第54話:再誕の鼓動と、最後の拒絶反応
1. 揺れる銀の世界
エリュシオンの最深部、白い光が満ちる「原典の揺り籠」。
数億の断片となっていた悠真の意識が、遥の持つ『真理の欠片』を道標にして、急速に一つの形へと収束していく。
「あ……お兄ちゃん、そこにいるの……?」
遥が光の繭に手を伸ばしたその時、世界全体に激しい「拒絶の震動」が走った。
かつての創造主・九条が遺した、あるいはシステムそのものが持つ「自己修復プロトコル」が発動したのだ。
(【システム警告】:未定義の個体による管理者権限の再取得を検知。……これは『世界の私物化』と定義されます。……防衛システム、最終フェーズを起動)
2. 抗う者たち
悠真の復活を邪魔させまいと、即座に使徒たちが動く。
「これ以上、私たちの主を縛り付けることは許さないわ!」
ルシフェルの剣が、空間から溢れ出す無機質な防衛プログラムを次々と一掃する。アスモデウスは遥を庇い、その色欲の魔力でシステムの認識を狂わせて時間を稼ぐ。
しかし、システムが放った最後の手駒は、かつて悠真が倒してきた「悪魔卿」たちのデータを統合し、感情を削ぎ落とした純粋な破壊兵器――『終焉の守護者』だった。
「主様が戻るための道は、私たちが死守します!」
マンモンが黄金の障壁を張り、ベルゼブブが敵のコードを喰らい尽くす。
だが、主の力が分散している今、彼女たちの戦いは限界に近かった。
3. 「天野悠真」の帰還
光の繭の中で、悠真は見ていた。
自分が救った世界で、必死に自分を呼び戻そうとする妹の涙を。自分を信じて戦い続ける使徒たちの背中を。
「……そうだ。俺は、世界そのものになりたかったわけじゃない」
(【天使の図書館:最終確認】:主よ、再び『肉体』を持つことは、不滅の神性を失うことを意味します。……それでも、戻りますか?)
「……当たり前だ。神様なんて、退屈で仕方ないからな」
悠真の意志が爆発的に膨れ上がり、光の繭を内側から引き裂いた。
システムが放った『終焉の守護者』の腕を、実体化した悠真の右手ががっしりと掴む。
「――待たせたな。もう、誰にも管理はさせない」
白銀の光の中から現れたのは、かつての黒いコートを纏い、しかしその瞳に世界のすべてを包み込むような深淵を宿した、「人間」としての天野悠真だった。




