運が悪くても異世界生活!
よろしくお願いします。
俺の名前は柳葉 悟、17歳だ。
中3の頃から学校に行くのが嫌になり家に引きこもった。
引きこもりと言っても俺は容姿だけは普通で背丈も標準より高いくらいだった。
妹の出来が良かった分、俺が引きこもっても俺の親は何1つ文句も言わなかった。
俺のことはもう見捨てたのだろう。
引きこもったと言っても全く外出しなかった訳ではない。
欲しい漫画や小説の発売日や食料の買い出しに行く時だ。
だが。
何故かはわからないが俺が外出するたびに何か俺にとって不幸なことが必ず起こる。
例えば。
買い出しの帰り道端に100円玉が落ちていた。
ラッキーと思い拾い上げ、ポケットにしまう。
そして、また歩き出し、家に着いたところでポケットを確認すると、いつの間にか拾ったはずの100円玉が消えているのだった。
こんなようなことが多々あり、俺は外出することを控えていたのだった。
そして、ある日、父親が川で釣ってきたという魚を夕食に出された。
刺身状態で出されたそれを、俺はいつもの様に食した。
すると、突然気分が悪くなり俺はベットに横になった。
しばらく苦しんだ末、俺は命を落としたのだった。
なんて運が悪いんだ。
この世の生死が全て運のせいだと思わせるほどの運の悪さだ。
自分でもアホらしくなってくる。
そして気づけば俺は真っ暗な空間にいた。
何処からかともなく声が聞こえてきた。
「貴方は死にました。」
唐突にそう告げられると、真っ暗な部屋にいきなり椅子と机が現れた。
机の上にはサイコロが8つ転がっている。
突然どこからか女の声が聞こえてきた。
「死後の掟で貴方にはサイコロを8つ同時に振ってもらいます。ゾロ目が出れば新しく生まれる命として生まれ変われます。ゾロ目の中でもピンゾロなら、貴方をそのままの容姿で地球とは違う世界へと転生できます。それ以外は全て天界の住人になり天界で働いてもらいます。
では、どうぞ。」
俺は椅子に座り机に置いてあるサイコロを手に取る。
そして、それを手の中で振り、静かに机へと落とす。
ジャラジャラジャラジャラ
サイコロの目は見事にピンゾロになっていた。
「おめでとうございます。貴方は異世界へと転生する権利を得ました。」
「待て待て、俺はもとの世界に戻りたいんだが。」
「掟で決まっておりますので、それはできかねます。」
「なあ頼むよ!」
「掟で決まっておりますので。ではご検討を祈ります。」
「おいまて!いったい俺は何処に転生するんだ!?」
「そう言えば言っていませんでしたね。貴方が転生するのは異世界です。異なる世界という意味ですが、異世界というのは貴方がこれから行く世界の名前になります。」
「異世界!?も、もしかして、モンスターとか出たりするのか?」
「もちろんです!」
「いやだー!俺を家に、もとの世界に返せー!」
「では改めてご検討を祈ります!」
女の声が止んだあと俺が座っていた椅子が消えた。
そして辺りが明るくなるにつれ俺の意識がなくな
っていった。
☆☆☆☆☆
目がさめるとそこは生い茂る緑色の草野の上だった。
「ったく、ここ何処だよ。」
不満な声を漏らしながらあたりを見回す俺。
衣服はいつも着ていた黒の生地に白い線が入った上下のジャージで、機能性と、機動力に優れる服だ。
草野から立ち上がった俺は、まず、建物を探すことにした。
20分ほど歩いたところで、民家らしき集団住宅地を見つけた。
そこには剣や杖を持った男女が数人いた。
俺はそいつらに話しかけることにした。
「あのー、冒険者さんですか?」
と尋ねると、一番ごっつい斧らしきものを持った男が俺の方を向いた。
「あん?」
ドス太い声にビビりながらも続ける俺。
「大きな街みたいな所ってどう行けば良いか教えてくれませんか?」
「あんちゃん、ここくんの初めてか?」
「はい。」
俺はコクコクと頷くとごっつい男が立ち上がり俺の方に歩いてきた。
ーーやっべぇー!俺なんかまずいこと言った!?どんどん近づいてくるんですけどー!?
ごっつい男が俺の目の前にたった。
ーー俺殺されるんじゃね!?本当にもう!ついてねぇー!
「あんちゃん、」
「は、はい!」
「なんだよー!もっと早く言ってくれよー!」
「へ?」
ごっつい男は俺の肩に腕を回し親しげな態度で話す。
「てっきり、役所のもんかと思ったぜー!」
「は、はあ、」
「おっしゃー!じゃー街までいくか!おい、行くぞ。」
ごっつい男は仲間の男2人を呼び、俺を街まで案内してくれるらしい。
「出発だー!」
「おー。」
ごっつい男以外の俺たち3人の声はあまり乗り気だはない様な声で返事をした。
しばらく道なりに進むと、道端に小さな黄色いものがあった。
俺はそれをよくよく見ると、生物であることがわかった。
「お!ファイャーバードの子供じゃねーか!焼き鳥にするとうまいんだよな!」
とごっつい男が言った後腰に付けていた剣を抜いたので、俺はそれを必死に止めファイャーバードとやらを保護することにした。
ピー!ピー!ピー!
ファイャーバードを抱え、また道なりに歩き出す。
俺以外の3人は不思議そうな顔で俺の方を見ている。
この世界ではモンスターを庇うのはとても珍しいらしい。
しかも食用のモンスターと来たら尚更だ。
元いた世界で言う、豚を飼っている一般の人の様な感じだ。
少しばかり歩いたところでごっつい男が俺に話しかけて来た。
「そういや、名前聞いてなかったな、なんて言うんだ?おお、すまんすまん、俺はグッサンって言うんだよろしくな!」
「よ、よりしく。俺は、柳葉 悟だ。サトルで覚えてくれ。」
そして俺の自己紹介が終わった後、グッサンの仲間の2人が自己紹介をする。
「俺は、トールってんだ、よろしく!」
はじめに背の低いやつから事後紹介があった。
ーー背が低いのにトールかよ!はっはっはっ!笑えるわ!
顔は無表情のまま、心の中で散々笑い飛ばした後、次はメガネをかけたいかにも頭良さそうな奴が自己紹介をする。
「僕は、ジンジャーだ。よろしく。」
「よろしくジンジャー。」
ーー焼肉にぴったりの名前だな。
そんなことを思いながら歩く。
そしてついに、街らしき影が見えて来た。
いつの間にか俺の手の中にいたはずのファイヤーバードが消えていた。
こうして始まった俺の異世界生活。
これから待っている苦難や幸福を思えば武者震いするぜ。
待ってろよ!俺の異世界生活!
前の世界で運が悪かったぶん、この世界では幸運を勝ち取ってみせるぜ!
読んでいただきありがとうございました