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タイトル未定  作者: 懲役
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第1章 弐

第4項 ガブリエレの威光


ガブリエレ・モルデンツは世に大いに名を轟かせた。彼は、東方の老人から賜ったという魔術ステッキを高く掲げながら詠唱魔法を行った。もちろん彼の残したものは,次のマスター,その次のマスターへと受け継がれる。

マスターの間で,ガブリエレはモルデンツ家,そして偉大なる正当詠唱魔術の祖として奉られていた。

K・G州の外れにある彼の墓地には,死後花が絶えることはなかったという。

また,後世のマスターは公務中マントを着用していたが,その背面には「偉大なるガブリエレ 愛すべき我が祖」の文が刺繍されていた。ここからもいかにガブリエレが強烈な存在だったかうかがえる。


第5項 マスターの腐敗と兄弟分裂


時代が進むと,マスターはその威光を世に知らしめんとするため,諸外国に伝道師を派遣し,献金を勧めた。

そのころにはガブリエレ公の存在は薄れ,マスターの周辺では賄賂が横行した。

当時モルデンツ家の家臣であった,イサク・クァイオーツという人物の日記によると,「正当魔法の危機は既に訪れているのかもしれない。マスターは御乱心され,周囲の人間もそれを加速させることばかりする。私は家を離れようか迷っている。…」と述べている。

しかし,そんな暗黒の時代を打ち破る人間が後に現れた。

今からおよそ400年程前,モルデンツ家に双子が生まれている。

兄の名はセレン,弟の名はクロンとされた。

先に元服した兄セレンは,魔法改革を打ち出し,賄賂を厳罰化,さらに自ら魔術書を執筆して歴史を定め,庶民向けにも教本を作成するなど,正当魔法の刷新に尽力した。

一方弟クロンはそんな兄に対する劣等感が強く,度々魔術を使った問題行動を起こした。兄が対外的に動くのに対し,彼は自らの魔術力を極限まで高める方向に進んでいった。

二人が十分大人になった頃,いよいよ次のマスターについての話が上がった。勿論セレンが推薦され,マスターになる運びとなったのだが,マスター就任直前,彼は妻と一人息子を残して突然死してしまったのだ。

弟クロンのほうも,「マスター制度を廃止せよ」と突如命令し,「モルデンツはマスターの為にあるのではなく,モルデンツ家の為にある」と言い残して,一部の家臣と共に都を去ったのである。

セレンの妻とその一人息子の消息については参照できるものが少なく,諸君は情報集めに大変苦戦するだろう。恐らく文献が焚かれた可能性が高い。


第6項 クロン一族の魔法ビジネス


その後弟クロンは,商業の街に拠点を移して庶民向けに魔術を使ったお助けサービスやエンターテイメント業を行い始めた。

これが大成功し,クロン・モルデンツ一族―即ち第2のモルデンツ家は大いに潤った。クロンはその勢いに任せて,自らの通用名を「メール・アマンヌ(魔術王という意味の古代シュメルク語)」とし,その力を世界中に轟かせていくのである。

なお,クロンの子孫たちは本名こそ違えど,皆「メール・アマンヌ」の名を世襲している。現在は七代目,そして将来の八代目がいらっしゃるようだ。

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