表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/15

会議室3

「佐藤パイセン、そういえば、オレも相談したい事ありました。ここだと話しづらいんで、『会議室3』に行きませんか?(大嫌い)」


 ちなみに会議室3はこの会社で2番目に小さい8人用の会議室だ。

 佐藤パイセンは少し戸惑ったように、


「会議室はみつだから避けないと――」


 とらしくない弱気な事を言うので、オレが、


「窓を開けましょう。外気を取り込めば大丈夫ですよ(大嫌い)」


 といつもと逆の立場になって説得する。


「分かった。移動しよう……」


 会議室3に入り、オレは窓を大きく開き、そのまま窓側の1番奥の席に座った。

 2Mメートル離れないと……。

 佐藤パイセンはどこかオドオドしながら対角線の1番入り口側に腰かける。


 ああ。やっぱり佐藤パイセンはカワイイなぁ。

 オレがそうやって佐藤パイセンの事を眺めていると。



 ああ来た。あの既視感デジャブが来た。


 無数の佐藤パイセンが不安そうに対角線に腰かけてる。どの佐藤パイセンもカワイイなあ。ロングもショートもええなあ。男の佐藤パイセンも発見。男の佐藤パイセンも愛おしいなあ。あ、あっちは会議室4じゃね? ああ。このシーン知ってるしってる。この後、佐藤パイセンから切り出すんだよね。


 ――既視感デジャブ治まった。



 佐藤パイセンの方から切り出した。


「どっちの用件から話す?」


 ――ほら。


「では、オレの方からで良いですか(大嫌い)」

「どうぞ……」


 オレは最近考えていたことを話し始める。


「前から進めていたリモートワークの案が上に通ったと聞きました。おめでとうございます(大嫌い)」

「! ありがとう……」


「それで、前にオレが佐藤パイセンにアイデアを出した、常にテレビ電話を繋げておく件は必須ではないと聞きました(大嫌い)」

「そうね。チーム毎にリーダーが決める事になってる。でも、この案は上の人には誉められたよ。ちゃんと吉田君が出した案というのも伝えたよ」

「うちの課ではどうしますか?(大嫌い)」

「勿論、うちでは取り入れる予定」


 オレは呼吸を落ち着けて、ゆっくり口を開いた。


「オレだけ、テレビ電話のグループから外して頂くことはできませんか? 考えたんですけど、やっぱり都合が悪くって(大嫌い)」

「……どういう理由で?」

「いや、ちょっと個人的な理由で……(大嫌い……だから……)」

「! そうか……」


 お、我ながら意味不明な言い訳かと思ったが、佐藤パイセンは思いの外、理由として受け取ってくれたようだ。


「こんな理由でいいんです?(大嫌い)」

「……いや、まずいけど理解した。何かわたしの方で説明考えておく」

「それは……ありがとうございます(大嫌い)」


 佐藤パイセンは何かひとりで納得している。



「それで、佐藤パイセンの方は何に困っているのでしょう?(大嫌い)」


 最後にオレが佐藤パイセンの悩みを解決してみようではないか。

 オレに出来ることなら。

 今までお世話になった恩返しで。


 佐藤パイセンは躊躇いながら、漸く悩みを口にした。


「さ、最近、急にある人の態度が変わったんだ」


 オレは口パクで「(大嫌い)」と言いながら無言で次を促す。


「最初はその人はわたしに好意が有るのかと思った」

「その人……というのは男性なんですか?(大嫌い)」


「うん。でも、本当に急に態度が変わったんだ」

「続けてください(大嫌い)」


「わたし、実は読唇術が出来て……」

「はい(大嫌い)」


「昔の映画を見て憧れて……」

「それは凄いですね(大嫌い)」


「何を言っているかマスクしている位だったらわかるんだ」

「そうなんですね(……)」


 えっ、……えええっ!?

 え、そんな人、リアルで存在する訳無いよね!?!?


「その人はずっとわたしとしゃべる時とか、会話の途中で『大好き』って声を出さずに言ってくれていたんだ」


 これ、オレの事言ってる……!?


「ずっとわたしの事からかってるんだろうかと思っていたけど……」


 思っていたけど……?


「3日前くらいから言ってくれる言葉が『大嫌い』に変わって。それで、何か悲しげに見えて」


 いやいや、結構楽しみながら「大嫌い」言ってましたよ。


「コレ、吉田君の事何だけど、――心当たりある?」


 ありますけどっ!


 いやいやいや、あり得ないって。

 偶々好意を寄せた相手がそんなレア能力スキル持ちってある!?

 ここは悪いけど試させてもらいます。


「(佐藤パイセン大嫌い)」

「佐藤パイセン大嫌い」


 !?!?!?


「(マジに分かるんですか?)」

「分かるんです」


 ◯ーーーーーッデム!!!!!!!!!!!!!!!





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