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仲間が加わる

朝から午後3時まではラッセンは毎日、勉学から剣術に明け暮れる。午後3時までというのはロザンヌがまだ、3歳の幼児なのでロザンヌはサラに連れられ強制的に昼寝をさせられる。どうやら、大魔王ロザンヌはサラには忠実である。

午後3時からラッセンは近所のアルファと()()()()()遊びに明け暮れる。1日の殆どがロザンヌの難しい話だが、アルファと話す時は何も考えなくてもいい。


(あー庶民、最高!)


今日も大魔王ロザンヌが昼寝ですやすや眠っている間、羽を伸ばすラッセンだった。一緒にいるアルファは近くの鍛冶屋の息子だが小さい時に流行りの病で父親も母親も亡くしている。今は祖父母に育てられいる。珍しくアルファが真面目に話しかけてくる。


「なぁラッセン。俺達、もう10歳になるよな。将来は鍛冶屋を継ぐ事になると思うけどまだまだ、じぃちゃんは元気だ。鍛冶屋の勉強するのも悪くないけど…じぃちゃんにはまだまだ引退はして欲しくない。でも、俺が仕事を覚えたら引退するって言うんだ」


「なんだ、アルファはいつもふざけているけど真面目事も考えているんだな」


「流石になぁ、遊んでばかりもいかないだろう?俺達はまだ、じぃちゃんやラッセンは父さんの稼ぎがいいから恵まれているけど…いとこのロンやアランも同じ歳でも働いている。ラッセンはどうするつもりだ?」


ラッセンは空を少し見上げて考える。


「妹のヒモになって妹に養ってもらう」


アルファは死んだ魚の目でラッセンを見る。


「そりゃ、お前の妹は変わっているというかなんか庶民っぽくないというか…だからといってヒモってラッセン、お前、最低だな」


ラッセンは心の中であくまでも自分の願望だが実際はロザンヌのヒモに育てられ中なんだとは言えなかった。


「はははは…現実は難しいが…アルファはどうするつもりなんだ?」


「俺か?兵士の試験を受けようと思ってるんだ」


すると二人の間から可愛いらしい声がした。


「ご機嫌よう、アルファ様。それはいい考えだと思ます」


ひょっこり現れたのがロザンヌだった。ラッセンはロザンヌの声にギョッとした。特訓が始まってからロザンヌがトラウマになりつつあった。


「ロザンヌ!昼寝の時間じゃなかったの?」


「母上は近所の一人住まいの老夫婦のマリー殿が熱を出して様子を見に行かなくてはならなくなりました。私が一人になるので今日だけは兄上のところに行けと父上はまだ狩りから戻らないので仕方なく来ました。すぐそこまで母上に連れてきてもらいました」


ロザンヌは至極機嫌がいい。絶対に自分から進んできたに違いない。と、ラッセンは確信した。そしてまた何か企んでいると…。

何も知らないアルファは小さな子どもに話しかけるように話す。


「相変わらず、ロザンヌちゃんは礼儀正しいなぁ」


「お褒めにつかわり至極恐縮致します。それよりも先程の話ですが、アルファ様は兵士の試験を受けようとしているってお聞きしましたが…」


「俺に様は付けないで。兵士の試験に受けたいなぁて思ってるんだ。俺は学校とか行ってないからね、特に頭がいいわけじゃないし、でも体力だけは自信ある。兵士ならば3食付きの給料付き、最低限の教育や稽古も受けられる」


ラッセンは話を聞いてて、嫌な方向に流れていると五感で感じた。


「庶民でも受けれる衛兵は目指されないのですか?」


「はははは、ロザンヌちゃんは小さいのに凄い事言うな。衛兵はね学科試験と実技でも剣術が入ってくるから兵士の試験より難しいんだ。庶民でも裕福な商人の息子じゃないと受けれないよ」


(やめろ!アルファ、話の流れがロザンヌの思う壺だ)


アルファは心の中で叫んだ。声に出して言えなかったのは大魔王ロザンヌの怒りに触れたくなかった。ロザンヌの怒ったところは見た事はないが想像するだけで恐ろしかった。

ラッセンは恐る恐るロザンヌの顔を見ると普通に見れば可愛い笑顔だが、長い時を共にロザンヌ過ごしたラッセン獲物を捕らえた悪い笑いに見える。


「では、アルファ様は衛兵の試験を受ける為なら剣術や学業を学んでも良いとその機会があれば努力は惜しまないと言われますか?」


「そうだな。金を払わなくていいならな。時間はたんまりあるからな。まぁ、夢見たいな話だけど」


「そのお言葉、二言はありませんね」


「ああ、庶民にないものは金だからな。兵士に比べで衛兵の給料はずっといい。それになれるチャンスがあれば悪行以外なら何でもするよ」


ラッセンは隣にいるロザンヌを横目で見た。


(や、やめて。僕の元顔でそんな邪悪な顔をしないで…。アルファ、ごめん、俺は見守る事しか出来ないけど、もう遅いね。アルファ、君は大魔王ロザンヌの手に落ちたの)


「悪行以外、何でもするのですね…」


やっと、アルファは引き返せない所に踏み込んだ事を感じたらしい。


「ロザンヌちゃん、例えばの話だよね。すっごく可愛い顔で微笑んでいるけどなんだか怖いんだけど…」


ロザンヌは笑顔でラッセンの方を見て言った。


「兄上、仲間が出来ましたよ。丁度、兄上も衛兵の試験に向けて勉学や剣術の稽古をしていたのです。明日からは弓の特訓に入ろうとしていました。アルファ様もご一緒いかがですか?」


アルファはラッセンの肩を掴んだ。


「ラッセン!お前、衛兵を目指してたのか?ちゃんと将来の事を考えてたんじゃないか!誰に指導してもらってるいるんだ!ラッセンの親父か?」


ラッセンはロザンヌの方を気まずそうに見る。仕方なくロザンヌは口を開いた。


「アルファ様、実はですね…」


ロザンヌはアルファにロザンヌとラッセンは前世の転生者だと言う事を打ち明けた。アルファは真面目に最後まで話を黙って話を聞いていた。


「嘘みたいな話だな。ラッセン、で、どうなんだ。お前、文字も計算も全く出来ないじゃないか」


「ああ、嘘みたいな話だけどロザンヌに教えて貰ってここ半年で簡単な本や計算は出来る様になった。後、手紙とかも書けるようになった」


「半年でか!俺も兵士なる為に自分で覚えようと頑張っているが一年でやっと本が読めるようになったぐらいだ計算どころか数字を覚えるのがやっとだぞ」


アルファはラッセンに言うとロザンヌの方に目をやった。


「うーん、まぁ、ロザンヌちゃんは変わっているとは前々から思っていたけど…信じがたい話だけど…ワラを掴むと思って便乗するよ。宜しくなロザンヌちゃん」


「任して下さい。3か月後にはある程度成果は出るでしょう。お願いが一つあるのですが…」


「お願い?出来る事なら聞くけど…」


「剣なら何でもいいのですが稽古用の剣なんて余ってないですよね…」


「出来が悪くていいなら俺が練習で叩いた剣なら売り物にならないから何本かあるけどそんなんで良ければいいけど」


「十分ですよ」


(アルファも数ヶ月後には大魔王ロザンヌの手下なるのは決定だな)


ラッセンは明後日の方向を見ながら思った。




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