はじまり2
ブラックIT企業に勤めるオレは、会社が国の出勤自粛要請にも従わないので、毎日元気に出勤中だ。
仕事は職業PG――いわゆるIT土方をしている。
一応、向かいのデスクと隣のデスクの境目にはコンビニエンスのレジ等にあるようなビニールで仕切られてはいる。
そんなオレが憂鬱かというとそうでもない。それは何故か。
職場の大好きな佐藤パイセンと毎日会えるからだ。
佐藤晶パイセン。
システム製造部第3課のリーダーSE女子。
女だてら、課の中では課長の次に偉い。
オレはここ数年は佐藤パイセン推しだ。
特に形の良いお尻が好みである。
佐藤パイセン……vvv
このご時世、悪いことももちろんある。
オレの大好きな佐藤パイセンのカワイイお顔がマスクに隠れちゃっているのだ。
これは許しがたい。
宇宙の大きな損失である。
しかし、お尻は隠しようがないのでOKだ。
マスクして良いことはほぼない。
何度も使いまわししているマスクが毛羽立って、オレの鼻の穴をくすぐるのだ。
オレは肌が弱いのに……。
ちくせう。
マスクをしている間はずっとムズムズが止まらない。
そんなストレスMAXな中、唯一の良いこと。
それは、口元が隠れて見えないのをいいことに、佐藤パイセンとの会話の語尾に「(大好き)」と口パクで付け加えれることだ。
これがとても良いストレス発散になるのだ!
世間はパンデミックだ、食料危機だ、経済危機だ、――と騒いでいるが、オレの頭の中だけは佐藤パイセンオンリーのお花畑状態でいられるのだ。
ちなみに、佐藤パイセンの席はオレの席の真向かいである。
なぜなら佐藤パイセンはオレの指導社員であるからだ。
だから、オレはブラインドタッチでキーボードを叩きながら視線を佐藤パイセンのキーボード上を踊る細い指達に固定したまま、
「(大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き――)」
と連続口パクも可能だ。
しかし、仕事の手も進めないと佐藤パイセンの厳しい指導の出番である。
いや、それもまた良きかな。(じゅるり)
佐藤パイセンのお時間を余計に頂くのは申し訳ないので、優秀(自称)なオレは仕事と口パクを効率よく同時進行ですすめていく。
「吉田君。この操作マニュアル、エクセルで作ってくれる?」
「はい、了解です(大好き)。やっておきます(大好き)」
「吉田君。ここデバッグ任せて良い?」
「はい、任せて良いです(大好き大好き)」
こんな感じで仕事をしていると、ちーっとも仕事が苦にならない事を発見した。
オレ的ににこれは世紀の大発見だ。
よーし、オレ今日の分の仕事をさっさと終わらせちゃって、仕事している振りしながらの佐藤パイセンの指さばき(エロ)をウォッチングしちゃうぞー。