学園都市
本作は本当に中が考えてないのです、更新も滞りがちになるかもしれませんが、気長にお付き合いください
駅に着いた、ここから歩いて20分ほどのところに私が3年間お世話になる生駒寮があるのです。
受験の合格発表を見に来たときにも下見してありますし、入寮するまでこの辺りの地図もネットで調べて頭に入れておきました。そのうえ駅から生駒寮までの地図も自作してきました。
軽やかな足取りで生駒寮へと歩き出します。
私の入る生駒寮はちょっと特殊な寮なのでほんの数人しかいません、全員個室が割り当てられるそうですが、そこにどんな人がいるのか実は知らないのです。
下見のときは春休みで人がいなかったからなのです。
学校説明会の時にはアルバイトの件で忙しく、寮の方は確認済みだったのでそのままにしていました。
寮からアルバイト先の地図も作ったほうがいいかな? そんな事を思いながらふと頭を傾げます。
「ここはどこなのでしょう?」
道が違います、それはわかります、どこで間違えたのでしょう? 今まで歩いてきた道を見てみると。
見たことない道・・・えぇ? そんなはずありません、地図だって作ってきたのに、間違えるはず・・・!
でも実際はまるで知らない道、確実に下見のときにも見てない道
ううん・・・・頭を抱えてしまいました。
「どうかしたの?」
救世主様! ちょっと華奢な同年輩と思える男の子に声をかけられました。
「道に迷ってしまったらしいのです。」
「他人事みたいな言い方。」
笑いながら手を差し出す、私の持つ地図を見たいようですね。手渡すとそれを見ながら。
「あぁ、これじゃ迷うね。」
えぇ? こんなに判りやすい地図なのに? そんなわけありません!
「まず目標になる物が全くない、角に目印になるような物を記しておけば迷わずに済むよ。」
「なるほど。」
簡単な説明でこの地図の非が明らかになってしまいました。
「今度からそうします。」
「住所はわかる?わからなければ交番に送るけど。」
住所を教えると。
「あぁ、そこなら判るよ、案内してあげる。」
やっぱり救世主様だった。彼の横に並び案内してもらう。途中駅を通ったのでどうやら最初の一歩から間違えていたようです。反省。
「へぇ、君も金城学園か。」
「あなたも? もしかしたら同じ学級だといいですね。」
「だと嬉しいか。も」
しばらく談笑しながら歩きました、彼は結構気さくな性格のようで実に話しやすかったのです。私はあまり外向的ではなく、普段ならこんな風に他人と談笑などいたしません。
小中通しても友人なんてほとんどいませんでした。自覚はありませんが人見知りと言われていました。
「ここがそうだよ。」
案内されたのはちょっと古めかしい3階建てのシェアハウス。キッチンなどが共有で各部屋にトイレやシャワールームがあります。間違いなく下見にきた生駒寮です。ここに寮母さんがいて、食事なんかも用意してくれるのですが、それは別料金なので私は自炊を申請してあるのです。
「ほんとうにありがとうございます。」
彼にお礼を言うが、同年輩なんだから当たり前だと言いながら去っていかれました。
あ、名前聞きそびれちゃった・・・
「こんにちは、お世話になります。」
寮に入って挨拶をする、すぐにパタパタと足音がして寮母さんがくる。
「渚ちゃん、ようこそ。」
寮母さんというよりお姉さん、絶対成人してないような若い女性に深々とお辞儀して。
「よろしくお願いします。」
と挨拶。この人もすぐ打ち解けられた数少ない私の理解者なのです。
「あなたの部屋は302号室よ、まだみんな戻ってないけど後で歓迎パーティーしましょう。」
「え、でも私食費入れてませんよ。」
「これくらいサービス。」
彼女とも談笑しながら部屋に案内される。
この高校を受けたのは正解でした、もう二人も友人ができました。
談笑できる人は友人と呼んでもいいのでしょう。私には友人がいなかったので、定義がわからないのです、多分さっきの男の子も寮母さんも友人なんだと思いませんか?
