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序順

ロザンヌは目をあけると見たことのない神殿のような所にたっていた。執務室で書類に集中して渡されたお茶に口をつけた瞬間に自分の失態に気が付いた。かなりの濃度の劇薬だった。クラウスから受け取ったと思ったがいつもと別のメイドであった。クラウスが部屋から出て行っていなかった事も気が付かず集中していた。自分の部下でもないないクラウスの事をいつの間にかロザンヌは信用しきっていた。

普段なら執務している間はクラウスは片時もロザンヌからは離れなかった恐らく彼が執務室にいたら自分は死ぬ事はなかっただろう。


(そうか、私は死んだのだな。呆気なかったな)


まぁ、暇つぶし始めた国政だ。元々、何も手をつけていない状態だったのでほんの少し手をつければそこそこまともになる。不正なのか計算ミスなのかどちらにしても巧妙な物はなかった。なので途中でやり残した悔いは全くないし夫である国王も隣で座る横顔ぐらいしか覚えていない。

自分が死んだ後の事など気にもならないのがロザンヌの本音だ。

前を見ると、可愛らしい男の子がニコニコしながらこちらを見ていた。腰まである絹のようなプラチナブロンドで肌の色が白く瞳も金色の天使のような子供だ。男の子だと思ったのが来ているものが一枚の白い布を身体に巻きつけてあるだけのチュニックのような肌の露出が多い物だったからだ。


「目覚めたかい?ロザンヌ」


「貴方は?」


「私?神だ」


自慢げにロザンヌに言う。ロザンヌは疑った目で見ると、その男の子は少しムッとした顔になる。


「その顔は疑ってるね。私はこの姿が気に入っているから成人した人間の姿は好きじゃないからね」


「その神様が私に何のようなんでしょうか?」


男の子は腕を組み顎に手を当てる。確かに見た目は子供だが大人のような貫禄はある。自称、神はため息を吐く。


「ロザンヌ…君は死ぬのが早過ぎた。責めて子供を一人は産んでくれないと困るのだよ。だからもう一度、生まれ変わって元の世界で子孫を残してきてくれないかな?」


ロザンヌは開いた口が塞がらない。暫くして我に返り神に見た。小さい子供がおねだりするようにこっちを見ている。


「神…様、話を端折りすぎて全く意味が分からないのですが?もう少し詳しく説明して欲しいのですが?」


「そうだね。また、子供を産まずに戻ってきたら困るしね。ロザンヌ、英雄アーネストを知っているよね?」


「サルバール帝国を創設した第一代目の皇帝ですよね」


「そのアーネストの魂がロザンヌの魂の中に眠っているんだ。彼はこの先世界に起こる脅威な出来事の重要な立ち位置として転生して貰わないといけない」


「ならばアーネスト殿をサッサと転生させればいいのでは?何故、私が子供を産む事に関係しているのです?」


神は可愛らしい顔でじと目でロザンヌを見る。


「アーネストの魂を呼び戻すには君の中で器…つまり身体を作り君から送り出さなければならない。通常ならただ転生するだけならそんなに面倒ではないんだ。これもアーネストの我儘でね」


「はぁ?そんな我儘が、神の前で通じるのですか?」


「彼は普通じゃない…手は焼けるが悪いやつじゃない。寧ろ私にとっては貴重な存在なんだ。アーネストはロザンヌのの魂の中に入る前にガーネットと言う女性の魂を捕まえて一緒に眠らせてしまった。全く神以上に凄いよ彼はそして執着心も半端ない」


「捕まえてとは、ではガーネットと言う女性も私から生み出さないといけないのですか?」


「いや、ガーネットは望んで君の魂で眠っていないからアーネストが器に入れば君の魂から進んで出ていく。私とアーネストとの約束で同じ時代に転生させる事になっている。そうしなければ世界の救世主としてではなく悪として世界を滅ぼすって脅迫だよ」


「随分とアーネスト殿に神は腰が低いのですね」


「まぁ、彼には色々といや彼と言うかガーネットなのかな?借りがあるんだ。当初、私も新米の神だったから…」


「はぁ…色々あったって事ですね。しかし、元の世界と言うとあの顔だけの国王の子を産まないといけないと言う事ですか?」


少し、神は顔を青ざめる何かまずい事を聞いたのだろうか?とロザンヌは心配になる。


「彼(国王)反省していたし、それが一番いいと思ったんだ。アーネストの転生先として身分を考えて手っ取り早かったんだが余りにもアーネストがガーネットに固執していたからね。ガーネットと切れない絆を作ってあげようと思ってガーネットの器をロザンヌに使って母親にすれば少しはアーネストが扱いやすくなるかな?っと、思ったんだけど…」


「あの、国王にはすでに愛する寵妃がいました。私に気持ちが向くわけありません」


「それは心配なかったんだ。まさか最初の初夜かわすとは思わなかったんだ。国王にどんな寵妃がいたとしてもガーネットだったら大丈夫だったんだ。だってあのアーネストがだよ。あの女にだらしないアーネストがだよ。あの英雄の癖に女にクズだったアーネストがだよ。ガーネットと一夜をともにした瞬間に全て愛人と手を切って生涯、アーネストの横に座ったのはガーネットだけだよ。人間ってあんなに変わるものなんだね。あの時は笑えて笑えて…そんなに好きなら今度はガーネットから生まれれば少しは扱いやすい子供に生まれ変わるかなと思ったのがいけなかった」


ロザンヌは今の話で全てを理解した。ガーネットという女性は素晴らしい身体だったのだろう。アーネストを一夜で虜にするぐらいのロザンヌは全く自覚はなかったが…あまり深くは考えたくなかった。恐らくロザンヌの体を誰にも触らせたくなかったアーネストは本能でロザンヌも国王との初夜を共にしたくない気持ちにさせたのだろう。回避の仕方が閑所から出れないぐらいの腹痛とは少しはこちらの事も考え欲しい。自分の中に眠る魂は本当に生まれてきていいのだろうかと疑問に思う。

そして、ガーネットが捉えられている表現した神の言葉だとガーネットが転生してもアーネストにしっかりと捉えられてしまう事は決定事項に思えた。ガーネットが気の毒に思えて来た。


「ですと、次の転生先はサルバール帝国の皇女ではないと言う事ですか?」


「うん、そうだよ。流石、ロザンヌ。察しがいいね。次の転生先は色々あってね…」


「色々ですか…」


「時空を戻すから最後に死んだ人から転生させたから…。その前に一人だけ絶対に前のままの器には戻りたくないって言うんだよ。器には色々と制限があってね。ロザンヌには悪いけど残った器がそこしかなかったんだ」


「巻き戻すのに一人づつ意見をわざわざ聞く必要があるのですか?そこってどこですか?」


「まさか、今回みたいに予定外の事を起こした人間だけだよ。同じ時代に4人までなら前世、記憶持ちで転生させれるだ。面白いしくみでしょう?勿論、ロザンヌはしっかりと子を産んで貰わないといけないから記憶はそのままにするよ。そこって言うのは…行けば分かるよ。悪いところじゃないから…」


ロザンヌは神が言葉を濁したと言う事はとんでもないところに違いない。


「あと三人は記憶持ちなんですね。


ふふふと神が笑う。


「では話は以上、今度は子供を産む前に死なないでね」


「あ、まって、次の転生先はどこ…」


と、ロザンヌは描こうとしたが既に男の子の姿はなく光の中にいた。


「うわぁ!‥」


悲鳴と共にロザンヌは意識がなくなった。

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