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森の探索

「うーんこれからどうしよう...」


 なんの前準備もなく突然異世界に来てしまった.

 俺の読んでた異世界小説や漫画のお約束展開では、異世界に行く前に神的な何かに出会い,特別な力を授けられるのである.

 そして異世界でバンバン活躍し,英雄としてあがめられ,ハーレム形成をして男の夢のような生活を送るのである.


 しかし,俺にはそんな女神や上位者的な何かが現れる予兆は微塵も無かった.

 これはもう神様チートは諦めるしかないなぁ.


 だが,他にも異世界に来た時のお約束展開はあった.


「あっ、そうだ!異世界に行った時って大体"ステータス画面"があったはず!」


 そうそう,思い出した!

 異世界お約束その2、それがステータス画面だ.

 自分の持つスキルや能力、アイテムを謎の画面でパラメーターとして表示してくれる便利な能力である.

 主人公はこのステータス画面を見ることで,己の持つ固有スキルや特殊能力を確認して職業を決め,異世界生活を優位に進めることができるのだ.

 流石にステータス画面くらいはあるだろう.

 俺の固有スキルか...なんだろうなー.

 実に楽しみだ.

 よし!早速試してみるか!


「ステータス画面ON!」


 ・・・シーン・・・


「あれっ、言い方が悪かったのかな?

 ステータスオープン!

 開けステータス!

 ステータスよ!開けッ!

 ステイタスッオウプン゛ン゛ン゛!」


 ・・・シーン・・・


 その後,俺は30分間バリエーションを変えながらひたすら叫び続けた

 だが,何の反応も起こらない

 ただ,俺の恥ずかしい叫び声が無駄に森へと虚しく広がっただけであった.


「ど゛う゛し゛て゛な゛ん゛だ゛よ゛お゛お゛ぉ゛お゛!゛!゛!゛ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛!゛!゛!゛!゛」


 俺は藤原〇也風に嘆けき叫んだ.




 ____________________________________________________________






 うん,なんか途中でうすうす感づいてきたけど,ステータス画面そのものがないな,これ

 うーん,ステータス画面が開けないとなると,自分のステータスやスキルが確認できない.

 そうなると,今現在魔法を使える希望も薄れるな.

「まあ,一応試してみるか...」





 ~2時間後~






 はぁ,はぁ,まったく...全く何も起こらない.とりあえず逆立ちしてみたり,魔法陣っぽい何かを書いてみたり,呪文っぽい言葉をブツブツと唱えてみたりしたがまっっっったく何も起こらなかった.

 ふざけんな!!異世界要素ゼロじゃないか!!

 完全に2時間無駄にしただけであった.


 これは最早この世界には魔法やスキルという概念すらないのか.

 それとも,俺に才能がないのか.

 はたまた方法が違うのか...

 まぁ,そもそも教わってないのに出来るわけもないか.

 淡い妄想を抱いた俺が間違っていたのだろう


 ・・・なんか,異世界に来たのに全然ファンタジー感がないな.

 もしかしたら俺は異世界ではなく日本のジャングル,グンマーに飛ばされたのかもしれない.

 とまあ冗談はさておき,森の中では明らかに現実世界では見たことのない獣の影が見えたり,元の世界では見たことないような植物が生い茂っているから,異世界なのは確実なのだろうが.


 この状況は大変困った.

 俺が良く読む小説での異世界って,大抵外からの人間に生活しやすい様に設計されてるのに,これだと無人島に漂流したのとなんら変わらないぞ.

 マジでハードモードすぎるだろ...

 あーあ,今頃田中はなにしてるのかなぁ

(クロスフォードの苗字は田中である)


 それに,一つ疑問に思うのが,クロスフォードはあの古びた奇怪な本を「転生の書」と言っていた.

 だがしかし,実際俺はそのままの肉体で異世界に「転移」してきた.

 普通,転生って生まれ変わるものじゃないのか?

 なぜだろうか....


 ・・・・・・・・・


 まぁ,今ここでウジウジ考えていても仕方がない.

 こんな森の奥地でウダウダしてたら野垂れ死んでしまう.

 よし!一旦異世界という事は忘れよう!

 とりあえず生き延びなければならないな.

 これからは無人島に一人取り残されたと考えて行動しよう.

 自給自足サバイバル生活の始まりだ!!


 まずは一旦,生活拠点を作らないとな.

 このままだと確実にモンスターの餌になってしまう

 雨風が凌げる場所を探してみるか...


 こうして俺は,異界のジャングルを探索し始めた.

 森の中は,木々が生い茂り光があまり差し込んでこないせいか薄暗く,そして湿度が異常に高かった.

「薄ら寒いなぁ...」

 時折遠くから聞こえる悲鳴のような鳴き声が不穏な空気を醸し出している.

 何より不気味なのは,一定距離ごとに長さが1Mを超えるような巨大な足跡があるのだ.

 こんな怪物とであったらひとたまりもないだろう.

 これは一刻も早く安全そうな場所を探さなければ...

 俺の歩くスピードは自然と早くなった.




________________________________________________________





 そして4時間後

 はぁ..はぁ.ついに住めそうな洞窟を発見することができた

 いやー苦労した苦労した.


 道がないので,うっそうと生い茂る木の枝を折って進まなければならない.

 そんな最中,オンボロの大きな廃屋のようなものがあった.

 まさに救いの女神である.

 しかし,中に入って探索してみると,ここには住めそうにないことが分かった.

 埃こそかぶっていたものの,道具自体は手入れをされていて劣化していなかったのである.

 おそらく,定期的にこの廃屋を利用している人物がいるのだろう

「こういう人気人気(ひとけ)のいない所にある廃墟は,大体ヤンキーやマフィアのたまり場となっているから危険だ.」

 と,ネットの記事で読んだことがあった気がするので,この廃屋を生活拠点とするのはやめて置こうと思う.

 盗賊やならず者の拠点となっていて鉢合わせしたらひとたまりもない.

 だが,廃屋を探検していたら,この森の地図らしき紙見つけることができた.

 家主には非常に申し訳ないが,この地図はちょっとだけ貸して頂く.

 そして,それを頼りにこの洞窟に辿り着くことができたのである.

 この森を抜けようかと思ったが,地図を見る限りかなり広大な森林と思われるので,かなりの前準備が必要になるだろう.

 流石にこの状況では危険すぎる.

 他にも道中,巨大な樹木のうろや,木々の枝が重なり屋根になっているところなんかも見つけたが,周囲から丸見えなので安心感に欠けるし,モンスターの寝床になっていたらマズイ


 とりあえず,今はこの洞窟を拠点としようと思う.

 日は暮れ,今はもう辺り一面黒一色である.

 もう暗くなってきたし,何より歩き疲れた.

 もう転移時に来ていた制服も木々に引っ掛かりボロボロだ


「今日はとりあえずここで寝るとするか.」


 まっ,とりあえずこれからのことは明日考えよう...

 ポジティブに生きなければ,このような絶望的な状況では精神が持たない.


 俺は,冷たい地面を寝床にして就寝についた.


 Zzz...


 こうして,俺の異世界生活初日は終了した.


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