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F級冒険者と、役立たずの『図書館』  作者: 綾瀬蒼


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第52話:終焉のカウントダウンと、世界の楔(くさび)

1. 敗北者の狂気


「はは……ははは! 権限を奪ったか、天野君。だが、忘れていないか? この『エリュシオン』は現実世界の魔力プラントと同期していることを!」

九条は、粉々に砕けたタブレットの破片を握り締め、狂ったように笑った。

彼が隠し持っていた予備の起爆キーが赤く点滅する。

「私が死ねば、世界中のプラントがオーバーロードする。エリュシオンは地上に墜落し、現実世界も魔力の奔流で灰になる……。君が守ろうとした『新世界』ごと、すべて道連れだ!」

【システム警告:全世界の魔力プラント、自爆シーケンス開始】

【完全停止まで残り:180秒】

エリュシオンの大地が激しく揺れ、地上の空には不気味な赤黒い亀裂が走り始めた。


2. 簒奪者の決断


「主様……! 私たちがプラントを直接叩き、爆発を抑えます!」

ルシフェルと使徒たちが立ち上がるが、悠真はそれを制した。

「無駄だ。物理的な破壊では間に合わない。爆発のエネルギーが現実世界に漏れ出せば、どのみち終わりだ」

悠真は、自らの『真理の冠』を静かに外し、エリュシオンの中枢コアへと埋め込んだ。

彼が選んだのは、簒奪したばかりの開発者権限をすべて使い切り、「自分自身をエリュシオンと現実世界の『緩衝材フィルター』にする」ことだった。

(【天使の図書館:警告】:その行為は、主の意識を数億個の断片に分解し、世界の全回路に永劫に拘束することを意味します。……主は二度と、一人の人間として実体を持つことはできません)

「……構わない。俺がこの世界の『楔』になれば、爆発のエネルギーはすべて俺が吸収できる」


3. 永遠の守護者


悠真の体が、光の粒子となって霧散し始める。

それは、九条が強制した「削除」ではなく、悠真が自ら選んだ「遍在へんざい」だった。

「兄さん……嫌だよ、行かないで!」

現実世界から遥の泣き声が響く。悠真は消えゆく意識の中で、優しく微笑んだ。

「遥、泣くな。俺がいなくなるんじゃない。……これからは、お前が吸う空気の中に、歩く地面の中に、俺はいつでもいる」

悠真の魂が全世界の魔力回路へと浸透した瞬間、赤黒い亀裂は清らかな白銀の光へと浄化され、暴走していたプラントは静かにその拍動を止めた。

九条は、目の前で起きた「奇跡」に呆然と立ち尽くし、そのまま崩壊する玉座の虚無へと消えていった。

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