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緋い三日月  作者: 白野穴熊
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プロローグ 『あの日の記憶』

 どれくらい眠っていたのだろうか。まだ、寝ぼけた状態の私は事態をすぐには飲み込めていなかった。

「あなたは…?」

 椅子で寝ていたので体のあちこちが固まっていた。それをほぐそうと体を伸ばした時、私はようやく異変に気がついたのであった。

「熱っ!」


 ―そう、私のいた◯△美術館の喫茶スペースは、真っ赤な炎で包まれていたのである。


「お嬢さん、やっと事態が飲み込めたんなら、さっさと出るぞ。」

 喫茶スペースでカバンに埋もれるように眠っていた私を見つけた男性はそう言うと、私を抱きかかえようとした。


 しかし、おかしい。さっきから一緒にいたはずのチナツの姿が見えないのである。


「おじさん、ここにもう1人女の子がいたはずなんだけど…」

 そうやって、彼女のことを聞こうとした瞬間、景色がグニャグニャと揺れて崩れていった。



 ―――――――――――――――――――――――

「―――――さん、お客さん!起きてください!」


 どうやら、私は疲れ切って、夢の中でまで眠っていたようだ。二度目は車掌さんに起こされてしまった。片耳に残ったイヤホンからは、ラジオが流れていた。


『今週末は3年ぶりに皆既月食が見られます。しかも、7年ぶりにスーパームーンの日に起きる予定となってます』


 今の夢はそのラジオを聞いていたからだろう。この夢は、たしかに夢ではあるが、私が7年前のスーパーブラッドムーンの晩に経験した記憶がほとんどである。


 煙を吸ってしまっていたようで、細かいことは思い出せない。

 しかし、1つだけ覚えているのは、あの晩空に浮かんでいたのは、暗い赤に染まった逆さまの三日月だったということだ。

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