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身辺報告

 俺がこの世界に転生してから8~9ヶ月位は経っただろうか。

 最近休み無しで動いている為、区切りが無くて数えるのが難しい。

 まあ、どれくらい経ったかなんて、そんな事あまり気にしてはいないんだが。

 それにファリアが日記をつけてるから、それを覗けば俺がレイマールに運ばれた日も載っているだろう。


 さて、今の俺はというと、この上級魔術師とか呼ばれているフィールという優男から魔術の基本的な仕組みを習っている。

 初めはこの魔術研究所に通わされた意味が解らなかったんだが、どうやら俺の事を呪いに侵されていると勘違いしたファリアに頼まれ、ここの講師的な存在であるフィールがその呪いを解く事になったらしい。

 しかもその呪いというのが、【妖艶に男を誘い、また女の下着を盗む呪い】だそうだ。

 それは報告書として、ファリアやバッファにも渡されたという。


 ちょっと間違ってはいるが、半分は合ってる。

 女の下着を盗んだのは認めよう。だが、男を誘うなんて事は有り得ない。


 まあ、オ〇ニー中毒という項目が書かれてなかっただけでも良しとしておこう。

 そういう言葉がこの世界にあるかどうかも解らないが。


 呪いという事で納得されたのはいいとして、ちょっと恥ずかしいものではある。

 

