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【完結済】英雄と呼ばれた破壊者の創るこの世界で  作者: こうしき
第三章 collapseー崩壊ー

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第五十二話 幼子と父

 ライランデ半島──通称「魚介の聖地」


 フロラ大陸から枝が生えたように、ひょっこりと突き出しているその半島は、年中様々な魚介類が非常によく採れる。ガミール村も海に面してはいたが、漁業よりも農業のほうが盛んだったので、あまりにも新鮮で美味な魚介にネスは舌を巻いていた。


「流石は魚介の聖地、腕が鳴るぜ!」

 

 コック長のパルマが、朝から大量に作る料理を皆は必死に食べている。その横でネスがリュードと遊んでいると、皆より少し寝坊したレスカが、ゆったりとした足取りで食堂に入ってきた。


 いつも通りかっちりとした服のレスカは、アップルグリーンのチェック柄のワンピースの裾を握りしめながら、ネスとリュードの横を通りかかった。


「……お、おはよう」

「……おはよう」


 ぎこちなく挨拶を済ませると、レスカはリュードの頭を優しく撫で、一番奥の席に腰を下ろした。そして少しだけ食事に手をつけると、そそくさと食堂から出ていった。


「なんだレスカの奴、具合でも悪いんか?」


 レスカが出て行き一気に静まり返った食堂内で、誰かが声を上げた。


「あいつも女だ。今は成長期だし、色々あるんでしょうよ、きっと」

「そういうもんか?」

「女ってのはそういうもんでしょうが」

「ハイル、お前、女心がわかるのか?」


 中年乗組員のドラがにやにやしながら航海士見習いのハイルに言うと、それを見たリュードが無邪気にきゃっきゃと笑った。


「おうリュード坊、お前女心がわかるのか」


 立ち上がったドラがリュードの頭を撫でにやって来ると、リュードは「んーにゃ!」と元気一杯叫んだ。それを見て皆がどっと笑った。


 笑っていないのはネス一人だけだった。





「それじゃあ頼んだよ」


 リヴェとリュードを「若父様(わかとうさま)」の元へ送り届ける役割を買って出たネスは、料理長のパルマの頼みで簡単な買い出しも頼まれていた。帰り道に買うつもりでいたが、この空気では無理だと判断して、先に買い物を済ませていた。


「なんで先に買ったのよ。重たいのに」


 ネスの前を歩くレスカはリヴェと手を繋ぎ、振り向きもせずに不満を漏らす。


「別に腐るものじゃないし、いいだろ」


 まさかお前と二人きりの帰り道が気まずいから先に買ったんだ、とは言えない。

 というよりも、レスカが着いてくるとは思ってもみなかった。


「若父様ってのを一発殴ってやりたい」


 というのが彼女の同行理由であったが、まさかこの状況で、ネスがいるにも関わらずついてくるとは……。


「ネスー」


 背中におぶったリュードが、可愛らしく声を出した。


「なに?」


 ネスが優しく聞くと、リュードは柔らかな声で「けんか?」と言った。


「ネスー、ねぇねと、けんか?」


 ネスは、この年齢の子供がどの程度喋れるのかは知らなかったが、リュードは幼いわりにはっきりとよく喋る。


「けんか、めっ!」


 と言ってリュードはネスの頬を、その小さな手でぺちっと叩いた。


「喧嘩じゃないよ」


 そう、喧嘩ではない。喧嘩ではないのだが、ネスとレスカの間には気まずい空気が流れている。

 そんなレスカはというと、リヴェに手を引かれ人気(ひとけ)のない住宅街を足早に進んでいる。


「もうすぐだよレスカ(ねえ)

「腕が鳴るわね」

「変なこと考えないでよレスカ姉」

「大丈夫。殺しはしない」


 レスカの目は殺意に満ちていた。それは幼いリヴェが見ても一目瞭然だった。


「あ……あそこだよ」


 リヴェが指差したのは、四人が直進するT字路の真正面にある質素でも豪奢でもない、ごくごく普通の明るいグレーの屋根の二階建ての一軒家。その家の門扉の脇にある小さな植え込みに、一人の男がせっせと水を撒いている。


 背が高い男だ。黒っぽい長髪を、背中で緩く三編みにしている。


「若父様っ!」


 リヴェが叫び、レスカの手を放した瞬間だった。リヴェが駆け出すよりも速く飛び出したレスカは、あろうことかゆっくりと振り返った若父様を思い切り殴り飛ばした。


「ちょ……レスカ姉!」


 拳を握ったままのレスカに、リヴェが駆け寄った。開いた口が塞がらないネスも、立ち込める土埃を見て我に返り、慌てて二人のもとへ駆け寄った。


「レスカ! 何やってんだよ!」


 大きな音に驚いたのか、ネスの背中でリュードが声を上げて泣き始めてしまった。


「この野郎ッ!」


 レスカが言って、土埃の中から若父様の胸ぐらを掴み、引きずり出す。拳をもう一度振りかざそうとしたところで、彼女は固まった。胸元のスカーフがふわりと揺れる。


「え……ちょ、あんた……」


 リュードが若父様と呼ぶ人物の顔を、レスカはその時初めて見た。一撃目の時にしっかりと彼の顔を見ていたなら、彼女は殴りかかることをやめていたかもしれない。


「何なんだ、一体……ん、君はたしか」


 氷のように冷たい瞳、美しい髪、それに抑揚のない声。


「また会ったな。ライル族の娘」


 駆け寄ってきたリュードが、彼にしがみついた。ネスの背中から飛び下りたリヴェもそれに続く。


「なんで……」


 その光景にネスとレスカは驚愕し、言葉を失っている。


「ん、なんだネス……なのか? なんだか大きくなったな……ん? 何を呆けている」


 リヴェとリュードの父──ルーク・カートスは二人の子を抱き締めながら言った。



ネスの兄がルーク。

レスカの弟がリヴェ、リュード。リュードは父が違うらしい。

その父がルーク? という状況です。


レスカの死んだ姉レイシャとエディンは恋人同士です。ごちゃごちゃしてます。

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