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新しい家族

(うぅん?どこだろうここは?)


ロザンヌは目を擦ったが周りがぼやけてよく見えない。首も体も思うように上手く動かせない。何やら目の前に人影がぼやけている。暫く目を凝らすと人影の輪郭がしっかりとして来た。どうやら成人の女性らしい。


「何度見ても可愛らしいわ。やっと私の中から出て来てくれたのね。わかるかしら?私が貴方のお母さんよ」


(私のお母さん??)


ロザンヌは今世に転生してきたのかと、理解が出来た。生まれたとは…。


(まさか…赤子からやり直しなの?しかも記憶持ちままで…)


ロザンヌは首が思うように動かないので周りが見渡せなかった。もう一人、誰か入って来たようだ。


「サラ!よくやった!無事に生まれたんだね!俺にも娘の顔見せてくれ!」


その声の持ち主がロザンヌの顔の前に現れるがやはりぼやけてよく分からない。


「俺の事を見つめて、父さんだよ。賢い子だ。もう、わかるみたいだな」


「あらゼンったら分かるわけないでしょ。生まれたばかりなのに」


「そうだな。ハッハッハハ。ラッセンもお前を見たくて部屋の外でウズウズしてたぞ」


ロザンヌは今回の転生先は王家や皇族ではない事は分かった。目がぼやけて周りがよく見えない事に苛立ちどうやらミャーミャー泣いているらしい。感情が泣くとしか表現が出来ない。自分の体でないようだ。


「まぁ、ゼンが大きな声で話すから泣いてしまったわ。泣き声すら可愛らしいわ」


「すまない、そんなに大きな声だったか?ラッセンも呼んでくるよ。お前のお兄ちゃんだ。きっと、お前を可愛がってくれるぞ」


と、ゼンと言うらしい新しい父親は部屋を出て行った。ロザンヌは母親と言う女性の腕の中にいるらしい。抱かれているのもなんだか落ち着かなかった。

直ぐに先程の父親ともう一人、小さな人物…やはりまだ目がぼやけてしっかり見えない。話の流れだと男の子だ。


「わぁ、小さいこの子が僕の妹なんだね。ねぇ、お父さん、僕が名前を付けてもいい?」


「それは………………ダメだ。諦めろ」


ロザンヌが抱いていた母親らしきサラが男の子を宥める。


「ラッセン、お父さんは初めての女の子で名前を付けるのを楽しみにしていたのよ。だからその楽しみ取らないであげて」


ロザンヌは男の子が諦めたのであろうと少し眠くなったので段々と意識が遠くなっていた。


「だったら父さんの考えたのと僕の考えた名前どっちが妹に会うか比べよう。父さんの考えた名前って何?」


ゼンは引き下がらないラッセンに諦めたのか小声で少し照れながら言う。


「ナディア…いい名前だろう?」


眠りに着きそうだったロザンヌは一気に目が覚めた。ナディア?ナディアと言った?ロザンヌの頭に浮かぶのは国王の寵妃の名はナディアだった。


「ふっ、やっぱりね…」


かなり小さい声でラッセンは呟く。恐らくロザンヌにしか聞き取れなかっただろう。ロザンヌは息を呑んだ。まだ、目が霞む状態を苦々しく思う。


「僕の考えた名前はロザンヌ、父さんが考えた名前も素敵だと思うけどロザンヌの方が合うと思うんだ」


サラとゼンは妙に納得したようだ。


「ロザンヌかぁ…悪くないな。妙にしっくりくる」


「そうね…。まるで生まれる前から決まってるような感じだわ」


「じゃぁ、ロザンヌで決まりだね。僕がお兄ちゃんだよ。これからロザンヌには()()()教えてあげないといけない事が沢山あるからね。楽しみだよ」


ロザンヌは眉を寄せた。なんだ、この違和感が残る言葉は…。ラッセンと言う兄は何者なんだ?


「宜しく、僕の妹、()()()()


ロザンヌはぼやけて見える兄の顔が不気味に笑ったような気がした。



一足先に転生していた者が一人いた。侯爵家の二男、クラウスだった。今年、12歳である。前世ではそのまま貴族学校へ行き首席で卒業した文官になって、文官での働きが認められて宰相補佐となり、王太子が国王となってからは宰相へ昇格する。今世も恐らく宰相までの道のりは、前世の記憶持ちにとっては容易い事だった。

前世でロザンヌ王妃殿下が暗殺されてからはクラウスの人生も終わったと同じだった。国政は一気にロザンヌが手をつける前の状態に戻り、皇帝の愛娘だったロザンヌを暗殺されサルバール帝国から怒りを買い、顔だけ取り柄の国王はただ狼狽えるだけで使い物にならず、クラウスはどこから手をつければいいのか分からず立ち尽くしていた。


結局、ロザンヌの暗殺したメイドは自害し黒幕は見つからなかった。


帝国に見捨てられたガーネル国は悲惨な末路を辿った。隣国に容易に攻められガーネル国は滅びた。国王は亡命し寵妃は隣国の捕虜となった。クラウスは元々、ロザンヌが暗殺された時点、全てが嫌になっていた。敵国に攻められそのまま自害した。

そう、クラウスも気付いていなかったが彼はいろんな意味でロザンヌを愛していた。尊敬、憧れ…。

死んでから神に会いもう一度、ロザンヌに会えると聞き胸が跳ね上がる気持ちであった。そして、もう、絶対に死なせないと心に誓った。


そんなクラウスはロザンヌに会った時のために更なる高みを目指しサルバール帝国へ留学をしていた。運が良ければロザンヌに会えるかもしれないと僅かな期待を膨らましていた。


「おかしい……第十二皇女が生まれないとは…」


ガーネル国の国王も6年前に誕生している。確かにここまでは前世通り事は進んでいる。しかし、ロザンヌが生まれない。

クラウスは焦ったがそもそも転生がロザンヌの子の為だと神から聞かされている。だから必ずロザンヌは転生していなければおかしい。


(もしかして、皇女としてではなく別人として生まれ変わっているのか?)


クラウスはロザンヌを必ず見つけ出し、今度は必ず護り抜くと心に誓うのであった。


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