 その恥ずかしい内容を知っているのは、フィール。

 この男は、俺に気付かれぬように秘密裡に家へと忍び込んでいたらしい。

 そして俺の情事をまんまと覗いていたらしいのだ。

 なんと羨ましい事か。


 俺も自分の事だが、この体の幼女が淫らに体をくねらせる所を、第三者目線から見てみたい。

 うん、やはり俺は変態だろうか。


 とりあえず、私情を色々と覗き見られた俺ではあるが、ここに通っていれば呪いの研究、そして呪いを解く為。と称し、魔術を習う事が出来る。

 不本意ではあるが、もうしばらく自分は呪われている事にしておく事にする。

 まあ俺のこの性的欲情も、一種の欲求不満による呪いなのかもしれないが。


 ここに通い出して、俺にとって嬉しい事もあった。

 なんと無詠唱で出来る魔法もあるそうなのだ。

 だがこの世界ではそれは魔法としては分類されてはいないらしい。

 魔力を使う事には変わりないらしいのだが。


 その魔法というのが、一番低級にあたるものらしい。

 低級治癒魔法。

 魔力を手に集めて、傷を負った部位にあてがう事で、切り傷ほどの浅い怪我ならたちまち治ってしまうというのだ。

 魔法を使うことを諦めていた俺にとって、それは真面目に勉強する切っ掛けにもなった。


 フィールによると、魔法というのは頭の中のイメージが一番大切なようで、火の魔法には火のイメージ。

 水の魔法には水を頭の中で思い描くことが大切だという。

 ならイメージするだけなら詠唱はいらないんじゃないかと思ったんだが、そうでもないらしい。


 頭の中で繰り返し思い描いた物を、詠唱を通して具現化する。

 魔法の訓練では、想像に言葉を加える事によってその実態を表させる。

 つまり言葉を想像にリンクさせる事により、具現化を確かな物へと促すプロセスが必要という事らしい。


 この魔術研究所に通い出してから、魔法を繰り出す者達を何度も見てきた。

 やはり個人によって魔法そのもののイメージの強弱がある為か、その威力も個人個人違う。

 たとえば火の最下級魔法ファイヤーボールにしても、その球体の大きさは個人によってバラつきがある。


 こぶし大ほどの球体しか出せない者や、唱える者の頭ほどの大きさの火の玉を飛ばせる者もいる。

 フィールが言うようにやはりイメージなのだろう。


 火に苦手意識を持つ者は小型の火の玉しか出せない、ということだ。

 でも、苦手でも出せるのだから羨ましい。


 だが無詠唱魔法は別だ。

 魔力を詠唱によって別な物に変化させる事は出来ないものの、魔力自体を手に集中させる事で出来る魔法だ。


 無詠唱魔法が魔法に分類されないのは、魔力を別の物に具現化出来るか出来ないか、だけのようだ。

 家で詠唱が出来ないと魔法が使えない、なんて本を読んで損した気分だ。

 魔法に分類されてなくても、ラノベが横行している日本育ちの俺からしてみればそれは魔法でしかない。


 そして実はこのただ魔力を放出しているだけのような力。

 攻撃としても使えるようなのだ。

 いわば攻撃魔法。この世界ではやはりそれも攻撃魔法ではないらしいが。


 手の平を前に出して、体の中の力を手から出るようなイメージを頭の中で練る。

 すると手の平が少し暖かくなって、白く輝く魔力波が放出される。

 波〇拳みたいな感じだ。

 だがフワフワと一定時間短い距離を飛んだ後、すぅっと消えてなくなってしまう。


 これを早い速度で手から飛び出すようにするには、手を前に素早く突き出す必要があるらしい。

 つまり手を突き出すスピードが、そのまま魔力波のスピードとなる訳だ。

 まさに波〇拳。筋力の無い者には実践で使えた物では無い。


 筋力を使わなくても、早い速度で打ち出せるような事は出来ないのだろうか。


 フィールに相談したら、即答で「ない」と言われた。

 そんな都合よく出来たら、それも魔法として認可されているとのことだ。

 それにこの魔力波は、鍛錬した強い剣士ほど使わない。

 低級といっても相手を倒すにはそれ相応の魔力が必要となる。

 そんな魔力を使うなら剣技で使ったほうが威力桁違い。

 そんな話をフィールは丁寧に俺にしてくれた。

 

