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はじまり

 ブラックIT企業に勤めるアタシは、会社が国の出勤自粛要請にも従わないので、毎日元気に出勤中だ。

 仕事は職業PG(プログラマー)――いわゆるIT土方(どかた)をしている。

 一応、向かいのデスクと隣のデスクの境目にはコンビニエンスのレジ等にあるようなビニールで仕切られてはいる。


 そんなアタシが憂鬱かというとそうでもない。それは何故か。

 職場の大好きな佐藤センパイと毎日会えるからだ。

 佐藤さとうあきらセンパイ。

 システム製造部第3課のリーダーSE(システムエンジニア)(※)だ。

 課の中では課長の次にエライ男だ。


 ※……一般的にPGよりSEが上です。


 アタシはここ数年は佐藤センパイ推しだ。

 特に形の良いお鼻が好みである。

 佐藤センパイ……vvv


 このご時世、悪いことももちろんある。

 アタシの大好きな佐藤センパイの形の良いお鼻がマスクに隠れちゃっているのだ。

 これは許しがたい。

 宇宙の大きな損失である。


 そして良いこともある。

 マスクでアタシの低めのお鼻が隠されるのだ。

 アタシは自分の顔のパーツの中で唯一気に入らないのが鼻の低さなのだ。

 母親は鼻高な美人だったのだが、唯一鼻の高さだけは遺伝しなかった。

 ちくせう。

 マスクをしている間のアタシはきっと完璧美人に違いない。


 そしてもう1つの良いこと。

 それが、口元が隠れて見えないのをいいことに、佐藤センパイとの会話の語尾に「(大好き)」と口パクで付け加えれることだ。


 これがとても良いストレス発散になるのだ!

 世間はパンデミックだ、食料危機だ、経済危機だ、――と騒いでいるが、アタシの頭の中だけは佐藤センパイオンリーのお花畑状態でいられるのだ。


 ちなみに、佐藤センパイの席はアタシの席の真向かいである。

 なぜなら佐藤センパイはアタシの指導社員であるからだ。

 だから、アタシはブラインドタッチでキーボードを叩きながら視線を佐藤センパイに固定したまま、


「(大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き大好き――)」


 と連続口パクも可能だ。

 しかし、仕事の手も進めないと佐藤センパイの厳しい指導の出番である。

 いや、それもまた良きかな。(じゅるり)

 佐藤センパイのお時間を余計に頂くのは申し訳ないので、優秀(自称)なアタシは仕事と口パクを効率よく同時進行ですすめていく。


「よ、吉田さん。この操作マニュアル、パワポで作ってくれる?」

「はい、了解です(大好き)。やっておきます(大好き)」


「よ、吉田さん。ここデバッグ任せて良い?」

「はい、任せて良いです(大好き大好き)」


 こんな感じで仕事をしていると、ちーっとも仕事が苦にならない事を発見した。

 アタシ的ににこれは世紀の大発見だ。


 よーし、アタシ今日の分の仕事をさっさと終わらせちゃって、仕事している振りしながらの佐藤センパイウォッチングしちゃうぞー。





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― 新着の感想 ―
[良い点] 改めて読み返してみるとやはり愛が重い^^; しかしこれはアレですね。こんなことしてたら絶対どこかで声に出して言ってしまいます。
[良い点]  なるほど、この女主人公は佐藤先輩の事で頭の中がパンデミックな訳ですね。 [一言] 一秒間、口ぱく十六連射。(←?)
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