不安と悩み
「飛鳥、今度カラオケ行かない?」
不意に麗奈が一緒に身体測定の片付けをしてるときに言った
「んー、しばらく放課後は時間ないんじゃない?」
それとなく断る、別に行ってもいいのだがなんとなく行きたい気分ではなかった
「そっか…………じゃあ杏里ちゃん一緒にどう?」
「え…えっと…………」
いきなり振られて戸惑う杏里、まだ会って数時間しか経っていないので当たり前だろう
「え?杏里行くの?」
「あはは、冗談だよ、いきなりごめんねー」
(よかった、杏里は行かないよね)
杏里が行かないことに何故か安心した
「最近歌いたい気分なんだけどね、誰かに聞いてもらいたーい」
「歌うのが好きなんですか?」
「麗奈はね、歌が超上手いんだよ」
飛鳥の言った通り麗奈はかなりの美声持ち
恐らく学校じゃ一番の上手さ、それくらい良い声をしている
「私は合唱部だからね、歌には自信があるよ」
自信満々に言う麗奈、歌の上手さは周りも認めているし自覚もしている
だが杏里は1つの疑問をぶつける
「合唱部?ここに合唱部なんてありましたっけ?」
杏里の言った通りみどじょに合唱部は無い
嘘を言う麗奈を少し心配そうな目で見る
「あー…自称合唱部だね、間違い間違い」
「…………麗奈…」
何のことかさっぱりの杏里は首をかしげる
…正確には去年まで合唱部はあったのだが人数不足で廃部になった、麗奈は当時の部員で自称合唱部を名乗っている
少しその場の空気が重くなる
すると違う方向から声がかかってくる
「そこの3人、手止まってるよー」
安藤先生が注意してきた
今は片付けの最中、測定器を運んでいる途中だった
慌てて3人は片付けに戻る
少し重い感じのままその話は終わった
そして放課後、多目的室で後片付けのため集まった飛鳥と麗奈
測定器やら色々が隅の方に置いてある、先程の片付けでも端に置いただけで全部は片付けていない様子
そこに安藤先生が来て喋る
「じゃあ2人はここの片付けをお願いね、他の場所は皆がやってるから」
「はい、わかりました」
そう言って安藤先生は多目的室を出る
先生達は信頼しているのか多目的には飛鳥と麗奈しかいない
2人しかいないと少し寂しく感じる教室で麗奈が先に喋った
「じゃあこれから片付ける?」
そう言って測定器を指で指す
飛鳥は黙ってうなずく
そして2人で持ち上げて運ぶ
それ程重くない測定器にそれ程遠くない距離
対して辛くない作業だがなんだか重たく感じる
理由は分かっている…それを麗奈に聞いてみる
「…まだ合唱部の事、引きずってるの?」
「んー、わからない」
その答えは肯定と捉えていいのかどうか、表情と口調だけじゃわからない
「そんなことよりさ、やっぱりカラオケ行けない?」
「え、えーと…………無理…かな?」
急に話題を変えてきた、話したくないということなのか
(《そんなこと》、か…………)
もう後悔していないのか、もう立ち直ったのか
色々考えるが本人じゃないので結論は出ない
「なんで疑問形なのよ」
「いや、やっぱり行けないかな?」
「ふーん…………ま、行けないならしょうがないや、それより飛鳥、ちゃんと持ってよ」
「あ…ごめん」
いつの間にか測定器を持つ力が緩んでいた
慌てて力を入れて持つ
(考え過ぎなのかな…)
見た感じでは平気そう、だけど廃部した事は何か絶対辛かった部分があるんじゃないか
また考えてたら力が緩む
「…………飛鳥…わざとやってる?」
「え?あ…ごめん…」
呆れながら言われた
もう一度力を入れ直す
…もう考えるのはやめておこう、結論は出ないし麗奈にも迷惑をかける
それからは素早く片付けをやり終える
「じゃあ私は帰るね、バイバーイ」
「うん、またね」
片付けを終えると麗奈は帰って行った、当たり前だが帰り道はほぼ真逆の方角なので一緒には帰らない
杏里も先に帰っただろう、1人でゆっくり歩いていく
(私もいつかあの事件が《そんなこと》って言える日がくるのかな…)
麗奈と感覚はだいぶ違うだろう
飛鳥は第三者の立場で実際に被害を受けたのは杏里
そんな無責任な事までではないが麗奈みたいに軽い感覚で言える日がくるのだろうか
いや、言えない
杏里のことを考えたら…私が守れなかったのにそんな無責任な…
段々と思考がおかしくなってくる
何かに反省するような気持ちになっていると聞き覚えのある優しい声が聞こえた
「飛鳥さん?大丈夫ですか?」
声のする方には制服を着ている杏里がいた
心配するような目で飛鳥を見つめる
「何かあったんですか?顔色が良くないようですが…」
「杏里…」
そんな顔をしていたのだろうか
杏里に心配させるなんて、私が…私が守らなきゃいけないのに…………
「ううん、大丈夫」
平静を装う、ここでまたあの話をしても暗くなるだけ
杏里はほっと一息つく
「そうですか、よかったです」
「それよりなんでここに?」
「丁度帰るところです、飛鳥さんも仕事終わりました?」
「うん、私も帰るところ…」
杏里も丁度帰るのね…じゃあ……
「じゃあ…一緒に帰りますか?」
言おうとしてたことを先に言われた
でも、やっぱり気持ちは同じだった…嬉しかった
「うん、帰ろっか」
小さくうなずいて返事をする
2人は優しく微笑んで一緒に並んで歩いていった
今話で今後の話で出てきそうなすごい分かりやすいフラグがありましたね
えー?なんとか部?が今はなんたらかんたら…でしたっけぇ?
まぁそこら辺の話はだいぶ後になると思いますがやる予定です、というよりやりたいです
あとですね
初めて活動報告なるものを利用しました
そこにはほんのちょぉぉぉぉっっっっっっっとだけ、ほんとうにすこぉぉぉぉぉぉぉぉしだけ大事な情報が書かれていますよければ見て下さい
ここまでご愛読ありがとうございます
次回もよろしければよろしくおねがいします




