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新城さん

 アタシは毎日こんなに「告白」しても、ちっとも振り向いてくれない佐藤センパイにほとほと呆れてしまった。

 なーんちゃって。

 佐藤センパイには伝わっていないのだから当たり前である。


 そんなある日の事、事件が起こった。

 アタシはいつも早くに出社する。

 なぜなら、佐藤センパイも早い出社だからだ。

 佐藤センパイが上に熱心に掛け合った結果、もうすぐリモートワークが他の課に先んじてウチの課に導入される。

 今のうちに佐藤センパイ分(?)を吸収しておかないとっ。


 そして事件。

 アタシより早く出社していた佐藤センパイの横にもうひとりいたのだが、ソイツが社内イチ男からの人気が高い(アタシ調べ)の総務の新城あらしろさんだったのだ。

 ソーシャルディスタンス(社会的距離)っ!


 アタシが健康的スレンダー美人(自分で言うw)だとすると新城さんは見た目的には温室育ち的秘書系美人。

 色白細身の白百合のような、触れたら折れそうな腰つきなのに巨乳な美人さんだ。

 しかし、性格はパリピ系。

 もしや、新城さんも佐藤センパイの鼻のカッコ良さに気が付いてしまったのだろうか。


 アタシは少々色黒(地黒)な健康的美人だが性格的には完全な陰キャ、趣味は休日のゲーム(1人)と部屋呑み(1人)とラーメン屋巡り(お1人様)くらいなものだ。

 新城さんはというとアタシの様な陰キャではなく、受付嬢もこなし大学時代は準ミス、趣味は密かにクラブ巡りと高学歴イケメン漁りと噂の陽キャだ。

 新城さん、アナタにとって佐藤センパイってきっとクソつまらない根暗な男ですよ!


 アタシがオフィス入りする前まで、随分話が盛り上がっていたのだろう。

 アタシが挨拶した途端にそさくさと二人は体の距離を離したが楽しげな雰囲気が残り香の様に残っていた。

 ていうか新城さん、目が狩人モードだった。

 それに、新城さん無駄が嫌いなヒトだから、二人っきりで談笑していたって事はほぼ確定だよね……。


 アタシは別に佐藤センパイと付き合いたいとかそんな恐れ多い事は考えていなかったつもりだが、この新城さん密会(?)事件には参ってしまった。

 新城さんがその気になれば佐藤センパイなんかチョロイン(男だけど)に違いない。


 このご時世になって分かる男の良さってあるよね。

 パリピ男はパンデミックでは真っ先に死んでいきそうだもんね。

 佐藤センパイはなんだかんだで頼りになるし、しっかり生き残っていきそう。

 ただし、優しいのがほんとに利用されそうで、そこだけはたまきずですね。



 この日の午前、アタシは仕事の調子が悪く、いつもならミスしないような凡ミスを2つもしてしまった。

 お昼の大好きな社食も喉を通りそうもなく、ごはんを小盛りにしてもらって食堂のおばちゃんを心配させてしまった。


 今のうちに佐藤センパイが他人ひとのモノになっても大丈夫な様に耐性を付けよう。

 そう思ったアタシは佐藤センパイと会話するときの語尾を「(大嫌い)」にする事にした。


「吉田さん。このエクセルのグラフ作ってくれる?」

「り。やっておきます。(大嫌い)」

 ※り……了解の意


「吉田さん。このメール、返しておいてくれない?」

「り。(大嫌い大嫌い)」


 そして爆速でタイピングしながら向かいの席に向かって、


「(大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い大嫌い)」


 と言うようにした。

 すると仕事の調子がいつものように戻ってきた。


「(佐藤センパイ大嫌い~♪)」


 よーし、佐藤センパイの事忘れられそう(涙)。




 語尾に(大嫌い)をつけるようになってしばらく経ったある日、佐藤センパイの様子がおかしい事に気づいた。

 どことなく覇気がないというか、吐き気がありそうに見える(?)というか。


「佐藤センパイ、どうかしましたか?(大嫌い)」

「よ、吉田……あ、いや、なんでもない」


「佐藤センパイ、何か困っている事があるのでしたら何でも相談してください?(大嫌い)」


「そ、そうか……。ううん」


 アタシはというと悩ましげな佐藤センパイのお鼻を見ていると、またカワイイと思ってしまった。

 いけないいけない、諦めなくては。

 このヒトはもう他人のモノなのだ。

 でも、最後に佐藤センパイとお話しておくのもいいかも。





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