第50話:創造主の帰還と、終わりの始まり
1. 偽りの平穏
自分の中の「影」を統合した悠真の頭上には、白銀の光を放つ新たな『真理の冠』が輝いていた。
地上の暴動は収まり、人々は悠真に「管理される」のではなく、悠真が提供する基盤の上で「自ら生きる」道を選び始めていた。
「……ようやく、この世界が『呼吸』を始めた気がするな」
玉座に座る悠真の隣には、七人の使徒たちが勢揃いしていた。ルシフェルは誇らしげに胸を張り、アスモデウスは満足げに悠真の肩に頭を預けている。それは、長い戦いの末に辿り着いた、完璧な大団円に見えた。
だが。
(【天使の図書館:異常を検知】:システム・クロックが外部から上書きされています。……主よ、権限が……私の中の『根源権限』が、私を拒絶しています!)
「何……!?」
2. 空の亀裂
突如として、エリュシオンの美しい空が「ノイズ」のように乱れた。
白銀の空が剥がれ落ち、その背後から現れたのは、無数のコードが走る「デバッグ画面」のような無機質な虚空だった。
『――テストフェーズ、第999サイクル終了。……期待以上の結果だ、天野悠真』
空から降ってきたのは、機械的な、しかしどこか聞き覚えのある声だった。
エリュシオンの玉座の間に、一人の男が立っていた。
白衣を纏い、片手にタブレット端末を持った、あまりにも「現実的」な姿の男――かつて悠真が所属していたブラック企業の開発部長であり、このプロジェクトの総責任者、九条だった。
「九条……。お前が、この世界の創造主なのか?」
「創造主? いやいや、そんな神聖なものじゃない。私はただの『観察者』だ。……この世界と現実を融合させ、極限状態に置かれた人間が、どこまでシステムを掌握できるか。そのサンプルを集めていただけだよ」
3. 世界の「賞味期限」
九条がタブレットを操作すると、悠真の誇る七人の使徒たちが、まるで電源を切られた人形のようにその場に崩れ落ちた。
「ガブリエル! ルシフェル!!」
「無駄だよ。彼女たちは、私のコードから生まれた関数に過ぎない。……そして君、天野悠真。君という最高の『データ』は採取し終わった。……お疲れ様。この世界は、これより初期化される」
九条の背後に、巨大な「削除ボタン」を象徴する、漆黒の虚無が広がっていく。
悠真が成り上がり、救い、愛したすべてが、たった一行のコマンドで「無かったこと」にされようとしていた。
「……ふざけるな。俺たちが積み上げてきた命を、データだと切り捨てるのか」
悠真の瞳から、静かな、しかし苛烈な「殺意」が溢れ出す。
「九条。お前は大きな計算違いをしている。……俺は、お前のシステムの中で遊んでいたプレイヤーじゃない。……お前のシステムごと、世界を奪い取った『簒奪者』だということをな」
悠真は、機能停止した使徒たちの力を強引に引き出し、自身の魂を燃やして九条へと肉薄する。




