何度目のループ?
転校生転入!生徒会落ちる!生徒会長リコール!生徒会と転校生断罪!
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転校生転入!生徒会落ちる!生徒会長リコール!生徒会と転校生断罪!
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転校生転入!生徒会落ちる!生徒会長リコール!生徒会と転校生断罪!
ーー何度同じことを繰り返せば、ここから出られるんだろう。
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おかしいと知ってはいた。
優しくて謙虚な、自慢の生徒会長の兄・会理が何故突然あんなに横柄な態度をとるようになったのか。
あれだけ兄に信頼をおいていた生徒会役員が何故あれだけ腐ったのか。
どうして兄を押し上げてくれたみんなが兄を名指しで批判しているのか。
そんな場所に行く兄を引き留めなかったあの日のことを何度も思い出す。
「利長、見送りありがとう、夏休みには帰省するね。宿題で分からないところとかあったらいつでも電話して」
「はいはい、そっちこそ高校でも他人の世話焼きすぎないでね~」
あの時俺はお気楽な14歳のガキで、頭のいい高校に行く兄を物好きだなあと思いながら見送っていた。
全寮制エスカレーター式の桜渡学園に努力して転入し、地道に信頼を積み重ねて、17歳の時次期生徒会長に推薦された兄は嬉しそうに笑っていた。それが地獄への第一歩だとも知らずに。
「は?宿題?バカじゃねーの、自分でやれよ」
「…ごめん、そうする」
ある日突然兄の口調が変わっていた。
だけど生徒会長としてのプレッシャーとか膨大な仕事とか俺が頼りすぎたことがそうさせてしまったのだろうと、その時はそう考えていた。
電話の頻度も気を使って減らしたつもりだった。
「兄貴、今年の夏は帰って来れんの?……やっぱ生徒会の仕事忙しい?」
「聞かなくてもわかるだろ、無理だっつの。お前も生徒会長やればわかる」
「そっか、ごめんね~」
「あのさ、俺、桜渡学園受けるよ」
「は?」
「だから、もし気を付けることとかあったら」
「来るな」
「えっ」
「絶対に来るな」
けれどいつも兄は取り付く島がなかった。
兄は電話のたびにどんどん憔悴した声色になっていき、そして秋には精神病棟に入っていた。
生徒会長をリコールされて落ち込んだとか他の生徒会メンバーと仲間割れしたとか色恋沙汰だとか外野の声はいろいろ耳に入ったけど、兄からその顛末を聞くことはできなかった。
俺は謎を抱えたまま桜渡学園に入学し、生徒会に所属した。
いやな印象ばかりあった生徒会は世代が入れ替わっているからか実にまともな組織で、間違ってもさぼったりやらかしてリコールされるような人が所属する組織ではなかった。
「生徒会長、去年の生徒会って途中で人代わってるんすね、なんかあったんすか?」
「いやー…俺もよくわからないんだよね。俺もちょっと記憶が曖昧だし、もっと深く生徒会と関わってた人はもっと……」
生徒会長はそこで言葉を切った。世代的には1つ上なんだし何かしら情報が得られるかと思ったけどあてがはずれた、わからないことだけが分かった。
教師や先輩に積極的に絡み、何があったのかをさりげなく聞いた。……けれどみんな要領を得なかった。
「あー君、日置君の弟か。先代生徒会長やってたよね。色々疲れてるみたいだったから保健室のベッド貸したことある」
「お前日置先輩の弟か!懐かしいぜ、追試続きで頭抱えてたら通りすがりのくせに勉強教えてくれたんだよ。…まあ生徒会長なってから忙しそうだったからあんま話さなくなっちまったけど」
「先代前期生徒会長のファンクラブ?とっくに解散してるよ。うちのファンクラブ会員もだいぶ被害受けてたからざまあみろって感じ。連絡先…揉め事相談窓口ならファンクラブ元会長の愛田がやってたけど、スマホ変えてから連絡つかなくなっちゃったな」
どうやらそこそこ遠い立場の人なら当時の話が分かるらしい。近い人、具体的に何があったかを知っていそうな人は軒並みみんな一様に記憶が曖昧になっていた。
答えが分かったのは、俺が生徒会長になってからだった。
ある日食堂がやたらざわざわしてるな、揉め事か?と思って立ち寄ったのが運の尽きだった。
「フーン…道尾恒星っていうのか。おもしれーヤツ」
俺の口は俺が絶対に言わないであろうことを口走っていた。
それどころかその寸前は道尾に無理やりキスをして顔をぶん殴られてもいた。なんだこれ。
おかしくなったのは俺だけじゃなかった。
「服部…お前…なんだその恰好、しぐさ」
「何を言っているんですか?僕は元々こうだったでしょう」
暑苦しくて嘘が吐けない副生徒会長の服部はなんか優雅な腹黒になってた。
「緒木、どうした?元気ないのか?」
「……会長…こそ…どうしたの?」
明るくていつも笑顔な書記の緒木は寡黙で不愛想になってた。
「……イメチェンしたな、桂」
「えー?前のださい姿思い出させないでよ、そういうとこがもてないんだよかいちょーは」
「うっせえ」
内気ではにかみ屋の会計の桂は、軽薄で女好きになってた。
「かいちょーどしたの?元気ないねー励ましてあげよっか?代わりに僕の仕事ちょっと手伝ってよ~」
「そうだそうだ!」
鉄壁の無表情だったクールな庶務の武藤は、あざといぶりっ子になっていた。
あとなんか増えてた。そんなことある?
