やっぱり運が悪くても異世界生活!
よろしくお願いします
街に着いてグッサンらと別れたところで、俺はまず職業を決めるためにギルドを探すことにした。
街は中世のヨーロッパのような街並みで、家などはレンガで作られていた。
ーーこれぞ異世界!雰囲気でるわぁー!
街を見回しながらギルドを探す。
聞き回らずともギルドはあっさりと見つかった。
(ギルドの建物がこの街で1番大きい建物で、街の中心部に位置していたからだった。)
大きな2つの門をくぐり、酒場らしきところが現れる。
屈強な男たちや、露出が多いお姉さんたちが沢山いた。
ーーまずは職業設定っと。
俺は酒場のウエイトレスらしきお姉さんに話しかけた。
「すみません、職業とかってどこで決めるんですか?」
「それなら、あそこの窓口で行なっております」
「そうですか、ありがとうございます」
「ところで見かけない顔ですが、ここに来るのは初めてですか?」
「そうです、ちょっと遠くの街からきました」
「そうなんですか、職業はなにになさるおつもりですか?」
「一応、冒険者志望です」
「勇敢ですね!最近は冒険者になりたいと言う人が少なくなってきて、人員を募集していたところなんですよ」
「そうなんですか。それじゃ、またきます」
「ではまた。ご検討を祈ります」
ウエイトレスのお姉さんは俺に微笑みかけ、再び仕事に戻った。
俺はさっきウエイトレスのお姉さんが言っていた窓口へと足を運ぶ。
「やあ、こんにちは!職業設定ですね?」
俺が尋ねる前に話を進める窓口のお姉さん。
「そうです」
「私はイレーナと申します。よろしくお願いします。ではまず、志望する職業を選んでください」
お姉さんが提示した職業の選択項目には”冒険者”と”商売人”と言う項目が書かれていた。
「じゃあ、冒険者でお願いします」
「わかりました、ではステータスの確認を行いますので、この石碑に手をかざして下さい」
窓口の横に立つ腰くらいの高さの石碑に俺は手をかざす。
すると、石碑の下の穴からカードらしきものが出てきた。
それを、お姉さんは手に取る。
「えっとー、サトルさんですね。ステータスは、運が最低クラスということ以外は至って普通ですね。あ、でも危険判断能力がとても高いですね」
ーー危険判断能力?なにそれ、冒険者にとってなんか役に立つのか?危険だとわかったところで逃げられなきゃ意味がないだろう。
「へぇー、ありがとうございます」
「では、クエストを受けてどんどんレベルアップして、ステータスを上げてくださいね!」
「は、はあ......」
そんな返事をして窓口から立ち去ろうとした時、俺の後ろから声が聞こえてきた。
「私も冒険者志望です!」
「あなたもですか!ではステータスの確認をお願いします!」
見るからに13歳〜15歳といった風の女の子が立っていた。
どうやらこの世界に年齢制限はないらしい。
緑色のショートヘアーに白のワンピース、そして胸がない。
ーーロリっ子じゃねぇか。
「おお!これはすごいです!運のステータスが最高です!他のステータスも平均より全て上回っておりますし、もうすぐにでも転職できますね!」
冒険者と言う職業の枠組みから転職して色々な職業に就くことができる。
転職をするにはレベルを上げるか、元々の素質かの2種類だけだ。
俺みたいな平凡な冒険者はレベル上げをしなければ転職はできないのだが、たまにステータスが異常に高くそのステータスが高い分野の職業に転職することができる。
そう、スタート地点は最初から才能のあるやつとないやつとの差が尋常ではないのだ。
「本当ですか!?やったー!」
「おめでとうございます、これからの活躍にギルド一同期待しております」
酒場にいるみんなが歓迎の声を上げる。
ーーおいおい、俺の時とあのロリっ子の時で対応が月とすっぽんなんだが。なんだこの劣等感は、シバくぞ!
俺は酒場のはじの席に座りメニューを見る。
ーーゴブリン丼、180ペル?ペルってなんだ?金か?
そんなことを考えていると、さっきのロリっ子が俺が座る席の前に座った。
「私とパーティー組んで下さい!」
「へ?」
ーーやばい、嫌な予感しかしない。
「あの、私、実はエルフなんです!」
ーー嫌な予感の正体はこれか?
「この街ではエルフは差別の対象となっているんです。でも貴方はなんだか、そう言うのを気にしない人ではないかと思い話しかけました」
「ま、まあとにかく、俺みたいな弱っちい冒険者とパーティーを組んでもいいことないと思うぜ」
「大丈夫です!」
「そ、それに、ほら、俺金持ってないし」
「私の家は代々お金持ちなので大丈夫です!」
「......」
ーーやっべぇー、なんか俺の危機感地センサーがビンビンいってるんですけどぉー!
