氏族の重要な財産なので、氏族長の許可なく交易に使ったことが問題になってな」

「あー、そうですよね。返しましょうか?」


羊は村で飼うことにしている。

食べてしまおうという意見も一部あったが、何かあったときのために育てることになったのだ。


一応所有権は僕にあるみたいなので、返すと言っても問題にはならないだろう。


「いや、一度渡した羊を取り返すなど、私の誇りが許さない」

「あ、そうなんです? じゃあ、どうしたら?」

「だから、この追加の短弓の強化の対価は羊では払えないのだ」

「そういうことですね。いいですよ、無料で」

「ばかな。そうはいくか」

「えっと、羊は無理なんですよね」

「だから、羊ではなく、我々ができることで何かないか、と相談に来たのだ」


あー、そういうことですね。

冒険者に依頼を出すような物ですね。


「ねぇ、ゴブリンは退治できる?」

「おー、リオン、いいこと言うな。ゴブリン退治をお願いできますか?」

「ゴブリンか。もちろん、簡単だが?」

「ゴブリンって言っても、一杯いるんだよ」

「一杯いても、ゴブリンはゴブリンだ。我々の敵ではない」


おー、さすが、大草原で身ひとつで生きている遊牧の民だな。

ゴブリンくらいは簡単に蹴散らせるらしい。


リオンが語ったところ。

この村の南に大きなゴブリンの巣があって、そこからゴブリンが湧いてくる。

その巣をつぶせば、南エリアに小麦が植えられるのだ。


「分かった。大きな巣となると確かに調査がいるな。強化は調査が終わってからだな」

「いえ、先にやっておきますよ。調査の時も、強化した短弓の方が安心ですし」

「先にやってくれるのか。我々を信じてくれるのだな。その信頼に必ず応えよう」


おー、かっこいいな。

契約とかじゃなくて、信頼で遊牧の民は動くという話を聞いたことがある。


街や村だと、口約束だけだと言った言わないと問題になるけど、遊牧の民は一度口に出したら、必ず守るのが当たり前らしい。


昔、遊牧の民と報酬の約束をして、助けてもらった商人が報酬が惜しくなりごまかそうとしたことがあった。

遊牧の民は、信頼を裏切ったその商人の館を氏族全員で襲って全滅させてしまった。


それ以来、街では遊牧の民との約束をたがえるのは命がけだと言い伝えられている。


契約がどうのとか言い訳が通じない野蛮な奴らって言われているんだけど。

ごまかす商人の方の問題だと思うな。


「では、信頼に基づいて明日までに短弓の強化はしますね」

「おー、全部で10本だぞ。明日までにできるのか?」

「もっと必要だったら、持ってきてください。まだまだできますよ」

「いや、10本で十分だ。もし、調査の結果、私の部下だけでは力不足となったら、また相談させていただく」

「はい。約束しました」


なんか、気持ちがいい連中だな。

遊牧の民というのは。


もし、ゴブリンの巣をつぶすことが本当にできたら、村にとって朗報だな。


ガンガン小麦を作るぞー。

って、スローライフってそういう物だっけ?


結局、働いてしまうのが、ワーカーホリックの性分らしい。


まぁ、リア充だし、村人たちからも評価がもらえているし、いいか、って感じ。

評価がもらえると頑張れるよね。


☆評価、欲しいなー。↓でぼちっとしてっ。

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