その日は双子ファッションの武藤の友人・佐藤が新たに庶務になったのだという説明を受けたけど、翌日にはもう双子って扱いになってた。そんなことある?
「先生、なんでいきなり庶務増えてるんですか」
「は?やる気あんならやらせときゃいいだろ。手続きとか選挙とかめんどくせーし庶務くらい別にいいだろ」
やる気に溢れる新米教師だった米倉先生は気怠いホストみたいになってた。
なんだこれ。
俺は自分の体や口が言うことを聞かなくなった。気が狂いそうだった。皆もこうなのか?と思いながらもそれを確認することもできない。
そして段々と頭に靄がかかってきて、俺は前からこういう傲慢な横柄な性格だったんだと思い込むようになってきた。
そうして、俺達は気付けば道尾をやたら贔屓し、追いかけまわし、生徒会としての職務もろくに果たせなくなり、リコールされた。
道尾は卒業したいと泣いていたが、揉め事を起こした当事者として転校させられた。
リコールされた役員の道は三つだ。そのまま卒業まで新しい生徒会に関わらずに生きるか。転校するか。新しい生徒会に服従するか。
俺は転校を選んだ。
ーーそして、俺は俺を取り戻した。
転校先で無事卒業し、しばらく経ってから、震える指で元生徒会メンバーの行方を追った。
服部は精神病棟に入っていて、桂はヤクザの女に手を出したのがばれたらしく行方不明になっていたが、緒木、武藤、佐藤とは無事連絡がとれたので、小さな同窓会を開くことにした。
「よおお前ら、久しぶり」
「久しぶり、お疲れ~」
「……お久しぶりです」
「この度はご連絡いただきありがとうございます」
緒木は明るく、武藤と佐藤は出会った頃のように静かに律義に返事をしてくれた。
それだけで、彼らも「あれ」から解放されたのだとわかった。
「大学どう?」
「んー、まあ課題大変だけどなんとか頑張ってるよ!」
「俺も。いくつか重なると特に厳しいよなあ、お疲れ」
「……僕は、好きなことができて楽しいです」
「そうですよ!これ、この間武藤くんと作ったロボです。見てくださいここのフォルム、かなり時間かけて試行錯誤したんですよ」
「かっこいいじゃん!」
「ありがとうございます」
明るく楽しく苦労を話す緒木に、表情の起伏は少ないが頑張ってることを熱弁する武藤と佐藤。
場が温まってきた所に悪いなと思いながらも、本題を切り出す。
「ところで……俺達が生徒会だったころの「あれ」って、何だったんだろうな」
「「あれ」かあ……」
「「あれ」ですよね」
「「あれ」の頃の記念写真、全部おかしいんですけど見ます?」
背筋の冷える俺達にかまわず佐藤はスマホを突き出す。秋、俺たちがリコールされる前に行われた、文化祭の打ち上げ写真だ。そこには、俺たち元生徒会役員と、道尾が映っているはずだった。
しかし。
「……居ないな」
佐藤はスマホを操作していくつも写真を見せてくる。体育祭。合唱コンクール。ボランティア活動。
道尾だけが、どの写真にも居ない。
「集団幻覚…?」
「いや、それにしては明らかにこの体勢おかしいだろ」
「…………幽霊?」
ぽつりと言った武藤の言葉に、場が静まり返る。
今年で、兄貴がおかしくなってから六年目。道尾と出会ってから三年目。
今年もまた、あいつは来るのだろうか。