部屋に入るとダンボール箱が迎えてくれます。その数3つ。
私の荷物は少ないのです、ここに越すにあたってほとんどの物を処分したからなのです。ダンボール箱の中身はひとつが調理道具と食器、一つが衣類、最後のひとつはぬいぐるみ。そのぬいぐるみを箱から出して。
「おかえり、ポコタ。」
ポコタと名づけたぬいぐるみは狸らしいのですが、私は実物を見たことがありません。
私が受けた高校はこの学園都市の西部に位置する。中高大一貫のとても大きな学校なのです。
寮だけでもちょっとしたニュータウンくらいの規模があり、そこにスーパーや本屋さんなんかもあるのです。
元々この学園都市はマンモス企業が優秀な学生を青田刈りするために創設されたルミナス学園が始まりだったそうです。優秀な生徒が多い大学には共同開発をしたい企業が集まり、次第に集まる優秀だけど入りきれなかった生徒を取り合うように次々と学園が創設され、今では学生を主体とした都市へと発展していったそうですよ。
私の入学した金城学園はそれほど優秀とは言い難いのですけれど、それでも中の上くらいにはなります。
私だって結構頭がいいんですよ!
私は自炊を希望しましたので、部屋にはミニキッチンがあります。そこに食器と調理器具を整理してしまい、クローゼットにハンガーにかけた服を入れる。あとはベットに持ってきたシーツをかけて引越し完了!
ポコタがいなければ女の子の部屋に見えませんね。カーテンは備え付けより明るい物に替えましょうか?
そんな事を考えていると、廊下に話し声が聞こえてきました。
お隣さんかな? 挨拶させてもらわないと。持ってきた手荷物からお菓子の包みを取り出しドアを開けようとして一瞬手が震える。
「大丈夫、大丈夫。ここでは私は女の子なんだ。この寮には私のような子ばかりだと聞いてるし問題ない。」
自分に言い聞かせるように胸元に手を寄せて決心を固めます。
そしてドアを開けると、二人の女の子がこちらに顔を向けて目が合いました。
「こんにちは! 今日こちらに入寮しました。葵渚ともうします、どうぞよろしくお願いします!」
「あぁ、あなたが渚ちゃん、寮母さんから聞いてる。私は大野雅実、マサミでいいわよ、よろしくね。」
ちょっとぷっくらした体格で金髪ショートの彼女がそう自己紹介した。
「いいなぁ、それっぽい名前で羨ましい。私は稲垣大介。イナリって呼ばれてる。」
彼女のほうはかなりがっちりした体型で何か格闘技でもしてるのでしょうか? でも黒いおかっぱの子です。
「マサミさんとイナリさんですね、あの、これつまらない物ですけど。」
「何? お菓子? だったらあなたの歓迎会でみんなに配ればいいよ。」
「あぁ、そうゆうシステムなんですね。」
「システムってわけじゃないけど、もらったもらわないでもめたくないし、この寮に入ったらあなたも家族みたいなもんだから特定の人に気を使っちゃだめだよ。」
「なるほど、私、寮生活って始めてなもので。」
「みんなそうよ。学校生活と一緒だって。」
笑ってそうおっしゃいますが、学校と同じなら私はまた一人になってしまいます・・・唯一の救いはここは同族しかいないという事。それでも何か警戒してしまうのは小学生のときのトラウマからなのでしょう
「マサミさんとイナリさんは同じ学校なんですか?」
「うん、金城。私たちみたいなのはあそこしか受け入れてくれないって。」
「私はその金城にギリギリだったんだけどね。あぁ、来年進級できるかしら?」
「渚、あなた結構かわいいから、生駒寮だなんて言わないほうがいいわよ。」
「え? ダメなんですか?」
「金城でこの寮に入ってるって知られたら、潮が引くように男が寄り付かなくなるから。」
「でも、さっき道に迷って、ここに金城の男子生徒に案内されてきたんですけど。」
マサミさんが額に手を当て天上を仰ぎ見る。
「終わったな。」
「まあ、生駒仲間でなんとかするしかないよ。」
「まあ、あんたも高校受け直せばいいさ。」
「生駒スタイル・・・」
どうもこの寮の生徒は高校で私がこれまで受けてきた仕打ちを受けているらしいのです。
この高校を受けて正解だと思ってたのに、いきなり暗雲立ち込めてきました。
「酷い扱いでも受けるんですか?」
「別に、フツーだよ。ただ彼氏ができないだけ。」
