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我輩は魔王である。破壊衝動を満たす為に、まずはクニを造ろうと思う。

掲載日:2026/04/25

我輩は魔王である。名前はまだ無い。

気がつくと、ここに存在していた。人間のように親から生まれるわけでも、鳥のように卵から孵るわけでもない。ある日、突然、前触れもなく、いきなり存在するのだ。存在したその瞬間から全知全能である。そして、抑えきれない程の破壊衝動を抱えている。何故そうなのか、なんて考えるだけ無駄だ。魔王とはそういうもの。ただそれだけの事だ。


我輩には部下がたくさんいる。部下は我輩の為に存在する。だから部下達は我輩の破壊衝動を満たす為に、人族のクニを攻め滅ぼしてはどうかと提言してくる。ふむ、なかなか楽しそうではないか。一番近くにいた男に命令する。

「おい、そこのお前。」

「はい、何でございましょうか。」

「人族のクニに攻め入る。計画の算段を立てろ。」

「恐れながら魔王様、人族のクニに攻め入るのは時期尚早かと。」

「我輩の命令が聞けないのか?」

「そう言う訳ではありません。しかし、人族のクニは一つ一つがとても小さいものです。文明と言えるものはほとんど無く、それを破壊したところで得られる快感は微々たるもの。どうせなら、魔王様のお力でクニをもっと大きくしてから、破壊してはいかがでしょうか?」

男の言う事は一理有る。不完全なものよりも、完璧なものを破壊する方が面白そうだ。「ならばお前たち。まずは、人族のクニの問題点を調査してこい。」

「「「御意。」」」


数日後。部下達の報告を聞く。

「まずはクニの現状から報告致します。現在、クニは各地そこらに点在しております。クニごとにそれぞれ統治者がおり、統治者=ルールの状態です。富が一部に集中しており、厳しい身分差がございます。また、稲作が普及しておりますが、土地や水の奪い合いが起きています。クニ同士の争いが激しく、情勢が安定しておりません。」

「なるほど。ならば、まず取り組むべきはクニの統合か。何か良い案は有るか?」「はい。クニの統合には、圧倒的な力を持つ人物を仕立て上げれば良いかと。カリスマ性を持つ者に、自然と人は惹きつけられるものです。」


魔王のスキル「千里眼」で適当な人物を見繕う。そしてこれまた魔王のスキル「念話」でその人物に話しかける。

「おい、そこのお前。命令だ。クニを統合しろ。」

「えっ!この声はどこから聞こえてくるの!?」

女はいきなり聞こえてきた声に戸惑っているが、そんなことは我輩には関係が無い。

「そんなことはどうでも良い。ただお前は我輩の言う通りに動けば良い。」

「クニを統治しろって・・・。もしかしてあなた神様なのね?分かりました。神様の御告げなら、私はそれに従います。」

我輩は魔王である。神では無い。だが女の勘違いは我輩にとって好都合だ。

女が雨乞いをしたら、我輩が水の魔法で雨を降らす。女が太陽の光を望めば、我輩が風の魔法で雲を吹き飛ばす。こうして女は、「神の声が聞こえる者」として、複数のクニを統治した。


女が没してどのくらい経っただろうか。あれから幾つもの有力なクニ同士が統合されて、だいぶ大きくなってきた。

「そろそろクニを滅ぼしても良いのではないか?」

「何をおっしゃいますか。力での支配が当たり前な野蛮なクニなど、魔王様のお手で壊す価値もございません。」

「なるほど。ならば力では無く、一定の規則によって支配をさせよう。」


今回もひとまず、適当な人物を見繕う。そしてその人物に常時発動スキル「魅了」を勝手に授ける。「魅了」とは人を惹きつける力である。この者を新たな統治者にしよう。次に部下を変装させ、人族のもとに送り込む。「人族に成りすまし、新たな統治者を祭り上げつつ、クニを統治する規律を作ってこい。」「かしこまりました。」



部下は人族のクニで大層な働きをしてくれた。力での支配ではなく、「律令」での支配がされるようになった。クニだった物は今では国と言われるようになった。「魅了」を授けた者は没したが、「魅了」は末代まで引き継がれるようにしてある。先代の統治者が没しても、次代が「魅了」と共に、国を引き継いでいく。


「クニは大きくなり、国となった。力での支配から、規律での支配に変わった。今こそ国を滅ぼすときであろう。」

「まだでございます。確かに規律は作られましたが、まだ出来たばかり。今後、実際に運用していくなかでブラッシュアップしていく必要がございます。また、農民の命がとても軽く扱われております。明日死ぬとも分からない彼らに、魔王様自ら手を下す価値がどれ程有りましょうか。」

「ならば、規律の改定と平民の地位の向上が今後の課題だな。」

「作用でございます。しかしながらこれは一朝一夕に出来ることではございません。長い戦いになります。」

「構わん。今回も頼んだぞ。」

「仰せのままに。」




あれから何度も部下と会議を繰り返し、対策を講じ、国を改良してきた。

「この国に住む人族は、法のもとに守られている。戦争により命を落とす事も無く、最低限の衣食住も保証されている。才能があれば、成り上がる事も出来る。どうだ、これならまさに我輩が破壊するに相応しい国と言えるだろう。今こそ人族の国に攻め入るぞ。」

「とんでもない!この国は今、少子高齢化と言う深刻な問題を抱えております。このまま新しく産まれる命が減り続けると、魔王様が破壊するまでもなく、勝手にこの国は滅びます。時間の問題です。破滅の一途を辿る国など、わざわざ魔王様が自ら滅ぼす価値もございません。」

「なるほど。ならば次は、出生率を上げる方法を考えねばか。」

「左様でございます。」

「これまた難題であるな。」



一体、いつになったら「魔王が滅ぼすに相応しい完璧な国」が出来上がるのだろうか。こうして今日も魔王と部下の会議は難航するのであった。



めでたし?めでたし?


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