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実体験

事業所を辞めざるを得なくなった僕が、晴れて一般就労できた

作者: 綾小路隼人
掲載日:2026/06/06

6/7 少し修正しました。(念の為に言いますがAIは全く使ってません)

僕には軽度の知的障害と発達障害があり、特別支援学校を卒業して18歳の誕生日を迎えた後は学校側から紹介された就労支援事業所に入所して働く事になった。

思えば、最初に入った事業所は良くも悪くも自由だった。

服装自由、連絡先交換OK、昼休み中の外食OK、恋愛OK、弁当箱を洗うのもOK、物をあげるのもOK、音楽を聴きながらの勤務OK等、ほとんどの事が許されていたのだ。

作業内容は事務作業、食肉加工、広告のポスティング、農作業等と種類豊富で、職員も利用者達も皆フレンドリーで明るい。

それから毎年5月上旬にはバーベキュー大会をのどかな大自然でやる事になっていて、年末年始の連休明けには皆で初詣に行き、誕生日が来た時にはそれぞれ好みに合ったプレゼントを職員からもらえるのでとても居心地が良かった。

関係ない私物をデスクに置いていても許されていた為、自由すぎるなぁと思いつつ特に何も疑わず長い事勤めたのだ。

昼休みは仲の良い利用者同士で外食に行ったりスマホゲームをしたり、興味がある者同士でアニメや映画について語り合ったりと兎に角気ままに過ごし、仕事帰りには事業所の近くにある書店やスーパーで買い物をしたり某ファーストフード店やケーキ屋に寄ったりして環境的にも楽しかった。

(迷惑にならない程度に職員をからかう事もしょっちゅうあった)

一時期は1人の女性利用者から散々迷惑をこうむって辛かったが、よっぽど天文学的な偶然が起きない限り彼女と関わる事はもうないだろうから忘れる事にしておこう。


しかし、そんな楽しい日々はある日突然終わる事となった。

3年前の9月下旬に『11月1日に事業所が◯◯町(事業所から2つ隣の町)に移転する事となり、9月30日に◯◯町で説明会を行う』という知らせが来て、職員含めて僕達はかなり戸惑った。

その約2ヶ月前に社長が亡くなり、経営が上手くいかなくなってきたのは薄々分かってはいたが、まさか事業所がもうすぐ無くなるとは夢にも思っていなかった。

◯◯町の事業所は思ったより遠く、バスで行ける事は行けるが時間的にも場所的にも毎日通えるかどうか怪しい。

説明会に行くと案の定僕と同じ事を考えている利用者が沢山いて、「ただでさえ持病持ちなのに、これだけ遠かったら通勤中に体調を崩した時に困る」「そういう知らせはせめて数ヶ月前に言ってほしかった」など怒りの発言が次々と出ていた。

中には社長夫人にネチネチと質問攻めをした人もいて、もっと早く仕事探しをすれば良かったと後悔したのであった。


説明会から数日後には多くの利用者達から笑顔が消えて職員も「ここの事業所の方が周りにお店が沢山あって便利なのに閉める事になって悲しい」と話しており、この後どうするかを相談する為の面談で、なんとあの事業所は最初から一般就労へ橋渡ししてくれる訳ではなかった事が判明したのだ!

入所する時はあれほど「一般就労する為のサポートをする」と言っていたにも関わらずだ。

半分パニックになっている中、相談員は「別のA型事業所に入って仕切り直すのはどうかな?」と答えを出した。

実は面談の前に、毎週金曜日に仕事帰りに寄っていたケーキ屋の店長に「通っている事業所が遠くに異動する事になって、それだと毎日通えるかどうか怪しいからここで働かせてもらう事はできるだろうか?」と一か八かで相談したのだがその時もほぼほぼ同じ答えを出されたのだ。

考えてみればその方が時間的にもスキル的にも効率が良い。

相談員が持ってきてくれた隣の市の事業所の資料を読み、どの事業所に入るかを何日もかけて慎重に選んだ。

恋人が通っている事業所に入ろうかという考えもあったが、それだと周りに余計な気を遣わせてしまうし万が一上手くいかなくなったらお互いに気まずくなるのでやめておいた。

交通的に通いやすい事、作業内容が得意分野である事、周りに商業施設や銀行等があって環境的に便利である事、目的がハッキリしている事を条件に選んだ結果、裁縫作業をメインで行っている事業所に出会ったのだ。


そしてハロウィンの日に自主退職し、11月中旬に実習と面接を受けて無事に入所した。

その事業所は最初に入所した事業所とは対照的な雰囲気で、最初のうちは皆黙々と作業していて堅い感じがして(けど、分からない事を聞けば親切に教えてくれる)色々な制限が多くて窮屈に感じたが、職員は物腰が柔らかくて就職活動を手伝ってくれるし、利用者達は真面目で優しいしで割とすぐに馴染めた。

裁縫作業(ぬいぐるみやヘアゴム等を作っている)の他にはジャガイモの芽取り作業や野菜の種の袋詰めもしていてどれも楽しく、今思い出しても一般就労の為に退職するのが心底惜しいぐらいである。


僕は入所してから7ヶ月後に就職活動を始める事になり、スーツを新調して面接用の鞄を買い、履歴書の準備と面接の練習をした。

ところが納得いかない事に1社目と2社目は書類選考の時点で落とされて3社目は上手く面接できて見学までさせてもらったものの結局不採用になり、そのストレスもあってか胃を痛めてしまったが何とか治し、職員と相談員の支えもあり諦めずに4社目の面接に挑んだのだ。

まさかその会社が、僕の現在の勤務先になるとは……。

面接は話しやすく穏やかな雰囲気で進められ、3社目の時と同じように見学もさせてもらえた。

面接が終わった後はそれまで真面目に神を信仰していなかったくせにしつこいぐらい何回も神頼みし、その結果なのか6日後に採用の電話が来て、有給消化してから事業所を退職し晴れて一般就労できたのだ!


いざ入社すると人間関係に関しては大当たりで、上司も同僚達もパートの主婦達も良い人揃いであり、指導係の先輩はハリーポッターの映画から飛び出してきたのかと思うほど強烈に美しく聡明で優しい。(そして叱り方も優しい)

僕が障害者雇用第一号なのもあってか周りは何くれとなく世話を焼き、面接官だった部長は顔を合わせる度にまるで小学生を扱うように微笑みながら僕に話しかけ、家庭での辛い出来事があって落ち込んでいる時に部長が僕の部署まで来て慰めてくれた事もあった。

任された仕事の内容はインテリアで扱う布の裁断がメインで、立ちっぱなしだから時々太腿と臀部の右半分が痛くなる事があり意外と脳味噌も使うのだがそれはそれでやり甲斐を感じている。

入社した後の土曜日の夜はお祝いとして父と2人でステーキ屋に行き、楽しい事ばかりではないのは承知だけどこれからも一生懸命働こうと心に決めながらステーキを頬張った。

この流れがあったから、今の自分がいるのだ。

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