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前世の真実

ロザンヌはラッセンを置いて行った後、街を抜けてとある侯爵家に向かった。


「さて、どうやって会おうか…」


ロザンヌが会いに来たのはクラウスであつた。もし彼が転生していたなら16歳である。まだ、学院に通っているだろう。だとしても大きな祭りで戻ってきている可能性が高いと思った。

侯爵家の前に行きロザンヌは被っていた、ツバの広い麦藁帽子を脱いだ。


「クラウスに会うのは簡単ではなさそうだな」


侯爵家の前には門番がいた。門番はロザンヌに気付く。


「お嬢ちゃん、迷子かな?」


子供好きなのか、可愛らしいロザンヌにニコニコしながら話しかけてくる。


「迷子ではないないです。バルデーニ侯爵家のクラウス公子様に伝えたい事があって来たのですが…」


ロザンヌは口に手を当てて顔を赤らめ、上目遣いに門番を見る。門番にも同じぐらいの同じぐらい子供がいるのかゼンのようにデレデレとしている。ロザンヌはこれは上手く行くかもしれないと思った。


「そうだなぁ。公子さまに会いたいのはわかるが無理かな?諦めて帰った方がいい」


「公子様はこのお屋敷の中にいるの?」


「ああ、今日は外に出て行っていないなぁ。会うのは不可能だから、帰った方がいい。迷子ならもうすぐ交代だから一緒に家を探してあげよ」


ロザンヌは俯いて目に涙を溜める。涙目で、門番に訴える。全ての仕草は隣のリリーがおねだりする時に使っている真似たものだった。


「迷子じゃないわ。公子様にも会えなくてもいいの。公子様にロザンヌが来たって伝えて。伝えてくれたら大人しく帰るわ」


「分かった、伝えるだけでいいんだな。ちゃんと伝えるから、大人しく親のところに帰りなさい」


門番は屋敷の中に入っていった。ロザンヌは賭けだった。門番がクラウスに伝えてクラウスが転生者なら中に入れてくれるであろう、門番がただロザンヌを諦めさせるだけの振りかクラウスが転生者じなければ何事も起こらないのでクラウスと会う事は今回は諦めるつもりだった。

暫く経っても誰も来ないなでそろそろ戻ろうと麦藁帽子を被り来た道の方向へ向きを変え2、3歩進むと、懐かしい声がした。


「お待ち下さい!ロザンヌ妃殿下!」


振り返るとロザンヌが出会った時は随分とくたびれた男だったがロザンヌを呼び止めたクラウスは貴公子の名にふさわしい青年だった。相変わらずのヘーゼルの瞳に明るい茶色の髪は前世と変わらない。走ってきたのか肩の息も上がっているクラウスもロザンヌの姿をみて固まる。


「ナ、ナディア妃殿下…」


ロザンヌの姿を見てクラウスは落胆した。自分を訪ねてきたのがナディアだと思ったらしい。


「久しぶりだな、クラウスと言えばわかるか?」


一瞬にしてクラウスの顔を笑顔に戻る。


「ああ、ロザンヌ妃殿下ですね。間違いない」


クラウスが近づこうとするとロザンヌは片膝を付き胸に手を当て頭を下げる。


「先程の無礼はお許し下さい。バルデーニ侯爵家クラウス公子様」


「どうぞ、お顔をお上げください。どうぞ前世のようにお話し下さい」


クラウスも膝をついてロザンヌを起こそうとする。


「いえ、いけません。私は今は身分のない者です。


「では、せめて昔のようにクラウスとお呼びください」


「なりません。公子様」


クラウスは手を差し伸べるとロザンヌはクラウスの手を取る。


「ロザンヌ様はきめた事を曲げない方でしたね。今回は私が折れましょう。さぁら屋敷へどうぞお入り下さい」


クラウスとロザンヌは屋敷の中へ向かった。


屋敷に入り応接間であろう一室に案内されロザンヌはソファに座った。向側には満遍の笑顔のクラウスが座る。


「ク、クラウス公子様これは…」


テーブルの上にケーキやらスコーン、クッキーと甘いものが所狭しと並んでいる。身の前にはミルクが置かれている。


「さぁ、町でも美味しい有名な菓子です。お召し上がりを」


(クラウスは私が甘いものが好きでない事を忘れたのであろうか…)


「お茶を頂ければ十分です」


クラウスの顔が一気に青ざめる。


「お姿がナディア妃なので嗜好もそうなのかと飛んだ勘違いでしたすぐにお取り替えを…」


ロザンヌはクスリと笑い、クラウスに言う。


「公子様、貴方が記憶持ちとして転生して本当に良かった。公子様は今は学院におられるのでしょうか?」


「いえ、帝国で留学をしています。今は休みでガーネルに一週間程の滞在して来年には卒業出来そうでまた、ガーネルに戻ってきます」


「帝国の学院を早期卒業出来るとは優秀なのですね」


「ロザンヌ様の足元にも及びません」


ロザンヌは飲んでいたお茶をテーブルに置きクラウスをまっすぐ見つめ言った。


「今日、公子様に会いに来た訳は私が死んだ後の事を詳しく知りたいのです」


「ロザンヌ様の死後ですか…。ロザンヌ様が倒れた後、直ぐにメイド探したのでが、もう既に息、耐えておりました。メイドの素性を調べたのですが身元が分かるものが何も見つからず誰も顔を知りませんでした」


