再会
クラウスとロザンヌとラッセンはサラとゼンが待っている宿に戻っていった。
ラッセンとサラはクラウスから渡されたお菓子を見て大はしゃぎをしていた。前世でもナディア妃も甘い物が好きだと聞いていたが趣向は今世でも引き継いでいるらしい。前世でももう少し話をしていればロザンヌが死んだ後、生きる為の立ち振る舞いを伝える事が出来たかもしれない…。そうならばナディア妃が転生先を男性とは選ばなかったかも知れない。サラとラッセンが楽しそうに菓子を頬張る姿を見てロザンヌは思う。
(何も出来なかった。私の前世での罪は重い)
「ロザンヌも食べようよ。マカロンとかヌガーとかなかなか食べれないお菓子があるよ」
ラッセンはロザンヌを呼ぶ。
「母上達に喜んでくれて良かったです。私は公子様のお屋敷で沢山、頂いたので母上達が召し上がって下さい」
するとゼンが心配そうにロザンヌ言う。
「しかし、ロザンヌがラッセンとはぐれて迷子になるなんて珍しい。しかも侯爵家の公子様に偶然に助けられて運が良かったからいいものを…。本当はラッセンが迷子になったんじゃないか?」
ロザンヌはサラとゼンの元に戻るのが遅くなった理由を迷子になった事にした。今後、クラウスが接触してくるならクラウスに会ったことを隠さない方がいいだろうと思った。
「父さん、酷いよ。いくら僕でも、もう10歳だし迷子なんてならないし」
ラッセンは膨れっ面で言う。
「父上、私も初めて来た王都です。勝手は分かりませんよ。父上、明日なんですが…」
「明日は皆で花祭りの露店を回ろうと…」
ロザンヌは言いにくそうにもじもじする。ラッセンはロザンヌのその姿を驚愕の顔で見る。未だかつて子供らしいロザンヌの仕草を初めて見る。サラは何を言い出すか楽しみで興味深々だ。
「昼まででいいんです!公子様とお話に行ってもいいですか?」
「な、なぁに!!ま、まさか、ここしさまと△○☆で×□×ではないよな!って、いて!」
「ゼン、4歳の子供に何を想像しているの!汚らわしい!」
後ろ姿からサラにゼンは殴られた。
「サラ、密会だぞ!侯爵家の公子と!!ゆ、ゆるさーん!幾らロザンヌが可愛いからって!」
「父上、落ち着いて下さい。ラッセンも連れて行くので二人っきりではありません。それに落ち合う場所は王立図書館ですよ」
「えっ、そうだったけ?」
ラッセンがキョロキョロする。ロザンヌはラッセンを睨みつけながら言う。
「兄上、先程話ばかりなりなのにもう、お忘れ|ですか」
「しかし、ロザンヌ…」
ゼンが渋っているとサラがゼンを言う。
「まぁ、いいじゃないですか。午前中だけと言う事だしラッセンも一緒ならいいんじゃない」
この家ではサラの言う事が絶対だ。ゼンは泣く泣く承諾する。
「ラッセン、今度は迷子になるんじゃないぞ!」
「だから、僕じゃないって!」
翌朝、ロザンヌはラッセンを叩き起こし食堂で朝食を取るとただ行こうとするところにまたもやサラに捕まり髪を丁寧にハーフアップ結われて着替えもさせられた後、解放された。
「兄上、行くぞ!時間がない!」
「えっ、本当に行くの?図書館に。ぼくは全然興味がないんだけど」
ロザンヌに睨まれるとラッセンは渋々ついて行く。図書館の前まで行くとラッセンはキョロキョロしクラウスを探す。ロザンヌはクラウスと会う約束など始めからしてなかった。
「クラウスは来ない。そうでも言わなければ図書館に行く事が出来ないでしょう?」
「えっ、そうなの?また、お菓子でもありつけると思ったのに…残念」
「興味がないなら図書館は一人で行く。兄上はお昼まで町で遊んで来て」
「そうするよ、僕には図書館は退屈過ぎるから」
嬉しそうに去っていった。ロザンヌは図書館に入りサルバール帝国の王族の家系図の本を探した。お目当ての本を見つけるとロザンヌは躊躇なく読み漁った。ロザンヌは愕然とした事実を知った。
「ない……私の名前が……十二皇女マリア…病死享年2才。どういうことなの!」
名前がないだけではなく十二皇女の存在自体なかった。ガネール国の王妃は、別に存在する事になる。サルバール帝国の別の皇女?元々、ロザンヌの行き場所の為にガネール国に皇女を嫁がせただけだ。その理由を他にサルバール帝国から皇女を嫁がせる理由は他には何一つない。
ロザンヌがナディアに転生以上、国王と恋愛に溺れることはない。他国の女性が元王太后に上手く立ち回れるのでたろうか?どの道、この国は滅びる運命だったのだろうか?
ロザンヌは背後に気配を感じた。
「君は……もしかしてロザンヌ?」
ロザンヌは、振り向くとかつて美しいだけと呼ばれていた国王の面影がある少年がたっていた。
「国王陛下……」
「やはり君は、ナディアに転生してたんだね」
「4人目の転生者は国王陛下でしたのね。何故、私がナディア妃に転生したのをお知りになったのでしょか?」
「ナディア……君の兄上と話した時にね、恐らくそうではないかと思ってたんだ」
ラッセン……後で問い詰めることロザンヌは固く誓った。
「では、私は用は済みましたのでこれで失礼致します」
「ちょっと、まってまだ話したい事があるんだ」
「私は、話す事はございません。もう戻らないと」
セルジオは、去ろうとするロザンヌの手を掴む。
「謝りたいんだ、私は間違っていた。自分の責務から逃げるべきではなかった!ロザンヌ、お願いだ今世もう一度、私に手を貸してほしい!」
ロザンヌは掴まれた手を振り払いセルジオを睨みつけた。
「今更、謝ったところで何になるというのです?国王陛下はご自分の犯した罪の重さをまだ、わかっていらっしゃらないようですね。あの時、ほんの少しだけでもこの国の事に関心を持って頂い欲しかった、そうすれば多くの民を死なせる事はなかった。お分かりですか?」
「君から何を言われてもいい。本当に後悔している。二度と同じ過ちを繰り返したくないんだ!お願いだもう一度、助けて欲しい」
「お断り致します!私は私のやり方で今の生活を護って行きますのでご安心下さい」
「それではダメなんだ、何も変わらない」
セルジオは俯いて強く自分の拳を握る、
「陛下に何を言われても私の気持ちは変わりません。失礼致します」
ロザンヌは後ろを顧みることなく立ち去った。セルジオはロザンヌの後ろ姿を見送ることしか出来なかった。
「今世は、誰も死なせない」
セルジオは呟いた。