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No signal.
髪の毛をいじられるのは
まるで
繋がれていたRCAケーブルが
一本一本抜かれるようで
なんとなくだけど
気持ちがいい
刺激が薄れていくような
ぼんやりとしたイメージが
だんだんとクリアになっていくような
ノイズが
少しずつ少なくなってきて
そのうち
なんにも映らなくなるような
そんな気持ち
だから
生まれたての赤ん坊が
髪の毛ひとつも
生えていなかったりするときなんかは
きっと
沢山の事をインプットする
その下準備なんだろうななんて
過去を想像する
そうすると
ひやっとする君のしっとりとした
まばらに毛が生えた頭の中は
どんなことを考えているんだろう
きっと
必要最低限の事しか
入力されないくらいに
いっぱいいっぱいなんだろうなと
今度は未来を想像する
処理しきれない
逃げ場がない
だから
制限する
そうやって
手の隙間から逃げていく
Signalを追いかける
最後の一本が抜けた時
画面の向こう側を見る勇気が
僕にはまだないな