「じゃ、じゃあ一回お試しとしてクエストに一緒に行って見ますか」
「わかりました」
そう言うとロリっ子はクエスト依頼の掲示板の元へ行き、一枚の紙を持って戻ってきた。
「これなんかどうです?」
「なになに、盗賊に盗まれたダイヤを取り替えして欲しい?おい」
「なんでしょう?」
「推奨レベルってところ読んでみろ」
「えっとー、25ですね。それがどうかしましたか?」
「どうかしましたかじゃねぇー!俺たちのレベルまだ1だろうがぁー!」
「ダメでしょうか?」
「ダメも何も、クエストのレベルが高すぎる。もっと低いのにしよう」
「わかりました」
ロリっ子はまた掲示板へ向かうと、少し悩んで、また紙を1枚持って戻ってきた。
「これはどうでしょうか?」
と言ってさし出したのが。
「肩が凝ったので揉んで欲しい?なんだよこのクエスト!推奨レベル1だけど、こんなのクエストじゃねえよ!休日、孫がお爺ちゃんお婆ちゃんにする小遣い稼ぎだよ!!全く、俺が選んでくるからちょっとまってろよ」
俺は立ち上がり掲示板へと向かう。
そして、目に止まった1枚の紙を引き剥がし、再び席へと戻る。
「これなんかどうだ?」
「ミツマタスネーク3体の討伐?推奨レベル1。いいですね!これにしましょう!」
「よし決まりだ、だが、まだパーティーになったわけじゃないからな」
「はい!」
「そういえば名前聞いてなかったな。なんて言うんだ?」
「私は、リーフと言います!」
「そうか、俺はサトルだ、よろしく」
「よろしくお願いします!」
俺たちは席から立ち、ギルドを出る。
そして討伐クエストの指定場所へと向かう。
「ここが、ミツマタスネークが出ると言う場所ですか」
「そうみたいだな」
そこは見渡す限り草が生い茂る平野だった。
俺はくる途中に購入したダガーを握る。
「サトル!こっちにいますよ!」
「どこだ?」
「そこです、そこ!」
リーフが指さす先には、首が三叉に別れた蛇がいた。
「こいつか」
俺は握っていたナイフでミツマタスネークをさす。
ミツマタスネークは最初のうちは抵抗していたが、すぐ力尽きて動かなくたさなった。
「私も倒したいです!」
リーフはそう言って俺が持っていたダガーを奪う。
そして新たに見つけたミツマタスネークへと振りかざす。
「討伐完了。1800ペルか。おい、ペルってなんなんだ?」
「お金のことですよ」
「そうなのか」
俺たちは酒場へクエストの報酬を受け取りに行く。
窓口についてイレーナさんから報酬を受け取る。
「金は山分けな」
「わかりました」
ーーまあ、特におかしなところも無いし、パーティーに入れても問題ないな。
「よし!パーティーを組む!」
そう言うと、リーフの顔がだんだん笑顔になっていき、ついには泣き出してしまいそうな顔になった。
「あっ、ぐすん、りが、ああ、とおう、ござぁいますぅーえええん!」
「おいおい、そんなに泣くなよ」
「は、ぐすん、いー!」
俺たちはさっきの報酬で昼食を食べることにした。
酒場の隅の席に座り、メニューを見る。
「おい、なんか食うか?」
「えっと、じゃあ、焼き鳥で」
「俺は、ん?なんだこの、モーモの実のジュースって?」
「モーモの実は森の奥深くて採れる赤色の身で、栄養豊富なのでこれだけで昼食一食分と同じくらいのカロリーを取れます」
「へぇー、じゃあ俺はこれにする。すみませーん!」
と大きな声で言うと最初にここにきた時に話したウエイトレスさんがきた。
「ご注文はなんでしょうか?」
「えっとー、焼き鳥1つと、モーモの実のジュース一杯下さい」
「全部で500ペルになります」
「じゃあこれでお願いします」
俺はさっきの報酬をポケットから出して500ペル分を渡す。
「確かに500ペルですね。ありがとうございます、では少々お待ちください」
ウエイトレスさんはそう言って、カウンターに戻っていった。
ーーまずは金を貯めないとなー。
ーーこいつパーティーに入れてもなんか役に立たなそうだからな。
「今、私のこと汚れた目で見ましたね。即座に謝罪を要求します!」
ーーええええええー!
ーー何この子、普通の子かと思ったらあれか、自意識過剰系ロリっ子か!
「おい、ちょっとステータスのカード見せてみろ」
「な、何ででしょうか〜?」
「何かやましいことでもあるのか?」
「な、無いですよ〜、そんなの〜」
「やましいことが無いんなら、なんで俺の方を向いて話さないんだ?」
ギクッ!
「い、いやぁー、あ!もう帰る時間だぁ!帰らなけれ......」
そう言ってリーフが帰ろうとした所で、俺は彼女の手を掴む。
「ちょっと待て」
「嫌だなぁ〜、サトルさん。私はただ時間がぁ!!!!」
そう言って無理やり俺の手を剥がそうとしたので、抑え込む。
「やましいことが無いんだったら、カード見せろやぁぁぁぁぁ!!」
「いーーーやーーー!」
「はっはっはー!カードは頂いたぜ」
「返してくださーい!」
俺はリーフの頭を手で抑えつけながら、カードを読む。
「どれどれ、冒険者でステータスは、ん?」
抑えていたリーフが急におとなしくなる。
「サトルさん、時には嘘も必要なんですよ、それがたとえ大きな前振りを使ったものだとしても」
ーー涼しい顔で何言ってやがんだこのロリっ子は。
「おい待て、お前なんだこのステータスは幸運値以外最弱じゃねーか!てか、なんで幸運値だけだけーんだよ!しかも、お前普通に人間じゃねーかよ!シバかれたいんだな!そうなんだな!」
「す、すみませーん!」
「それより、あの大袈裟な歓迎はなんだ?ヤラセか何かか?」
「あー、あれはただ、ギルドのお偉いさん方に私の知り合いがいるので頼みました!私お金持ちなので!」
「そうか、よくわかった、よし、もみあげとはお別れだな!」
「ごめんなさい!もうしませんから!私のもみあげ切ろうとするのやめてください!」
読んでいただきありがとうございました