『モルデンツ家の呪い』
―『モルデンツ家の呪い』
≪はじめに≫
この本を読む諸君のなかには、正当魔法の道を志す者もあまた居るだろう。
正当魔法学は新しい学問で、謎も多い。諸君が正当魔法を花開かせる先駆けとなり、正当魔法を再び世に知らしめることに期待している。
また、単純にオカルト好きの諸君も居るだろう。中世モルデンツ家の分裂、離散に関することには謎が多く、陰謀論なども囁かれている。現在の一般的な説は、円満に「権力分散のための家分割、経済力低下による離散」と謳っているが、私はこの学説に反対せざるを得ない。それがなぜなのかは、これ以降の内容でおのずと明らかになるから安心してほしい。
さて、先述した通り本書は、正当魔法学の歴史を学ぶ者がその教育の中で指南書・教科書として使用することを想定している。
一般向けには難解な用語などがあるため、もちろん解説を設けている。
また、著者である私も正当魔術書の発見を受けて大急ぎで執筆したため、至らない点も多いと思うがご了承いただきたい。
また、この本は以下の文献などを参考にしている。
・『正当魔術書』(国立博物館蔵)
・『旧王室魔術指南目録』(国立博物館蔵)
・「離島に残されし詠唱文言―メルメ語に見るモルデンツ魔法流入」(Eden E Morton,2016-2)
・『クァイオーツ家文書』(個人蔵)
・『超能力の一族―東方から西端まで:Alexandria Klein 著』
拙書のみならず、これらにも目を通すとさらに深い学びが得られるだろう。
多忙にもかかわらず協力してくださった、国立博物館の方々や、ハルプール大学大学院の言語学者であるモートン氏、帝央書房編集長のクライン氏、親愛なるジョン・クァイオーツ氏に最大の感謝を捧げる。
そして、
唯一絶対の、モルデンツ正当魔法の祖に最大の畏敬を表し、この本を捧げる。
―――
ビルは夢中になって読み進めた。