 だいたい分かってきた。

 威力には大小あるが、殺傷能力があるのが攻撃魔法で、それ以外は魔法ではない。

 そんなところだろう。


 たしかにこの魔力放出は、いわばパンチが飛ぶような物。

 攻撃魔法といえば炎の柱や氷の棘が飛ぶのが連想される。


 ああ……いいなぁ、攻撃魔法。

 俺も使えたらなぁ……。


 フィールが自慢げに魔法を繰り出すのを見ながら、手に魔力を集めて傷を癒す低級治癒魔法の練習をするのが、ここ最近での魔法研究所での日課になっている。


 今度は剣術の稽古だ。


 稽古といっても基礎体力を上げる走り込みや、腕の筋力をつける腕立てや重い石を持ち上げる特訓。

 また木剣を使って藁で出来た人形に打ち込みをする稽古。

 稽古初日に一日のスケジュールを聞いた時には危険なこともないし、俺にも出来そうだと思っていた。

 だが違った。


 危険なことはしていないが、そのスケジュール自体が危険だった。

 休み時間がほとんどない。

 走り込みから始まり、終わったらすぐ筋肉が悲鳴をあげる基礎訓練。

 俺とエレナが幼いといっても、ファリアには一切の妥協がなかった。

 まさに地獄の訓練という言葉が相応しいほどだ。

 そんな事を5日間連続で続ける。


 地盤である基礎、体をひたすら作る作業。

 他にやる特訓などは無い。


 訓練ではまだ敵を連想しての稽古は組み込まれていない。

 エレナは俺がこの世界に来る前、それをさせてくれない事に少し不満があったらしい。

 それを堂々と告げ、ファリアに一度試合という名目で相手をしてもらうことがあったようだ。

 実にエレナらしい。


 しかしスタミナ切れで途中でへばってしまったそうだ。

 しかも一度もファリアは攻撃する事も無く、エレナが木剣を振り回すだけのベタな試合で。


 それからはエレナは黙ってファリアの言う事を聞き、体力をつける特訓に励んでいる。

 一つ飛びに魔法を楽に使えないかなんて考えている俺とは違い、とても真面目なものだ。

 だけどその真面目さとは違った顔も、エレナは持っている。


「リリス、もっと真面目に走ってよ! バっカじゃないの!?」


 こんな感じだ。

 真面目は良い事だが、バカは余計だ。

 字だって読む事は出来るようだが、書く事は出来ない6~7歳の女の子。


 今はこんなだが、本当は30超えてるんだぞ? と大声で言ってやりたい。

 まあ声は出せないからそれ自体が本末転倒なんだが。

 声が出せても言わないけど。


 しかし俺は大人だ。

 子供に対して優しくしなければならない事くらいは心得ている。

 スラスラと人差し指を何も無い空間で動かして、


『エレナは強いね、走るのも早いし』


 と書くとニヤっと笑顔になる。

 正直言ってチョロイ。


 フィールに教えてもらった中空に字を書く方法。

 指に魔力を集中させ、スラスラと字を描くように指を滑らす。


 すると白い光でフワフワとそこに一定時間、文字が浮かび上がるのだ。

 こういう事が出来るのを知ってからは、紙とペンを持ち歩く事も無くなった。


 所詮は子供。大人の御機嫌取りの技術に惑わされるがいい!

 と、いつもの調子でニへラと笑っていると、ファリアの怒声がとぶのだ。


「子供が、そんな気を使わなくていい!」


 一応ファリアより俺の方が年上なんだけど。


 まあ気を使うと勘違いしてくれている事にはまだいい。

 エレナの機嫌を故意に取っているのがバレたら、なんて子だ。と思われかねない。

 正直俺だってこんな可愛い幼女がそんな事を考えてたらと思うと、イヤだ。

 どこかの悪代官のように木箱を風呂敷から出し、「これをお納めください。ひっひっひ」みたいな事を連想させてはならない。

 他人から見るこの黒肌幼児の清楚なイメージの為にも。


 子供らしくニカッと笑って、今度は木剣を握り人形へと打ち込む。

 笑うと何故か二人が嫌そうな顔をするのだが、そこは気にしないでおく。


 剣の稽古はこんな感じだ。

 まだ剣術のちゃんとした流れのある動きを練習させてもらえないから、剣の稽古とは言わないかもしれないが。

 おいおい、それも習ってゆくだろう。




 さて、今度は家での生活だ。



 以前の様に、毎日自己処理に励むようなことはなくなった。

 やはり、真面目にやらなければ自分を磨く事なんて、出来る訳がない。


 家族の話なんだが。

 ファリアの夫クライムは、親から店を託されたらしい。

 つまり一家の大黒柱として、威厳を保てるようになった訳だ。


 だけど歳は17歳と若く、染めている訳ではないが、髪は茶髪でどこから見ても高校生にしか見えない。

 しかし、やはりこの世界の人だからなのか。

 ちゃんと真面目で、俺より大人っぽい。


 まるでテレビドラマの、親を亡くした兄妹の中の頼れる兄貴みたいな感じだ。

 まあ、クライムの両親は存命なんだが。

 勝手に殺したらダメですよ。


 そのクライムなんだが、店を親から譲り受けたついでに武器製作以外にも、防具製作や魔術本なども売り出した。

 武器屋の倅が変な事をやりだしたと、初めは全く客から相手にされてなかった。

 だが、クライムに商売の素質があるのか、リニューアルから一か月ほどで売り上げは倍になったらしい。

 俺も一度、魔術研究所からの帰りに店に寄ってみたが、魔術本以外にも、魔石などの貴重品も店の中に並んでいた。


 魔石というのはその名の通り、魔力を含んだ石の事だ。


 その原材料は、死んだ魔獣。

 正しくは、長い年月をかけて化石となった魔獣が、さらに長い年月発見されないまま放置されると結晶体となる。

 その結晶を、熟練の武器職人などが形を整え、そして光沢が出るまで磨く。

 クライムの店では、その作業を隠居したクライムの父が行っているようだ。


 結晶化した魔獣の化石は、さほど高い物ではない。

 磨き、美しく光る魔石になって、初めて高価な物へと変わる。

 いわばダイヤモンドのようなものだ。


 宝石はこの世界にもあるようだが、熟練の職人により美しく磨かれた魔石は高価な物ならば小さな国をまるごと買えてしまうほどの価値があるのだという。


 考えてみればボロい商売だ。

 その磨く技術が無ければ出来ない商売ではあるが。


 他にちょっと変わったニュースといえば、あの牢屋の番人、耳頭のフォトンが花屋の娘に告白してフラれたくらいなものか。


 今日もレイマールを含む近隣の街は、平和な日常が流れている。


 説明文の様になってしまいました。

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