波乱の過ぎ去った夜
「飛鳥さん、本当にありがとうございます」
「いえ…………大丈夫です…」
杏里の母親がお礼と共に腰を前に深く曲げる
杏里と少し姿が重なって見える
飛鳥も同じく頭を下げる
さっき杏里の母親…園田松子さんが病院に到着し、互いに軽く自己紹介をした
杏里と同じで黒茶の長髪と少し垂れ下がっている優しそうな目
第一印象は和を連想させる綺麗な女性
松子さんが到着したとき2人とも泣いて顔がぐちゃぐちゃだったが飛鳥はなんとか平常そうに装う
対照的に杏里はまだ目に涙を浮かべている
その涙を見つけた松子さんはハンカチで涙を拭く
(…ここは親子の時間にさせたほうがいいのかな…)
外は街灯の光無しでは暗闇になるくらいの時間帯
とりあえず家に帰らせたほうがいいだろう
「じゃあ、杏里………………また明日ね」
「…!はい……また明日……」
また明日……2人は約束した
また明日学校で会おうと
杏里は明日学校に来てくれるのだろうか
今日はこんな出来事があったが大丈夫だろうか
色んな不安が頭をよぎる
そんな不安を考えながら杏里を見送る
杏里の後ろ姿がとても小さく見えた
親子を見送ったあと飛鳥も家へ
とりあえず自分のスマホの電源をつける
液晶には《19:55》と大きく表示されている
「もうこんな時間か……」
とりあえず家の方向に歩く
歩きながら今日起こった様々な出来事を思い出す…
杏里と図書館で出会って
そこから仲良くなって
帰りに杏里が怪我をして
病院で一緒に泣き合って…
そういえば最初に会ったのは図書館じゃなくて学校の廊下だったっけ…
もし今日杏里と廊下で出会ってなかったら図書館でも話し合うことはなくて杏里も怪我をすることはなかったんじゃ……
そんな飛鳥個人ではどうしようもない《運命》みたいなものさえ後悔する
「はぁ……」
ため息ばかりが出る
そんなことを考えていたらいつの間にか家の前にいた
飛鳥の家は美容院だ、正確には1階が美容院に、2階が家という構造になっている
美容院の出入口のドアには《close》と書かれた札が掛けられている
その掛札を見て美容院の脇に続いてある道に入る
先へ進むと家の玄関にたどり着く
ポケットの中から鍵を取り出し玄関を開けて中に入る
玄関を開けるといわゆる休憩室になっている
なにかの雑誌が散らかっていたりして少し汚いが…
それらは飛鳥にとっては見慣れた景色、そのまますぐ隣にある階段を登る
登ると左側に見えてくるドアを開ける
「ただいまー」
そう言うと靴を脱いで中に入る
廊下が目の前に続いておりそのまま進む
進んだ先はちょっと広めのリビングとなっていてそこからさらに部屋が各方向に続いている
「お帰りー、遅かったねー」
壁寄りに置いてあるテレビの反対側のソファーに座っている女性がテレビを見ながら言った
その女性は飛鳥の母親、名前は橘蒼
飛鳥と同じ黒髪だが短髪で目、鼻、口それぞれがはっきりしている
遺伝だからか2人の顔立ちは似てるところがある
ソファーでくつろいでる母に対して返事をする
「色々あってね…ちょっと休みたい…」
「そう?夜飯は?」
「いらなーい…………寝る……」
そう言ってリビングの奥の方にあるドアを開け自分の部屋へ入る
正直食欲はなかった
ただただ疲れた、眠い
荷物を床へ投げ気味に置きそのまま布団へうつ伏せにダイブする
…うつ伏せの状態でまた思い出す
杏里が自分の胸の中で泣いている姿が鮮明によみがえった
「杏里…………ごめんね…………」
飛鳥はそう呟きまぶたを閉じた
うつ伏せで布団にダイブっていいですよね
疲れが全てぶっ飛ぶというか
この一連の行動を私は《ハイフライフロー》と呼んでいます
「あー今日は疲れたからハイフライフローしてそのまま寝るか」
ちなみにハイフライフローとはプロレス技の1つです
私プロレス好きなんですよね
このハイフライフローを得意技としてる選手がいるんですが私の推しメンです
どうでもいいですね
ここまでご愛読ありがとうございます
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