第45話:不完全なる新世界(ニュー・エデン)
1. 究極の選択肢
システムの心臓部「原典領域」が、臨界点に達して激しく明滅する。
目の前には、無機質な幾何学模様と化した「聖母」が浮遊し、悠真の手には七人の使徒の力を集約した『終焉の鍵』が握られていた。
(【天使の図書館:緊急警告】:残り10秒。……主よ、神として君臨するか、人間として帰還するか、そのどちらかを選ばなければ、世界は虚無へと消えます!)
悠真は、自嘲気味に笑った。
「……どちらか一方でなければならないという、その思考自体がシステムの限界だ」
悠真は『終焉の鍵』を、自らの胸へと突き立てた。
2. 権能:共生する理
「俺は、神になるつもりも、ただの無力な人間に戻るつもりもない。……システム、お前を俺の中に飲み込み、俺をシステムの一部として定義する」
【第45話:運命の選択——第三の道:新世界の理】
悠真の体が、膨大なデータストリームへと変換され、システム・コアと激しく混ざり合っていく。それは、自己の消失を伴う禁忌の融合だった。
「主様!!」
ルシフェルが叫び、手を伸ばすが、その指先は光に溶けていく。しかし、それは消滅ではなく「拡張」だった。悠真の意識が世界全体に広がり、使徒たち、さらには現実世界の妹・遥の鼓動までをも、自分の神経系のように感じ始める。
(【システム統合……100%】:エラー。……管理者の定義を更新。……個体名『天野悠真』は、これより『世界維持OS:ユウマ』へと移行します)
3. 境界線の消失
白く塗り潰されていた視界が、一気に色彩を取り戻していく。
だが、それは以前の「ゲームの世界」ではない。
現実世界の空に、エリュシオンの幻想的な島々が浮かび上がり、人々は魔法を「文明の道具」として使いこなす。現実と仮想が融合し、悠真が定めた「新たな法」が支配する世界へと再誕したのだ。
その世界の中心、エリュシオンの最深部には、一人の青年が座っていた。
傍らには、再び姿を取り戻した七人の女性使徒たち。
「……終わったな」
「いえ、主様。ここからが始まりです」
ルシフェルが微笑み、悠真の傍らに膝をつく。
悠真はもはや、肉体を持った人間ではない。だが、冷徹なだけの神でもない。
妹を救い、世界を守り、そして自身が「世界の理そのもの」となることで、彼は究極の成り上がりを成し遂げた。




