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さて、と、ひと息ついて賽銭箱の前に座りきょう一日の出来事を振り返る。
ガラの悪い天狗に絡まれ、そいつのせいで学校を遅刻どころかサボるということになってしまった。さらには自分の弁当をカツアゲされる事態だ。
はぁ、新学期早々サボり判定かよ……とことんついてないなぁ僕……。
おまけに現在の自分の居場所も分からないという最悪の事態。
どうしてくれるんだ。
と、いうような意味を込めて空中で寝っ転がるアホ面天狗を睨む。
が、天狗にとっては何処吹く風。所詮人間の子供の睨みなど眼中に無いというような様子で鼻をほじくっては鼻くそをいろんな所に飛ばしていた。
あのクソ天狗、ホントに鼻をへし折ってやろうか……
だがまぁしかし、この時代には携帯電話というモノがある。
うろたえては見たもののよく考えれば言うほど絶望的な状況では無いのだ。
僕はにやりと笑いながらケータイつまり、スマートフォン改めスマフォを取り出した。
って、電池切れてるしっ!!!
とかいうありがちな展開はなくネットを使って地図を開く。
「なんだ、普通に近所じゃん」
焦る必要はなったようだ。
僕は立ち上がり、砂を払う。
「む、帰るのか?」
「もちろんですよ。日が暮れると貴方みたいなのが増えてきますからね。」
普通の人には見えないものがうじゃうじゃうじゃうじゃ。
少し前まではニコニコしていたが福なんて来なくて
むしろ不吉なモノばかりよって来るようになった。
何が
笑う門には福きたる
だ。
いつも笑っていた祖母には福が来たのだろうか……
「ふむ、わかった。わしはしばらくここに住むことにするからの、いつでも来て良いぞ。というか来いよ?」
「やだよめんどくさい。あなたも早く帰ったほういいですよ。」
「ふんっ、お主もしやツンデレと言う奴だな?そうだろ?なぁ、そうなんだろ?」
神社から出ようとしてる僕の周りをぐるぐるぐるぐると回りながら絡んでくる大天狗……
「うっさいな、かまちょかよ!」
「はっはっはぁー!かまちょじゃ!かまちょじゃ!はっはっはぁー!」
「わかった!わかりました!明日も来るので勘弁してください!!」
「うむ、まぁ仕方なく相手してやろう」
この天狗相当めんどくさい……
かまちょな天狗を振り払うと僕は足早に帰路についた
言い訳どうしよ……。
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僕が家についた時には日も落ちて薄暗くなっていた。あの神社から遠かったわけではないが途中にも変なのがいたりしてなるべく関わらないようにしていたら遅くなってしまった。
なぜだろう僕の安息の地であるマイホームのはずがこんなに家に入るのに気が重くなるのは……
結局言い訳は思い浮かばず先生がマイマザーに連絡してないのを祈るしかない。
が、しかし、玄関には鍵がかかっていた。
おかしいな……いつもなら家にいるはずなのに。
まさか学校に呼び出し?
勘弁してくれよ……
更に憂鬱になり、カギを開けて帰宅する
「ただいまー……」
母の靴はない。やはり呼び出しか……
リビングに行くとテーブルに手紙があった
置き手紙だ。
まかさ、死刑宣告……?
恐る恐るその手紙を見る
『お父さんの長期休みが取れたので旅に出てきます。お金は銀行にあずけてるのを使ってください。無くなったらバイトでも何でもして自分で稼いでね。 母より』
死刑宣告はありえないよな。
今回旅行に行ってくれてたのはかなり助かった。
でも家の事を自分でやらなきゃいけなくなるのはちょっと面倒くさい。僕が小さい頃から両親はたまに旅に出ていた。長い時で1年も親の顔を見ない時があった。流石にあの時は不安になったもんだ。
そのおかげで家事全般はこなせるようになったのだがこれがまぁ面倒くさい。
ので、今晩はカップ麺に決定だ。
ここで幼馴染みキャラが
『べ、別にあんたのためにつくってきたわけじゃないんだからねっ!夕ご飯のあまりなんだからっ!』
とかいって、明らかに僕の大好物の挽き肉オムレツを持ってきてくれたら文句ナシなんだが現実はそんなピンク色なわけもなく、訪問者は皆無だった。
ってか幼馴染みいないし
そもそもオムレツっておすそ分けとかするおかずじゃないだろ。
とか妄想しながら台所を漁っていたのだがカップ麺が出てこない。
こないだ見た時はあったと思ったんだけどな……
しかし、カップ麺が無いとなるとまたまた面倒くさい事になる。コンビニかスーパーに買い物に行かなきゃならない。日はすっかり暮れてしまっている。ヤツらが絡んでくる可能性がグッッッッッと上がってしまう。そうなるとほんとに面倒くさい。
でも迷っている暇なんかない。
時間が遅くなるにつれてヤツらは出現しやすくなる。
つまり善は急げって事だ。
僕は自転車の鍵を持ち家を出た。
時刻はおよそ19時だ。