「なるほど。」
私は別に彼氏が欲しくて金城に進学したわけではありません。まあ、素敵な人がいれば惚れてしまうかもしれませんが、付き合って欲しいなどと厚かましい事を望んだりはしないのです。
今までだって好きな男の子はいましたが、私が寄り付こうとすれば避けられるだけだったので。次第にそういった事は望まなくなってしまっていたというのが本音なんですが・・・
それなら別に暗雲立ち込めるなどと言うこともありませんね。私は私なりの高校生活が送れればいいです。
それからもしばらく学校の事を聞いていたのですが、やがて寮母さんに呼ばれました。
「歓迎会始めるよー。」
歓迎会は食堂で行われました、寮生は15人、うち1年生が男4人女8人、2年生が女2人、3年生が女1人だけという人数でした。
大抵2年になる前に目的を果たし、他の学校に移ってしまうそうなのです。
学校で酷い扱いを受けるなら、私もそうしたほうがいいのでしょうか?
イナリさんは2年生で、マサミさんは1年生でした、実家が近いので仲良しだったそうです。
唯一の3年生は医療科を目指しているそうで、カウンセラーになりたいのだそうです、金城は医療科が特に充実しているので、そのまま大学に進学するために残っているそうです、私たちの相談役として寮母さんに引き留められた事も理由のひとつだということで。これからいっぱいお世話になりそうな人です。
男の子の4人を見ると、昼間ここに案内してくれた人に似た雰囲気があるのですが、私の好みではありませんでした。だから彼氏が欲しくてここに進学したわけじゃないですよ・・・
でも、彼らとは結構楽しくお話ができました、彼らも私と同じような境遇だったのでしょう、ちゃんと触れてはいけない話に繋がるような話はされませんでした。
「ポコタ、今日だけで17人も友達ができちゃったよ。まあ、先輩の3人は友達じゃ悪いかもだけど。」
部屋に戻ってポコタを抱えながら今日の出来事を報告します、色んな人とお会いしました。どの人も好意的でとっても楽しみ・・・・
そして入学式。恐らくどの学校でも同じではないかと思いますが、金城の生徒として節度ある生活を送れなどとかの話題を普段教壇に立たないような先生や理事長などが説教っぽくお話して、上級生の歓迎の挨拶やらを聞いて新入生代表以外はただ座って聞くだけの式が続きます。
そういえば、朝マサミさんからはバレるまでお互いあまり話しかけないようにと念を押されました。せっかく友達になれたのに、少々残念です。
あとは自己紹介の時、絶対寮名を明かさないようにとも言われていました。出身中くらいしか言うことできません・・・
そして各教室に戻ります。式の前はバタバタして同級生の顔もよく見てなかったのですけど、今は結構見渡すことができます。
昨日私を迷子から救ってくれた救世主様はいませんでした。クラスメートではなかったようで残念です。
マサミさんも別クラスのようです。つまり知り合いはいないと・・・
あ、ダメ、この状況は・・・
そこに先生が入ってきました。先生は荻野とおっしゃい、数学を担当なさいます。先生は自己紹介を済ませると次のカリュキラムに進みます。
「それじゃ、各自自己紹介といこうか、1番、葵から。」
「誠心中の葵です、どうぞよろしくおねがいします。」
「おいおい、それじゃみんなに聞こえないぞ、もっと大きな声で。」
「・・・・。」
恐らくはたから見れば真っ赤に俯いて黙ってしまっているように見えるのでしょう。
先生にもちょっとかわいそうに見えたようで、みんなに聞こえるよう復唱してくれてそのまま座るように言われました。多分こんな態度だからこれまでぼっちだったのでしょうが、今までの私のスタンスは目立たず空気のように。でしたのでいたしかたないのです。
そのままずっと俯いていたので、他のクラスメイトの自己紹介もほとんど聞いていませんでした。
あぁ、高校は明るく外向的に過ごそうと思っていましたのに、やっぱりそう簡単ではありません。
そんなとき、突然教室の入り口が開いたのです。
「すみません、遅れました。」
「橘か・・・まあいい、軽く自己紹介しとけ。」
え? 何? 誰? 今教室に入ってきたってことは入学式に出てなかった? それにこんなに大胆に遅刻して先生が何も言わない? どんな人?
