第6話:魔石の破壊と図書館の真価
1. 狙いは魔力源
悠真は、レヴィアから放たれる強烈な精神干渉を受けながらも、一歩も引かなかった。彼の脳内の『天使の図書館』は、レヴィアの真の力(元大天使級)と、彼女の精神干渉能力が『嫉妬の魔石』の脈動と密接に連動していることを解析し終えていた。
(直接レヴィアを攻撃しても無駄だ。彼女の肉体は悪魔の魔力に守られている。狙うべきは、彼女の魔力と意識が集中している外部の魔力源だ!)
「私のために、あなたを売った女の名前を叫べ!その醜い感情を晒せ!」レヴィアが冷笑する。
「残念だが、俺の知識に嫉妬という感情は含まれていない」
悠真は叫ぶと同時に、一気に加速した。狙いは、レヴィアの背後で脈動する巨大な『嫉妬の魔石』の結晶体だ。
【効率化された動作(ルーティン・最適化)発動】
【構造解析完了:魔石の最小耐性値と最短破壊経路を特定】
悠真のF級の肉体は、レヴィアの精神干渉の波を、図書館が解析した特定の歩幅と呼吸法で奇跡的に躱した。そして、ショートソードを逆手に持ち替え、魔石の台座へ向けて跳躍する。
「無意味よ。その程度の武器で私の魔力源が破壊できるとでも?」レヴィアは余裕の表情で、悠真の動きに合わせて魔力を集中させた。
しかし、悠真の狙いは破壊ではない。
「魔力中枢の、一瞬の過負荷だ!」
悠真のショートソードは、魔石の表面ではなく、図書館が解析した魔力流入経路の最も脆い結合点に、F級の力全てを込めて突き刺さった。
*キンッ!*という、脆い金属が弾けるような音。巨大な嫉妬の魔石は、表面は無傷なまま、内部の魔力循環が瞬間的に停止した。
2. 天使の図書館、真の能力解放
魔力源を断たれたレヴィアは、自身の肉体から放出されていた精神干渉の波動が急停止したことで、激しく動揺した。
「な、なぜ……!私の魔力循環が、一瞬で途絶した!?」
この一瞬の無防備な状態こそ、悠真が求めていたものだ。
「ここからが、あんたの救済だ、元天使」
悠真はショートソードを手放すと、両手をレヴィアに向かって突き出した。彼の瞳の奥で、『天使の図書館』が文字通り輝き始めた。
普段は情報としてしか存在しなかった膨大な知識が、今、純粋な天使の魔力波形へと変換され、悠真のF級の肉体から、レヴィアへと向かって放出された。
【スキル:天使の図書館(全知の瞳)——真の能力解放:堕天魂の浄化】
悠真の体から放たれた光は、レヴィアの全身を覆った。それは、悪魔の力ではない。堕天する前の彼女が、最も安らぎを感じていたはずの純粋な天使の魔力だった。
「これは……まさか、この魔力は……忘れていた、光……?」
レヴィアの冷酷だった表情が崩壊する。彼女を悪魔卿として縛り付けていた、嫉妬の感情の魔力が、その純粋な光によって洗い流されていく。
「やめろ!この、汚らわしい光!私を、悪魔卿から引き戻すな!」
レヴィアは苦悶の表情を浮かべ、光から逃れようと抵抗したが、魔力源を失った彼女には抗う術がなかった。黒い羽根の残滓が、光の中でゆっくりと純白に変わっていく。
3. 最初の力の吸収
光が収まったとき、そこに立っていたのは、漆黒のドレスを纏った悪魔卿レヴィアではなく、純白のドレスと、白く小さな天使の羽根を持つ、少女のような女性だった。
彼女は、全てを忘れたかのように、ただ悠真を見つめていた。
「私は……誰?ここは、どこ……?」
レヴィアの体から、強大で純粋な天使の力が、悠真の『天使の図書館』へと流れ込み始めた。
【『天使の図書館』解析完了:悪魔卿レヴィア(元大天使ガブリエル級)の魔力、スキル、記憶の吸収を開始】
一瞬の激痛と熱の後、悠真のステータスが、F級やE級の限界を遥かに超えて急上昇した。
【天野悠真:ランク E級 → D級】
【筋力:E → D+】
【魔力:F → C】
【新規習得スキル:『精神防壁』(悪魔の精神干渉に対する絶対防御)】
そして、目の前の元悪魔卿は、悠真の前に静かに膝をついた。
「我が主よ……貴方の光が、私を永き苦しみから解放した。堕天した天使、レヴィア。いえ、ガブリエル。貴方の僕として、この力を捧げます」
悠真は、自らの手で七卿の一人目を救済し、その強大な力を吸収した。同時に、彼は悪魔卿から忠実な最初の仲間を手に入れた瞬間だった。




