表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/15

時間逆行 Re:デジャブ

 今日も、アタシは画面上の佐藤センパイの美しいお鼻を見ながら、粛々と爆速でキーボードを叩いていた。

 時々、『あの時なぜ佐藤センパイに本当の告白をしなかったのだろうか』と考えてしまう。

 そんな事を考えないように、アタシは仕事に、キーボードに打ち込んだ。


 もうすぐ、国の出勤自粛要請期間が終了するという噂だ。

 アタシはきっと何事も無かったかのように、自分の席に座ってキーを叩くのだろう。


 画面の向こうの佐藤センパイに、もう告白する事はできない。

 佐藤センパイは総務課の新城さんと付き合う事になったのだ。

 あれほど怖がっていたはずなのにと理由を聞いてみると「ちゃんと話してみたら、意外にちゃんとしていた」だそうだ。

 佐藤センパイはやっぱりチョロインだった!





 気が付くと、つー、と涙が頬をつたっていた。



 アタシは佐藤センパイに本当の告白をしなかった事にこの時、心底、後悔した。



 でもどうしようもないのだ。





 あたしは、おもむろにテレワーク中のPCの電源を落とした。

 暗いモニターに暗い目をしたアタシが写っている。





「会社やめよっかな」








 暗いモニターの中の暗い目をしたアタシを長いこと見つめていた――。

 あれから、何度かサイレントにしているスマホがまたたいたが、しばらくすると静かになった。




 不意に、モニターの中のアタシがブレる感覚があった。

 この感覚は――。


『アレっ? 今までの、この瞬間までが……既視感デジャブ?』



 そんな長い既視感デジャブがあるのだろうか。

 アタシのアパートの自室が2重3重に歪み、かすれる中、アタシは突然、()()『会議室4』にいた。





「――、急に『大嫌い』って言われる様になってっ。何度も何度も笑顔でっ……俺、なんか嫌われる様な事しちゃったのか!? 理由を教えてくれっ、謝るから! 悪かった!! この通りっ!!!」


 目の前の必死になっている佐藤センパイを見つめながら、この時アタシは、『アレっ? この風景前にも見たことあるような……?』という既視感デジャブのような感覚を覚えていた。


 ――いいえ、これは『既視感デジャブ』ではないと分かっている。これは『時間逆行』――もう2度と訪れない蜘蛛クモの糸!


 そして並行世界の無数のアタシ達が、男のアタシ達も、諦めようとしているアタシを口パクで応援していた。『ふざけんなオレっ! オレ諦めんな!』という心の声が聞こえた気がした。アタシも土壇場で読唇術を身に付けちゃったのかな?




 ――そして、この後アタシがやるべき事は分かっている。並行世界のアタシ達と声を合わせるように、アタシは言葉をしぼり出した。





「「「「「「佐藤センパイ。アタシ本当は――」」」」」」







 アタシが並行世界のアタシ達と声を合わせ、佐藤センパイに本当の告白をした瞬間、何重にぶれていた世界が1つに戻った。


 アタシはあの時の『会議室4』に戻ってきていた。







「佐藤センパイ。アタシ本当は、――佐藤センパイの事が本当に大好きなんです」







 アタシの頬を、次々に、涙がつたっていく。







 ~第一部 時間逆行 Re:既視感デジャブ 完~








最後までお読みくださりありがとうございます。

もしよければご指摘、ご感想など頂けますと成長に繋がりますw





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