親睦会と期待
人と人がぎりぎりぶつからないくらいの人混みの電車の中
長椅子の端に2人の少女が手を繋ぎながら互いの体に寄りかかるように座っている
片方の女子は真っ黒な長髪に凛とした顔立ち
見た目に似合わないダサい制服とのギャップが良い意味でも悪い意味でも目立つ
もう片方の女子は黒と茶色が混じった長髪に少し垂れ下がった目が優しそうな印象を受けさせる
彼女も可愛らしい見た目に似合わないダサい制服を着ている
電車が駅に止まると2人は電車を降りて改札を出てまた手を繋いで歩く
2人が仲良く笑いあっている姿は端から見れば姉妹に思える程の雰囲気を纏っている
2人はみどじょの校門の下を通り抜け生徒用玄関へ
「じゃあ飛鳥さん、また今日の放課後に」
「うん、また後でね」
そう言って2人は別れ、それぞれの教室へ
…今日の放課後は学年をまたいで3組の希望者が集まって仲を深める…いわゆる親睦会が行われる
親睦会といっても何人かのグループに分かれてのおしゃべり会みたいな感じ
みどじょでは度々こういった行事も生徒が率先して行われる
杏里とはまだ放課後に一緒に帰るだけだったが今日はずっと一緒にいられるのだ
微笑みながらいかにも幸せオーラを放ちながら2年3組の教室のドアを開けて中に入る
気分はまるで明日の遠足を楽しみにしている園児のようだ
その顔を見てどう思ったのか、眼鏡に知的な雰囲気を出している女子…奈々が声をかけてきた
「おはよー飛鳥、何か良い事でもあったの?」
「え?今日はあれがあるじゃん」
「あれ…ってなんかあったっけ?」
首を傾げる奈々
「親睦会だよー、今日は図書委員主催なんだからちゃんとしてよー」
「あー…………………………はいはいちゃんとしまーす」
長い間の後返事をする
そのまま奈々と何か話そうか考えていたら後方のドアが音をたてておもいっきり開く
そっちを向くと猫背でも分かる長身に…なんだか疲れている表情をしている女子…仁美がいた
仁美はそのまま自分の席に座る
その様子を見て飛鳥と奈々は近寄り、声をかける
「仁美おはよー」
「おはよー2人とも…」
そのまま仁美は手を伸ばし、頬を机とくっつける
相当疲れている様子、ここまで疲れている仁美も珍しい
「何かめっちゃ疲れてるけど?」
「…………バレー部の朝練でね…………」
ため息をつきながら答える
…朝練で疲れるのは分かるがそれ程度でこんなにヘロヘロになるのだろうか
それは奈々も思っただろう、仁美に問いかける
「そんな疲れてちゃ次期エースとは言えないねー」
憎たらしい笑顔を浮かべながら…問いかけるというよりおちょくっている
「あー…うん、頑張る」
姿勢を変えずに言う
仁美ならここで意地を張って何か言い返すかと思ったが素直に返事をする…相当疲れているのだろうか
「いやまーぶっちゃけ171のエースってのはカッコいいけどね、そもそもWSで171ってのは小さくてあと10センチは欲し…………」
…心配して損した
次期エースと言われて何か思ったのか
それから仁美は延々と喋る、内容はバレーボールの事と自分の身長の話
仁美はたまに壊れたように長々と話す時がある
飛鳥と奈々は聞いているふりをして聞き流す
「…でも基本的にWSの選手がエースって呼ばれてるから私がエースになるのかな、それはそれでいいけどまず身長が足りな…………」
…………長い、よくもここまで話が途切れないものだ
呆れる2人をよそに仁美はまだ口を動かしている
「…とりあえず来週の練習試合で…」
「あー分かったから、終わり」
奈々が遮るようにやめさせる、というか遮らないとずっと喋っていただろう
文句を言いたそうな表情をするがそのまま仁美は黙った
「…そういえば今日親睦会あったよね?」
仁美が急に思い出したかのように奈々に聞く
「うん、私達主催だよ」
「だよね、よっしゃぁぁ!」
手を机についてさっきまでの疲れを感じさせない程の速さで立ち上がる
「急にどうしたの」
「いや、親睦会楽しみでね」
「ふーん、仁美もかー」
そう言うと奈々はさっきと同じ憎たらしい笑顔で今度はこちらを向く
「…何よ」
「いや…………2人とも誰か狙ってるの?」
「ね、狙ってる!?」
急に変なことを聞かれたので声が大きくなってしまう
狙ってるって…私が杏里を?
(いやいや何を考えているんだ私は)
奈々は杏里の名前を出していないし第一…
少し動揺してしまったが表情には出さないように心の中で深呼吸をする
「私は杏里ちゃんのこと狙ってるよー」
「!?ごほっ!…うぅ…………」
予想外の単語が聞こえてきた
予想外過ぎて咳き込んでしまった
仁美は…いやこの2人は何を言い出すか分かったもんじゃない
「飛鳥、大丈夫?」
「…うん、ごめんもう大丈夫」
今度は普通に深呼吸をする
…呼吸は落ち着いたが心は落ち着かない
仁美が杏里のことを…狙ってるって好きってこと?
いや、いつもの冗談だろう
でも本当だったら?
そんな事を考えていると朝のホームルームを知らせるチャイムが鳴った
生徒は自分の席へいく
…私も席に…でも……
「飛鳥…冗談だよ」
変わらない口調といたって普通の表情で仁美は答えた
やっぱりいつもの冗談だった
「だよね」
同じく変わらない口調と普通の表情で答える
それは冗談だよねと確認するように…
そのまま3人はそれぞれの席へ座る
頭の中はさっきの仁美の言葉が何度もリピートされる
《私は杏里ちゃんのこと狙ってるよー》
さっき仁美は冗談だと言ったがどうしてもそうは思えない
根拠はないけど思えない…いや思いたくない
それからしばらくその事しか考えられなかった
8月2日に投稿した
『波乱の翌朝』
の後書きの部分…皆さん気付きましたか?
なんかミスしたからごめんなさいって書いてからこれからもミスするから先に謝りますって書いた直後に
『時間』もよろしくお願いします
って書いてあるんですよねー
多分『次回』と打つ予定だったんですが予測変換で『時間』と打っちゃったんでしょうね
いやあれは本当に気付かなかった…
もう逆によくやった私!ナイス天然!
もうあれはナイス天然って事で修正しません、どうぞ皆さん笑ってください
ここまでご愛読ありがとうございます
次回もよろしければよろしくお願いします




