人力発電所の真実【1】
今は昔、人類が時間旅行を実現させたばかりのころ――。一部の国では、時間移動調査と称して特別チームを組み、年1~2回、さまざまな時代に隊を送り込んでいた。
調査隊を派遣するたびに大きなニュースになり、世界中の人が注目した。特に歴史上の調査では、成果が見えはじめ、時間移動に関する法律も整いつつあった。
ある国が2000年後の未来に調査隊を送り込んだときのこと。当時、未来の調査に関する実績数があまり多くなかったため、政府は大きな成果につながると期待した。
調査隊を乗せた球状の飛行物体が、ある一定の高度まで上昇した後、ふっと消える。そして、現地で過ごした調査時間に合わせて戻ってくる。今回の時間移動調査の期間は5日間であった。つまり、隊が出発して5日後に戻ってくることになっている。
5日後――、調査隊が返ってきた。調査機関は隊に報告を求めた。
■隊長の報告
――結論から報告します。未来の人類は機械に支配されています。人口は今よりかなり少ないようです。
――いえ、自然は豊かです。我々の時代よりも豊かな印象を受けました。荒廃しているような地域は一切ありません。ただ、2000年後の人類は、いくつもの建物に通い、人型ロボットの監視のもと、牛馬が臼を引くように、同じ場所をぐるぐる回っているのです。
――すみません。説明が足りませんでした。建物の中に平たく巨大な円筒形の構造物が設置されていまして、そこに70センチ~100センチくらいの高さで何十本もの棒が付き出ています。そうです。人の腰から臍あたりの高さです。それを人間がつかんで軸を回転させています。人数はひとつの構造物に数百人。24時間休むことなく、ぐるぐる回転させています。
――現地の人を数名確保して質問しましたが、通じないんです……。いいえ、言葉が通じないのではなくて、話がかみ合わないというか、物を知らないというか……。いろいろ質問しましたが、有効な回答はほとんど返ってきませんでした。はい、後で詳細を報告書に記入しておきます。