第46話:新世界の夜明けと、不穏な影
1. 混じり合う二つの世界
現実世界の空には、巨大な浮遊大陸『エリュシオン』が静かに滞留していた。かつてスマホの画面越しに見ていたファンタジーは、今や物理的な実体として人類の頭上に存在している。
人々は困惑し、恐怖したが、同時に奇跡を目撃していた。
枯れ果てた大地にエリュシオンの魔力水が注がれ、不治の病に苦しんでいた者が、悠真が再定義した「回復スキル」の恩恵で立ち上がる。
(【世界維持OS:ユウマ】:全領域の正常稼働を確認。現実世界との融合率88%。……魔力の供給バランスを、人口密度に応じて最適化します)
悠真の意識は、全世界のネットワークと魔力回路に偏在していた。彼はエリュシオンの玉座に座りながらも、同時に街角で笑う妹・遥の頭を撫でる風にもなれる。
2. 統治者の孤独と使徒の愛
「主様、素晴らしい眺めです。……世界が、貴方の色に染まっていく」
ルシフェルが、新世界の主となった悠真の傍らに立ち、陶酔したような瞳で見下ろす。七人の使徒たちは、それぞれが「新世界の法」を司る執行官として、各国への干渉を開始していた。
「……だが、すべてが歓迎しているわけではないらしい」
悠真が指先を動かすと、空間に数数の「監視モニター」が展開された。
そこには、突如として力を失った旧来の支配者たち――WAF(世界冒険者連盟)の残党や、既得権益を維持しようとする大国の首脳たちが、密かに会合を開く姿があった。
「彼らは、自分たちのルールが通用しなくなったことが、我慢ならないようですわ」
アスモデウスが、扇子で口元を隠しながら艶やかに笑う。
「『神』を地上に引きずり下ろそうと、禁忌の魔導兵器を掘り返している国もあります」
3. 宣戦布告
その時、悠真の「全知」のレーダーに、一筋の不快なノイズが走った。
エリュシオンの結界を物理的に破壊しようとする、超長距離からの「反物質ミサイル」が、数発発射されたのだ。
「……愚かな。自分たちが生きるための土台を、自分たちで壊そうというのか」
悠真は、椅子から立ち上がることもなく、ただ一言、命じた。
「ガブリエル、迎撃の必要はない。……その兵器を放った者たちの『存在権限』を、一時的に凍結しろ」
【権能発動:世界再定義——『沈黙の罰』】
ミサイルは空中で静止し、発射ボタンを押した各国の地下司令部では、人間たちの「声」と「魔力」がシステム的に封印された。
「俺は神ではない。だが、この世界の管理者だ。……俺のルールに従えないなら、その存在を一時停止させるまでだ」
悠真の冷徹な宣告が、全世界のデバイスを通じて全人類の脳内に直接響き渡った。
「成り上がり」の果てに得た力は、今や一人の若者を、全人類の運命を握る「絶対的な理」へと変えていた。




