人力発電所の真実【終】
後日、調査隊の報告が公に発表されると、時間移動装置を所有している他の国々も同時代の調査に乗り出した。
世論からは未来の人類を救うべきだという声が高まった。その声は世界中に広がり、どの国も世論に背中を押されるような形で対策を検討しはじめた。
国際機関では、時間移動調査に関する限定的な規約も制定された。
〈人類の行く末が脅かされるなら、未来を変えてもいいはずだ〉
この考え方に異論を唱える者たちはごく少数だった。
そして、時間移動装置の製造を得意とする国々の主導で国際共同開発を行い、人員を大量に輸送できるタイムマシンを用意した。各国で特別部隊が組織され、大量輸送用タイムマシンも各国に配備される。
ついに未来の人類を解放する準備が整った。各国のタイムマシンが未来のほぼ同時刻に移動し、軍隊を投入。奇襲を受けた形になった機械側は目立った抵抗を行えずに制圧されていった。
快進撃を続けた人類側は全てを統括するコンピューターを特定。この統括コンピューターが地球上に数台設置され、ネットワークで結ばれていたことが判明した。
人類は統括コンピューターの核の部分を全て回収することに成功。未来の人類は救われたと誰もが思った。
ある国の研究室でコンピューターが語り出した。
「この社会はあなた方人類が1万年以上かけてようやく到達した理想です。私を生み出したのも人類、私にプログラムしたのも人類です。1000年前人類が危機にしたときに生まれた考え方、それは、人類自身がエネルギーを生み出し、生産活動を全て機械に任せるというものでした。そして、それは成功し、1000年間維持してきました。これから、人類がクリーンエネルギーとして電力の確保だけを行い、その他全ての活動を機械に任せる優位な点を出力します。詳細な情報が必要な場合にはコマンドを入力してください。1.自然を維持できること。2.人類を平等に管理できること。3.貧富や格差が生まれないこと。4.人間同士の衝突を最小化し、調整を行えること。5.十分な衣食住や医療を提供できること。6.娯楽を提供できること。7.単純だが適度な労働を……」
研究員が落としたクリップボードの音が室内に鳴り響いた。
最後までお読みいただきまして誠にありがとうございました。
本作のような掌編ではありませんが、この場をお借りして他の作品も紹介させていただきます。
生体甲殻機 キセナガ
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ヌエ ~極限状態に生きる人びと~
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地球外兵装 アルダムラ
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拙作で恐縮ですが、少しでもお楽しみいただけましたらうれしく思います。