第5話:次元の歪みとレヴィアの美貌
1. 氷室の警告を無視して
C級ゲート『廃駅メトロ』の地下深く、古びた車両基地。悠真は、特対庁の氷室咲から届いた「直ちに離脱せよ」という警告メッセージを無視し、目の前の壁に集中していた。
(【観測対象:壁面の次元の歪み】:通常の岩壁に見えるが、空間座標が周囲と0.003%ズレている。ここに、レヴィアの製造拠点が存在する)
氷室は、悠真の提供した情報に基づき、既にS級ランカーチームを編成し、通常のルートから拠点への突入準備を進めているはずだ。だが、悠真には待っている時間がなかった。
(S級ランカーたちが突入すれば、レヴィアは拠点ごと自爆するか、逃亡を図る。それでは、俺は最初の悪魔卿を救済し、その力を奪うという最大のチャンスを失うことになる)
悠真の目的は、単なる情報提供ではない。悪魔卿の力を自身のものにし、成り上がりを加速させることだ。
【効率化された動作(ルーティン・最適化)発動】
悠真は、ショートソードの魔力を特定のリズムで壁面に叩きつけた。これは、図書館の知識に基づいた、次元の歪みを一時的に安定させ、通過するための特殊な振動パターンだ。
壁面に青白い亀裂が走り、一瞬だけ、その向こうに広がる異質な空間が垣間見えた。悠真はその僅かな隙を逃さず、躊躇なく亀裂の中へと飛び込んだ。
2. 嫉妬の檻
次の瞬間、悠真は別世界へと足を踏み入れていた。
そこは、廃駅の地下にあるとは思えない、荘厳で冷たい石造りの空間だった。周囲の壁には、どろりとした黒い液体が循環しており、その中心には巨大な『嫉妬の魔石』の結晶体がゆっくりと脈動していた。
(ここが、レヴィアの製造拠点。魔力濃度は、外部の100倍。レヴィアは、この魔石を通じて、広範囲の冒険者たちに「嫉妬」の感情を増幅させている)
空間の中央、黒い結晶の台座の上に、一人の女性が立っていた。
3. 堕天した美しき悪魔卿
彼女は、漆黒のドレスを纏い、その体躯は人間よりも遥かに優美で、背中には黒い羽根の残滓のようなものが揺らめいている。
悪魔卿、レヴィア。悠真の観測した通り、彼女は極上の美貌を持っていた。しかし、その顔には、人間を見下すような、冷酷で退屈そうな表情が貼り付いていた。
「あら、珍しいわね。F級のネズミが一匹、私の作業場に迷い込んだようだわ」
レヴィアは悠真の存在を瞬時に把握した。彼女の瞳は、悠真のF級のステータスと、彼が持つ武器の非力さを見抜き、嘲笑を浮かべる。
「その程度の魔力しか持たないあなたが、この次元の歪みを自力で超えた?ふふ。まさか、誰かに情報を売って、私の排除を企んでいるのかしら?人間の醜い嫉妬が生み出した、哀れな使い走りね」
レヴィアは、悠真が情報源であることを即座に看破した。
(【観測対象:悪魔卿レヴィア】ステータス:魔力S++、特殊能力:精神干渉。現在の思考:『このネズミを捕らえ、特対庁へのカウンターとして利用する』。真のステータス:『元大天使ガブリエル級』。救済条件:精神干渉能力を完全に停止させ、純粋な天使の魔力波形を直接魂に注ぎ込むこと)
レヴィアが悠真に向けて、精神干渉の魔力を放つ。
「さあ、私のために、あなたを売った女の名前を叫んでごらんなさい、嫉妬と共にね」
悠真は強烈な精神的な重圧を感じたが、『天使の図書館』は、この攻撃の波動と、それに対抗するための「知識による防御法」を瞬時に解析した。
「悪魔卿レヴィア。俺はあんたの策略に興味はない。俺の目的は、あんたの魂を救済することだ」
悠真は、F級の肉体を押し上げ、レヴィアに向かって一歩踏み出した。彼の瞳の奥では、膨大な天使の知識が光を放っていた。




