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厭悪という感情が自分の核だった。少なくとも、私はそう把握していた。この金烏玉兎に楽しいこともあるけれど、そんな幸福感も一瞬で攫ってしまう不条理やら不公平やらを呪っていないと立っていられなかった。癖になっていた。愚かな人や道理にそぐわぬものを一つずつ正していけば、いつか世界が良くなるのでは、とまでは行かなくても。少なくとも自分の周りくらいは生き易くなると思っていた。世界に、あるいは妥協して自分の世界に対して潔癖症だった。躍起だった。汚点が一つでもあると消したくなって仕様がなかった。一瞬も視界に入れたくない。そんな日々が続くと三ヶ月に一度くらいの頻度で、我慢の限界が来た。地面が反時計回りに少しだけ旋回し、隠れていた網がお披露目になる。私の中に溜まった澱にライターで火をつけると、爆発して地震を起こす。小人物は網の目から落ちて行く。私なりの篩だ。篩から落ちた人に関する森羅万象を私の中と周囲から全部消す。全部全部消す。これで綺麗。一週間くらいは気持ちが良い。空気が美味い。雲の形や星の煌めきなんかに時間を割けるようになる。
しかし、これが不思議で堪らないのだが、どうしてか私の周りには人が集まってくる。誰に媚びているつもりもないのだが、どうしてか人間どもが寄ってくる。虫みたい。煩わしい。死んだ魚のような三白眼をしている私に一体何を見出して寄ってくるのだ。死ね。嫌いな言葉は曲学阿世。好きな言葉は……何だろう。