思わず入り口に顔を向けてしまいます。
「橘楓です、これからもちょくちょく遅刻、早退しますがよろしく。」
そう言って手を挙げた人は、救世主様だったのです。
彼は颯爽と教室の一番後ろの廊下側の席に着き、そのままノートパソコンを開いて・・・
えぇ? 今はクラス会の時間でみんな自己紹介してるのに無視? おまけに先生も何も言わない・・・
前に向き直り先生を見る。先生も橘くんを無視して淡々と自己紹介を進めています。
そして最後の生徒の自己紹介が終わると先生からショッキングな話が・・・
「あー、みんなもわかってると思うが、このクラスは特殊学級でな、ちょっとクラスメイトが自分の出身中学の仲間と違う行動をしてても気にしないように。」
自己紹介をちゃんと聞いておくべきでした・・・橘くん以降の自己紹介はなんだか聞きなれない単語が多くてよくわからなかったのですが、どの人もまともそうでありませんでした。
とゆうか、まともな授業になるのでしょうか? 私もまともじゃないの? そんなことありませんよ、見た目はともかく学校の生活態度はまともでしたよ。多分・・・
「それじゃあとは委員長に一任する、各委員を選定してくれ。」
あれ? いつの間に委員長が決まったのでしょう? 立候補も推薦もなかった気がするのですが・・・
そして一人の女性徒が教壇に立つのですが。彼女の行動は更に私に混乱をもたらすのです・
「それじゃ、文化委員鈴白、体育委員浅田、保健委員川本、風紀委員渡辺・・・・。」
委員長だけではありません、他の委員もいつ決まったのですか? ただ並べていくだけ。
あぁ、これは入学前にすでに決められていたのですね・・・じゃ、さっきの選定て?
なんだかよくわからないです。ここはひとつ、混乱を抹消する魔法の言葉で。
「これが高校というところなのね。」
なわけないでしょう! 進められることは中学とかでもあったことなんですが、ここではなんだか全部お膳立てされてて、形だけ踏襲されてるような。まあ、私が委員やらなんかの役を付けられないのはありがたいですけどね。
そうしてやるべきことは済んだのでしょうか、先生が教室を出ようとしていきなり私を呼びます。
「葵! これを渡しておく。大事に使えよ。」
渡された物はカードのようなもの。これ知ってます、GPSとかいう自分の位置が地図上に表示されるやつですね。
まだ科学しかなかった時代からある物で・・・て、私の致命的な方向音痴を知ってるみたいです・・・
気が付くと隣の女生徒が覗き込んでいました。彼女が誰でも思うような事を口にします。
「へぇ、今でもあるんだ、こんなの。」
びっくりしました、思わずのけぞってしまいました。いや、別に取られるなんて思っていません、なのにGPSを隠すように体を捻ってしまいました。
「あ、驚かせちゃった?ごめんね。」
「あ、い・・いえ・・・」
名前がわかりません、お隣さんなのに・・・私が聞いてなかった間に自己紹介してた人です・・・
恥ずかしいのと申し訳ないのとで顔を横に俯きかげんになってしまいます。
「私川本真琴、中学ではマコとかマコトって呼ばれてたの、お隣さんだし仲良くしよう。」
自然に右手を差し出されました。握手かな? 握手でしょうね・・・
「あ、葵渚です、よろしくお願いします。」
それが精一杯。顔なんて直視できません・・・恐る恐る差し出した手に自分の手を伸ばそうとして噛み付かれるように握られました。こ・怖い・・・
「ふうん、そうゆう人なんだ・・・」
え? 何? そうゆうって? ちょっと不安に駈られて彼女の顔を見ると。彼女はにっこり笑って。
「おーけー、じゃあなたとはそうゆう付き合いにするね。」
そうおっしゃいました。そうゆうって何? どんな風に付き合うつもり?