「私の死因は何だったのでしょうか?」


「顔料です」


ロザンヌは眉を寄せ信じられないと言う顔をで言う。


「まさか…シアン…鉄板などの塗料に使う青の顔料ですか?」


「そうです。見つかったメイドも同じ塗料の顔料で…恐らく自害だと思います」


「私の死後は?」


クラウスは目を伏せ思い出すように語る。


「帝国からの第二皇子殿下を筆頭にロザンヌ様の死因を調べに来られました。そして、ロザンヌ様を暗殺した黒幕一同を全て帝国に差し出さない限り、帝国は後ろ盾はしないと言われました。勿論、手掛かりがない以上、捕まえる事は出来ません。3年は隣国であるシャガルダ国からの威圧から逃れました。その間に国王は亡命、敵国へ城を明け渡す事とナディア妃殿下を敵国の捕虜に差し出す事で元王太后は実家であるベラルド国へ亡命を果たしました。私は敵国に攻められた時に自害しました。なのでここまでしか知りません」


「充分です。国王はベラルド国へ亡命したのですか?」


「恐らくは…」


「違うのですか?」


ロザンヌは真っ直ぐにクラウスを見つめる。


「突然、忽然と消えたのです。まだ、シャガルダ国は圧をかけていたと言っても国王が亡命する程は追い詰められていなかった筈なのですが…元王太后の証言で国王は亡命したと…」


ロザンヌは目を閉じて考え込み、そしてクラウスの方を見て言った。


「ありがとうございます。公子様のお話で私が何故、暗殺されてガーネル国が滅ばなければいけないか分かりました」


「是非、私に教えて下さい!」


クラウスは目を輝かせてロザンヌを見つめる。 


「公子様、今の話で分かった事をお教えする代わりに私に協力する事をお約束下さい」


クラウスはロザンヌをキョトンとした顔で見つめる。 


「そんな事をしなくても私はいつでもどこでも貴方の命に従いますよ。なんなら前世のように顎で使って頂きたいです!」


「ダメです。私は今はただの庶民です。これは対価だと思ってください」


ロザンヌは首を振って拒絶する。 


「例え対価でも話は是非に聞きたいので、喜んで協力致しましょう」


ロザンヌはフッと笑みを溢し話し出す。


「既にお分かりだと思いますが、メイドはベラルド国の刺客でしょう。見つかるのを恐れて自害したか口封じ元王太后ならば容易にメイドとして送り込ませる事が出来たでしょう。ベラルド国とシャガルダ国は内通していたが帝国の目が光っていて皇女を暗殺をすれば帝国に見放されガーネル国は孤立すると思ったのです」


「では、ベラルド国とシャガルダ国の思惑通りに事は動いたのですか」


ロザンヌは嬉しいそうにふふふと笑う。


「そう見えてそうではなかったってところでしょうか?第二皇子殿下に黒幕を差し出せと言われたのですよね。メイドが刺客だと直ぐに分かったという事です。第二皇子の黒幕は元王太后のべラルド国の事、帝国の配下からただ外れれば良かった。ガーネル国がシャガルダ国に有利な条約の同盟国になる予定だった。帝国は配下から外さず条件付きで後ろ盾をしないと言っただけ。その時にもしガーネルの国王がベラルド国とシャガルダ国そして元王太后の仕業だと知っていたら…いや、忽然と消えてなら知っていたもしくは疑っていたのでしょう。国王が元王太后を差し出す可能性があった。恐らくそれを恐れて国王を軟禁したのでしょう。そして同盟の代わりに侵略の道を選んだ…」


クラウスは膝の上で拳を握り下唇を噛む。


「国王も元王太后と共謀していた可能性はないでしょう」


「それは、無いと思います。もし共謀していたらそのタイミング亡命する必要はなかった筈ですし亡命しなくても内通していた国が侵略する事はないので国王としてガーネル国で存続する事は可能です。わざわざ亡命する必要がない。帝国もガーネル国を滅ぼしたならシャガルダ国を攻める理由が出来たと言うことになる。第二皇子殿下はそれが狙いだったと思います」


「では、その後は…」


「シャガルダ国は帝国の手に落ちたのでしょう」


「なんとも…では初めから皇子殿下は初めから何もかも知っていて…」


「話は以上です。お願い事何ですが…」 


「何なりと言ってください。侯爵家の誇りをかけて叶えさせた頂きます」


クラウスは満遍の笑顔で言う。ロザンヌは少し遠慮がちに言う。


「では、2年後に衛兵を二人、王宮へ送ろうと思って今、私が育てています。基礎的な事は一通りは後半年も有れば終えるでしょう。衛兵に入る前に騎士ぐらいに育てたいのです」


クラウスは驚くそして何か納得する。


「衛兵から騎士そして…騎士の幹部までにですか…」


「素材は国王の近衛騎士にはいい存在です。しかし、庶民が故に相当な実力は要ります」


クラウスはロザンヌに微笑む。


「分かりました。侯爵家の騎士団に先ずは入団して貰いましょう。簡単すぎるお願いです…では、ロザンヌ様は今世は寵妃として…」


「寵妃などならない!」


ロザンヌは強く言った。




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