「あ。」
私が疑問を口にしようとしたときには、既に彼女は踵を返して手を振りながら教室の外に歩いていってしまいました。
やってしまいました・・・明るく外向的な高校デビューどころか、私に好意的な接触をしようとした川本さんにまであんな態度・・・15年かけて培った私の性格なんて、そんなに簡単に変えられるわけないようですね・・・
かなりがっかりして、そのあと腹が立ってきます。自分に文句が言いたい! 怒りに拳を握るのですが自分にぶつけるなんて器用なことできるはずもなくまたがっくりする・・・
くすくすと笑い声が聞こえます。振り返りざま睨むと救世主様・・・もとい、橘くんが口元に拳をあてて近くにいました。! 私今凄い顔してたんじゃ? そう思うと俯いて赤くなってしまった。
「あがり症?」
「違います。」
「昨日とだいぶ違った印象なんだけど。」
さすがに顔をあげて彼に告げます。
「昨日が特別だったんです。普段はこんな風です。」
「どんな風に特別だったの?」
「新しい生活に新しい環境でしたので。気持ちも少し浮ついてました。」
「なるほど、昨日の君なら学園のアイドルでも目指せそうだったから、ちょっと不安だったけど。」
「なんですか? アイドルって。」
「いや、よくテレビとかにあるじゃん。実際にはありえないような設定。あるとすれば昨日の君はその資格ありだと思ってたんだよ。」
「へ・変な事言わないでください。」
「変じゃないよ、君の笑顔すごく綺麗だしかわいかった。」
「な・・・」
耳まで真っ赤になってるのがわかります。顔が火照ってる。真顔でこんなこと言うなんて・・・
「用事があるので失礼します!」
これ以上話てたらなんだか変な方向にいきそうな気がしてさっさと帰ることにしました。
今日は鞄とかも持ってないので早足で教室を出て。廊下を抜けて玄関まできたところでまた落ち込みます。
あぁ、橘くんて、あんな人だったの? せっかく友人になれたと思ったのに・・・
友人? ますます定義がぐらつく。彼は友人失格? 私にそんな判定できる資格があるのかな?
際限なく落ち込みそうなので、一旦思考を切ることにします。そして別の考えに切り替えましょう。
明るく外向的な高校デビューは失敗しでした。それじゃあこれからどうすれば楽しく過ごせるでしょうか?
今日の宿題はこれにしましょう。そう決めてスーパーに寄り、今晩の夕食の買出しをします。
あ、お豆腐が安い、2丁80円て、採算合うのでしょうか? 下世話な心配をしながらお値打ちな物と調味料を少々買い込み、レジに並びます。横に募集のチラシがありました。
時給780円かぁ・・・私が春休みに決めたバイトは時給980円のウェイトレス。制服もかわいかったし私でも大丈夫と太鼓判を押されて決めたのだけど、始業はあさってから。
どんな仕事か、見るだけでも見ておいたほうがいいのでしょうか? いや、研修もあるとか言われましたからそれより早く行ったらだめなんだと思います。そんな事を考えてたらマサミに声をかけられました。
「渚。今日は迷わずにこれたんだ。」
「そんなにいつもは迷いませんよ。と言いつつこれのおかげなんですけどね。」
GPSのカードを見せると。
「またレアな物を・・・」
「やっぱりレアな物なんですか? お高いのでしょうか?」
「いや、レアってだけで2足3文だと思うよ、需要ないし。」
「ちょっと安心しました。先生に頂いたのですが高価な物だったらどうしようかと・・・」
そのまま彼女と談笑しながら寮に戻る。
部屋に帰ったらポコタに報告しないと・・・高校デビュー失敗の報告・・・